あらすじ
東京・下落合、戦火を逃れた邸宅に集められた4人の女性。
GHQの一声で、彼女たちの人生を変えるハチャメチャな同居生活が始まった。
1946年11月、日本民主化政策の成果を焦るGHQがはじめた “民主主義のレッスン”。いやいや教師役を引き受けた日系2世のリュウ、地位と邸宅を守るためこの実験に協力した仁藤子爵夫人、生徒として選ばれた個性豊かな4人の女性――それぞれの思惑が交錯する中、風変わりな授業が幕を開ける。希望と不安、そして企み……。波乱の展開が感情を揺さぶる、今年一番の超大作!
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Posted by ブクログ
第二次大戦後、GHQ統治下の日本。この国を民主化するための一つの試みとして、半年間4人の日本人女性をひと処に住まわせ、民主主義の教育を施すという実験が行われた。それぞれがそれぞれに大戦で色々なものを失ってきた美央子、孝子、ヤエ、吉乃の4人が集められ実験対象となり、また彼女らの教師を、在米日本人2世としてアメリカで生まれ育ち、戦後日本にて通訳官を勤めていたリュウ・サクラギが務めることになる。
基本的に物語はリュウの視点から語られる。はじめは彼女らともウマが合わず、教育も上手くいかず試行錯誤を繰り返すが、次第にそれぞれと心を通わせるようになっていく。
物語がリュウの視点から描かれる分、読者はリュウに感情移入しながら読み進めることになる。何かトラブルが起きれば一緒になってドキドキするし、誰かと打ち解ける度にホッとするし、彼女らから頼られたり成長を実感する出来事があればとても嬉しい気持ちになる。教師としてのリュウの感情をそのまま追体験できる形になっている。その分、リュウの目線からは見えなかった彼女らの企みが、それまでに散りばめられた伏線回収とともに明かされる時の驚きも、またひとしおなのである。
彼女ら4人(クニも入れれば5人)の生い立ちや戦中・戦後の経験は相応に悲惨なものであり、またリュウとそれなりに打ち解けるまでは良い雰囲気で物語が進行するわけではないのだが、暗く感じさせずに最初から最後までコミカルに書き切るその筆致が見事。彼女ら5人、リュウ、鞠子ら登場人物のキャラクターの書き分けも素晴らしい。
何よりも、印象に残るフレーズの数々が胸に刺さる。彼女らの半年間の成長がそのまま発露したような、黒板に書かれた最後の質問に対しての各々の答えも当然グッとくる。物語序盤の「与えられた物語を信じちゃいけない。」、「民主主義の基本は、君たちが、自分自身で考えた物語を生きること」や、「体の芯に降りてきた碇のようなもの。これを覚悟と名づけたい。」も良い。でも個人的には最終盤での孝子の「アイ、ハブ、ビーン、ハッピーでした。」を凄く推したい。それまでの教育内容の描写が、こんなところで生きるとは。
色々書きたい感情があるんだけど上手く言葉に出来ない。とりあえず言えるのは、今年読んだ中で1、2を争う良い小説でした。そのうち映像化されるんじゃないかな(長さ的に、アニメかドラマが良いかも)。
Posted by ブクログ
GHQによって東京下落合の邸宅に集められ、日系2世のサクラギから「民主主義のレッスン」を半年間受けることになった4人の女性を描いた物語。やる気や協調性を感じられない4人に対して、試行錯誤するサクラギの奮闘と協力者である仁藤鞠子の粘っこい思惑に釘付けになった。登場人物の背景をしっかり描き、何なら脇役の師匠までもが生き生きとしており、みんな愛おしい存在で、思わず声に出して笑った内容も多く、こんなに楽しい読書は初めてだった。彼女たちが考え抜いて辿り着いた民主主義の答えと、それぞれの夢が希望に溢れていて良かった。
Posted by ブクログ
制度としての民主主義と、わたしたちが感じるものとの乖離は、1946年に比べると縮まっているかもしれないが、確実にいまもあるし、この先なくなりはしないだろう
法制度上の平等は整ってきたように見えても「見えにくい壁」はあるし、だれもが平等だと感じる世界は絶対に存在しないと思う
それぞれの価値観だけではなく、性別や国籍、境遇で大きく異なる問題も多種多様で千差万別だ
ただ、わたしたちはそれを甘んじて受け入れてるだけで文句言っても始まらない
何を選んでどのように行動し、人とのつながりを持っていくのか
隣の人のことを理解するだけでもデモクラシーだ