あらすじ
戦国筑後の盟主・柳川の蒲池家。嫡男の鎮漣はその気弱な性質から姫若と揶揄されて育った。永禄元年(一五五八)毛利元就の豊前侵攻により北部九州は乱れ、大友家からの離反者が続出。だが、佐嘉の龍造寺が毛利と画策した「大友包囲網」は大友に仕える鎮漣の活躍によって崩れた。結果、大友・龍造寺・島津の勢力争いはあたかも大陸の三国時代かのように拮抗し、裏切りも横行するなか、領主・鎮漣の戦いはひたすらに柳川の民を守るためにあり。殺戮増やすまじ。弱肉強食の時代に一筋の光を放つ名君の、知られざる感動の一生。
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Posted by ブクログ
これは面白かった!!
久しぶりのもう一回読みたいと思えた本でした。
作者の「隷王戦記」は途中で断念してしまったので、ちょっと・・・と思ってましたが、いやいや期待以上。
戦国筑後の盟主・柳川の蒲池家。嫡男の鎮漣(しげなみ)姫若などと揶揄されていたが、民のため、妻にみそめられたいがために強くなる。結果、本質が見える人には強く、頭がよく、義にもあつい、素晴らしい男。
Posted by ブクログ
戦国時代の小説と言えば、勝った負けたの話ばかり。
こんな戦が苦手な大名の話は初めて読んだ。
苦手だからこそ、勝ち負けではなく被害を最小限に食い止めようとする。それが結局は、勝利につながる。奥が深い時代小説だった。
Posted by ブクログ
豊後大友宗麟に仕え、「義心鉄のごとし」と言われた筑後柳川の武将蒲池宗雪の嫡男十郎鎮漣の生涯。
九州の戦国武将で黒田親子、島津家以外に小説の題材となるのは珍しい。
陰謀渦巻き、合従連衡の激しい戦国の世なので合戦の場面は多いが、主人公の性格を反映してか、本書では主人公の内面の描写が多く、全体を通しても叙情的な雰囲気が漂う。
義父龍造寺隆信の策略に遭い非業の最期を遂げる折にも、義父の企みを疑いながらも信頼回復を望み、半ば覚悟を決めて死地に赴いているのも、信に篤い鎮漣らしい。
鎮漣は幼少期「姫若」と呼ばれ、優れた戦略眼を持ちながらも過大な野心のない、徹底した民思いの武将として描かれているが、隆信、孫四郎、玉鶴姫、戸次道雪などとの交流を絡め、その行動原理に則りながら史実に沿った物語を紡ぎ出しているのは、作者の構成がしっかりしているからだろう。
鎮漣の妻玉鶴姫の輿入れ時期には本書のように隆信が蒲池家の庇護下に入った幼少期という説と、鎮漣が謀殺される直前という説があるそうだが、鎮漣の死後、実父隆信の誘いを断り鎮漣に殉じていることからすれば、本書に描かれた二人の長年の心の交流の末というのは説得力があるし、なにより物語に彩りがある。
隆信の従兄弟にして腹心の部下で、鎮漣とも親交を交わした鍋島孫四郎直茂は、後の江戸幕府の佐賀藩藩祖となった。
松田聖子(蒲池法子)は鎮漣の弟統安の子孫とのことだ。