あらすじ
キム・フィルビーら5人のケンブリッジ大学卒業生がソ連のスパイだったことが発覚し、英国は大打撃を受けた。だが彼らのほかに、もうひとり同時期に暗躍していたスパイがいたという。歴史学者のギャディスは親友の女性ジャーナリストからこの人物に関する本の共同執筆を提案されるが、その女性が急死し、彼は後を継いで調査を開始する。が、やがて国際情勢を左右する事実が明らかに! 巧妙に構築されたスパイ小説の力作。
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Posted by ブクログ
[6人目]1930年代にケンブリッジ大学在学中、ソ連にリクルートされた5人のスパイ"Magnificent Five(大物五人組)"。長いことその存在が噂されていた6人目のスパイの存在を明らかにしようと、長年の友人であるシャーロットから共著話を持ちかけられた歴史学者のギャディスであったが、その次の日、シャーロットが心臓発作により突然この世を去ったとの報が彼の下に届き......。著者は、新世代のスパイ小説の旗手と目されるチャールズ・カミング。訳者は、英米文学の翻訳家である熊谷千寿。
実在にあった話を土台とし、その上に緻密にリアリティのあるフィクションを重ねてきているので、(月並みな表現ですが)本当にあった話かと思わされてしまうほど。あの大物五人組に6人目がいたら......というキャッチーなつかみでギアが入ったら、後はもう次から次へと投げかけられる謎、そしてその解明の波に呑み込まれること間違いなし。何気なく手にした作品ですが、それにしては随分と楽しませていただきました。
主人公であるギャディスを始めとして、人間くさいキャラクターが多いのも本書を魅力にしている1つかと思います。また、その人間くさい不完全さが、人物を安易に白か黒で判断できなくなる効果をもたらしており、読者は「え?この人実は......」と呆気にとられること間違いなし。特に、個人的にはロシア大統領のキャラクター設定(模倣?)に苦笑してしまいました。
〜ある点を越えると、すべてが複雑になる。そうは思わないか?〜
本書を読んで改めてスパイ小説のことが好きだと思った☆5つ
Posted by ブクログ
イギリスの作家「チャールズ・カミング」のスパイ小説『ケンブリッジ・シックス(原題:The Trinity Six)』を読みました。
「ディック・フランシス」と「フェリックス・フランシス」の父子共著作品に続き、イギリス作家の作品です。
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「キム・フィルビー」ら5人のケンブリッジ大学卒業生がソ連のスパイだったことが発覚し、英国は大打撃を受けた。
だが彼らのほかに、もうひとり同時期に暗躍していたスパイがいたという。
歴史学者の「ギャディス」は親友の女性ジャーナリストからこの人物に関する本の共同執筆を提案されるが、その女性が急死し、彼は後を継いで調査を開始する。
が、やがて国際情勢を左右する事実が明らかに!
巧妙に構築されたスパイ小説の力作。
「二人の巨匠ジョン・ル・カレとグレアム・グリーンに比肩する作家だ」(「ワシントン・ポスト」)
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スパイ小説は久しぶり… 長篇作品なので、やや中だるみする感じはあったものの、ハラハラドキドキの展開で愉しめました、、、
登場人物が多いうえに、諜報関係に携わっていた人物は複数の名前を使っており、名前が覚えにくかったのは、ちょっと辛かったですけどね。
イギリスの諜報機関には、「キム・フィルビー」、「アンソニー・ブラント」、「ガイ・バージェス」、「ドナルド・マクリーン」、「ジョン・ケアンクロス」がソ連のスパイが紛れ込んでいたことは有名ですが、彼らはケンブリッジ大学在学中にソ連にリクルートされたことから、「ケンブリッジ五人組」と呼ばれおり、本作品は、そこにもう一人のスパイがいたとしたら… という設定で描かれた作品、、、
ロシア史を研究する歴史学者の「サム・ギャディス」は、離婚した妻との間の娘の学資資金に困っていたところ、親友でジャーナリストの「シャーロット・バーグ」からの誘いで、共著でスパイのスクープに関する本を出して資金を稼ごうとしていた… 「シャーロット」は、いまだ世の中に知られていない第6のケンブリッジ卒業生のスパイである「エドワード・クレイン」というスパイを追っていたのだが、そんな矢先に「シャーロット」が心臓発作で突然、死んでしまう。
そんな「サム」のところに、女優志望の女性「ホリー・レヴェット」が現れる… 「ホリー」の母親はイギリスとロシアの諜報機関から送られた大量の資料を残して亡くなったばかりだった、、、
「サム」は「シャーロット」が生前に取材した関係者のひとりである病院の看護師「カルヴィン・サマーズ」と面会し、かつて働いていた病院で死亡が偽装された男がおり、それを首謀した人物が現在イギリス諜報機関の長官である「ブレナン」であることを知った。
さらに「サム」は、「シャーロット」と連絡を取っていた人物「トーマス・ニーム」と名乗る老人に会う… 「ニーム」は「クレイン」について詳しく知っている人物ということだった、、、
「クレイン」は当初イギリスの諜報機関の中でソ連のスパイとして活動していたが、独ソ不可侵条約でソ連がナチスと手を結んだことを納得することができず、その後はソ連のスパイであったことを上司に打ち明け、二重スパイとしてイギリスのために活動していたのだった… 死期が間近に迫っている中で、自らの存在を後世に残しておきたいという衝動から自らの業績を世に出そうとしたのだった。
「サム」がこの問題に関心を持った後、多くの関係者が命を落としていく… 何者かがこの案件を掘りかえされるのを防ごうとしていることは明らかだった、、、
「ブレナン」は部下の女性「ターニャ」に指示して「サム」を見張らせていた… 「サム」はベルリンに飛び、かつて「クレイン」の死亡偽装に関わっていた医師「マイスナー」に接触するが、その直後に「マイスナー」は殺害される。
「サム」は現場で危ういところで命拾いしたものの、暗殺者を銃で撃ってしまうが、「ターニャ」に助けられ、イギリスに戻ることができた… 「サム」は「マイスナー」と面会した際、「ニーム」が実は「クレイン」そのものであることを知ったのだった、、、
「サム」は、かつて「クレイン」がベルリンでロシアの現大統領「セルゲイ・プラトフ」と一緒に活動していたことを突き止め、かつてイギリス諜報機関のベルリン支部長を務めていた「ロバート(ボブ)・ウィルキンスン」がニュージーランドに住んでいることを知る… 「ウィルキンスン」は実は「ホリー」の母親と懇意な関係にあり、入手した資料は「ウィルキンスン」からもたらされたものだった。
「ウィルキンスン」が娘の結婚式でウィーンに来るとの情報を掴んだ「サム」はウィーンに飛び、「ウィルキンスン」と会うことに成功… そこで「ウィルキンスン」から聞き出した情報は衝撃的なものだった、、、
ロシアの現大統領「セルゲイ」がかつてソ連の諜報機関の諜報部員としてベルリンに勤務していた際、イギリス側に亡命を持ちかけていたというのだ… この情報を入手した直後、「ウィルキンスン」は何者かによって殺害される。
「サム」はまたしても「ターニャ」に助けられてロンドンに戻る… 「ウィルキンスン」がホリーの母親にもたらされた資料の中には、おそらくセルゲイが亡命を求めてた際の映像資料が含まれているに違いなかった、、、
「サム」はその映像を「ホリー」の家の地下室から見つけ出し、この情報を公開しないことを条件に大金を手にして、このテーマから手を引く… 「ニーム」は再び死亡したことになり、「ダグラス・カーサイド」と名前を変えて別の場所に移さる。
しかし、「クレイン」は再び自らの情報をマスコミに売ろうと試みるのであった、、、
またもや同じ惨禍が繰り返されるのでは… という予感を残した終わり方でしたね。
終わったと思った事件が、実はまだ続いているのかも… と予感させるエピローグは、個人的には好きですね、、、
たまにはスパイモノもイイなぁ… 面白かった。
ロシアの現大統領として登場する「セルゲイ・プラトフ」は、元KGBという経歴があり、柔道の達人となっているので… モデルは「ウラジーミル・プーチン大統領」なんでしょうね、、、
本書でのイギリスとロシアの関係は事実無根でしょうが… ホントだったら、パワーバランスが崩れてしまいそうで怖いですね。
以下、主な登場人物です。
「サム・ギャディス」
歴史学者
「ミン」
サムの幼い娘
「ホリー・レヴェット」
女優
「カーチャ」
ホリーの母
「シャーロット・バーグ」
ジャーナリスト。サムの親友
「ポール」
シャーロットの夫
「サー・ジョン・ブレナン」
SIS長官
「ターニャ・アコチェラ」
SIS部員
「"デス"」
ターニャの仲間
「エヴァ」
SISの協力者
「ミクロス」
SISの協力者
「ロバート(ボブ)・ウィルキンスン」
元SISベルリン支部長
「キャサリン」
ロバートの娘
「エドワード(エディー)・クレイン」
外交官
「カルヴィン・サマーズ」
聖メアリ病院の元看護師
「ベネディクト・マイスナー」
聖メアリ病院の元医師
「トーマス・ニーム」
ソ連のスパイに関する情報の持ち主
「ピーター」
ニームの警護員
「ジョセフィン・ワーナー」
国立公文書館の職員
「セルゲイ・プラトフ」
ロシア大統領
「マクシム・ケピツァ」
在英ロシア大使館二等書記官
「フョードル・トレティアック」
KGB将校
「ルドミラ」
フョードルの未亡人
「アレクサンドル・グレック」
警備会社の経営者
「ニコライ・ドローニン」
グレックの手下
「カール・シュティーリケ」
グレックの手下
Posted by ブクログ
キム・フィルビー、アンソニーブランド、ガイ・バージェス、ドナルド・
マクリーン、ジョン・ケアンクロス。イギリスの名門・ケンブリッジ
大学に在籍した5人は、卒業後、外務省やMI5などに職を得た。
イギリス政府の為に働くのは表の顔。実は大学在学中にソ連の
情報機関にリクルートされ、祖国とその同盟国の情報をソ連に
流していた。
1950年代に彼らのスパイ活動が露見すると、イギリスには大きな
衝撃が走った。と、ここまでは実際にあった出来事。
後に「ケンブリッジ・ファイブ」と呼ばれるようになる5人に劣らぬ
スパイ活動をしていた第6の男がいたというのが本書の導入部。
主人公は財政厳しい歴史学者のギャディス。ロシア東欧の専門家
だ。本を書いて一発当てないと、別れた妻とスペインに住む娘の
学費も払えなくなる。税金も滞納しているし、さぁ、どうしたものか。
そんなギャディスに持ち込まれたのが親友である女性ジャーナリスト、
シャーロットからの共同執筆の提案。第6の男の話を書いてみないか?
ギャディスにとっては渡りに船。だが、彼女は直後に急死してしまう。
ひとりで調査を試みることになったギャディスだが、生前にシャーロット
が第6の男の件で接触した情報提供者や、何かしらの情報を持って
いると思われる人物が次々と死んで行く。
そして、第6の男の存在を探るうち、厳重に封印されたロシア大統領
の秘密に辿り着き、自身の命どころか愛娘の命さえ脅かされそうに
なる。世界が引っくり返るような秘密とはなんなのか。
という訳で、途中から第6の男からロシア大統領の秘密に主題が
切り替わってしまうのだが、最後の2ページでにんまりしちゃった。
展開が早く、ギャディスがどうなるのか気になって物語に引き込まれ
る。ただ、ころころと話の視点が変わるので混乱したこともしばしば。
そして、本書に出て来るロシア大統領がまるっきりプーチン閣下なの
である。KGBの出身、批判的なジャーナリストの暗殺、強いロシアの
再建。本書では「プラトフ」という名前なのだが、「プーチン」に置き換え
て読んでしまった。
スパイ小説と呼ぶには主人公がスパイじゃないので少々苦しいが、
スパイ絡みのサスペンスならいいかも。
あ、ロシア大統領の最大の秘密と言っても、プーチン閣下が暗殺を
指示した証拠ではありません。念の為。
フォーサイスやル・カレには及ばないけれど、それなりに楽しめた。
映画にしたら面白んじゃないかな。
Posted by ブクログ
キム・フィルビーら5人のケンブリッジ大学卒業生がソ連のスパイだったことが発覚し、英国は大打撃を受けた。だが彼らのほかに、もうひとり同時期に暗躍していたスパイがいたという。歴史学者のギャディスは親友の女性ジャーナリストからこの人物に関する本の共同執筆を提案されるが、その女性が急死し、彼は後を継いで調査を開始する。が、やがて国際情勢を左右する事実が明らかに! 巧妙に構築されたスパイ小説の力作。「二人の巨匠ジョン・ル・カレとグレアム・グリーンに比肩する作家だ」(ワシントン・ポスト)
強力なバックアップがあるとは言え、素人スパイの行動にはハラハラさせられた。
Posted by ブクログ
最近では珍しい、冷戦期のスパイ、それに続く現在のイギリス諜報部(SIS)とソ連との確執をそれに巻き込まれていく作家でもある教授を中心に描く。
キム・フィルビーらケンブリッジの著名なスパイ以外に6人目がいた、という掴みが面白いし、その正体が中盤で分かってからもロシア大統領の秘密に話がスムースに移行して最後まで読める。ただ、実在の人物も多く会話中に登場するがエスピオナージュの世界に詳しくないと全くわからないのが残念だし、話が次々に動くのは良いが最後まで主人公の曖昧なキャラがドラマの流れを阻害している。あまりにも被害者として巻き込まれていく主人公の主観が長すぎてだれてしまうし、他の人物(彼女やSISの女性オフィサー)との関わりも中途半端。
多彩な人物を配して読みごたえがあるが、もう少し整理しても良かったのでは?しかしこれだけストレートなエスピーナージュ物は久々で総じて楽しめたし次回作が翻訳されることに期待。
Posted by ブクログ
うわぁーいいのか!?と読んでて勝手にビクビクしてしまいました。あの方のモデルはあきらかにあの方…ですよね。
冷戦時代に暗躍していたスパイの真実を追う、大学教授と彼を追うものたち。ケータイやネットが発達した現在、情報伝達の手足を縛る方法はリアルで怖い。世界中どこ行っても筒抜けとか?武器を持たない主人公の危機からの脱出はまさに手に汗握る、上質のハリウッド映画を観てる時のような高揚感ありです。
Posted by ブクログ
予想以上の面白さ。ストーリーはネタバレするので割愛するか現代のイギリスのロシア史専門家がとあることでイギリス諜報機関が秘匿するロシアな関する秘密を解明することになるが、その過程で当時の関係者が一人また一人と暗殺されていく、迫り来る輪の恐怖か物語終盤のスリリングかつスピード感あるストーリー展開になり、読み応え充分である。ただ、二つの時制を紐解くため登場人物や場面が飛び飛びにならざるを得ず、序盤の難解さはいなめない。
Posted by ブクログ
ナイスどんでん、と言いかけたらまたどんでん。緊迫した語り口、やたらスムーズに進む話、疾走感のあるスパイ小説と言えましょう。ただし読み捨てです。