あらすじ
東京はポエムでできている。
空と緑の都市に咲くあだ花か、アーバンライフの幻想か。
マンション広告のコピーに託された〈東京〉の正体を読む。
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Posted by ブクログ
内容とボリュームには満足なんだけど読みにくくて時間がかかってしまった、以下メモ
・マンションポエムはマンションを語らずに、土地を語る=立地を売る
→そのためには、街は比較可能でなければならない
住みたい街ランキング、“RPGシンドローム”
〜p72
・マンションポエムの中身には50年以上前から変わっていない部分がある
→持ち家を取得しようとする人にとっての理想の住まいは、「都市と自然の両方を兼ね備えた場所にあるもの」 p104
⭐︎マンション広告に根差したジェンダーバイブス
p124
・女性は家事、買い物/男性が稼いで家を買う
・マンション口コミ掲示板の地獄絵図 p126
→2020年代のタワマン文学の雰囲気はこっちに近いのでは?
⭐︎どこまで東京?問題 p182〜
・地理的な東京がどこまでも続く西側は「有名な東京の地名」が境界の内側として認識され、少し行くと行政界が迫ってくる東(千葉)と北(埼玉)側では「有名な東京外の地名」が境界の外側として認識されている。p202
・千葉県民と埼玉県民が東京の範囲にシビアで、神奈川県民はマイペースというのが面白い。
・なぜ地名はまとまっているのか p205
イメージの「東京」とは①地理(連続的)②属性(点在的)
実際の地名が途切れなく広がっている理由としては、まとまっていないと行政が管理できないから。→税の徴収のため
しかし、現在の東京の経済は土地とそれほど関係がない。大多数の市民にとって、稼ぐ場所/消費する場所/税を取られる場所は異なる。
=働く場所/遊ぶ場所/家がある場所は行政界を越える
↓
行政が管理する対象が土地から個人になったとき、地名に残る機能や意味は何か?
=ブランドとして「生産力」の源泉になること
(「港区」ブランドがマンションの値段を決めるように、地名と経済との結びつきは物理的なものではなくイメージになった)
⭐︎タワマンは垂直に伸びた郊外
・都心のタワーマンションは、その「高さ」によって多くの人々が理想の住環境だと考えている「閑静さ」を提供する。p255
⭐︎郊外文学との接続 p275〜
・高層住宅を舞台とした小説や映画に描かれた住民たちの「異常性」は、一昔前の郊外住宅在民へのまなざしに似ている。新しい形式の住宅がそれまでになく大量に出現すると、それへの違和感を反映した物語が生まれる。かつてはニュータウンや田園都市線沿線の新興住宅地がその対象であり、ここ20年ほどはタワーマンションに移ってきた。
・コロナ禍におけるマンションポエム p304
→危険な下界から距離を保ち、安全で居心地のよい高みから風景だけを楽しむことができるというメッセージ性を持つ
方丈庵の「自分の姿を隠したまま周囲を見ること」の現在形
Posted by ブクログ
昔、地方出身の親戚が上京したときに「どうしても吉祥寺に住みたい」と言って、「そこは……ギリギリ吉祥寺、なのか?」みたいなところで一人暮らししていたのを思い出す。そういえば、「どうしても広尾の住所がよかった」と言って、「広尾にこんなアパートあるんだ!」みたいな……こじんまりとした(オブラート)ところに住んでいた友だちもいたな。
地名にはイメージがつきまとうし、人によってはその価値をとても大切にする。
多分その集大成というか、行きついた先にあるのがマンションポエム、という著者の論。
もはやこれは論文では?ただ論文というには、あまりに主観が多すぎる、といったトーンで進んでいく。それにしてもよくまあここまでいろいろな観点から情報を集めたよと尊敬する。
最後の1/4くらいはちょっとグダつくかなという感じだったところもあるけれど、前半は分かる、分かるわーということの連続でかなり面白かった。
ただ、東京に土地勘がないと、分からないんじゃない?というのも正直なところ。