【感想・ネタバレ】黄金比の縁のレビュー

あらすじ

(株)Kエンジニアリングの人事部で働く小野は、不当辞令への恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。彼女が導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。自身が辿り着いた評価軸をもとに業務に邁進していくが、黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった・・・・・・。ボディ・ビルを描いた『我が友、スミス』で鮮烈なデビューを果たした著者が、本作では「就活」に隠された人間の本音を鋭く描く!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

社内のチャットボットがセクシー系の女性キャラであることをうっかり口外したことが原因で、会社を炎上させた人間として人事部に左遷された主人公が、さっさと転職していきそうな新卒を採用して会社に不利益を被らせるために、顔が黄金比に整っているかだけを採用基準にして採用試験を行っていく話。そんなコメディーのような話でありながら、「女性ならではの視点で」とか言われまくる昭和な会社のオヤジ発言とか、そもそも客観的で公正な判断なんて可能なのかとか、人は自分の判断で人の採用や退職を決めるには耐えられないから縁だとか人事部としての判断だとかに頼るのだとか、核心をつく話も出てきて深い。東工大卒で女性の筆者だからこその、尿素・アンモニアの専門的な話とか、女性がほとんどいない職場の実際とかがリアルに感じられた。最終的に、明らかに裏口入社の裏取引のにおいのする就活生を発見した小野は、結局自分の黄金比ルールに従って彼を選考突破させる。結局客観的でかつ正しい判断なんて人間にはできないのだから、迷ったら自分のルールに従って決めればいいのかもしれない。
結局、「黄金比」も「縁」も、よるべないこの世の、いかにも根拠がありそうに見えながらどれもテキトーであるところのもの、人生そのものの根拠のなさ、なのかもしれない。

0
2025年07月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

理系の男性が多く就職するような、男女日が9:1の、時代に追いつけていない化学企業の新卒採用の話。

主人公は、「女性」という理由で難癖をつけられ、自分がやりたい仕事から人事部へと移動させられた。

そんな進むべき「前(志をもって進むべき目的)」を奪われた主人公は、採用担当としての権利を活かし、会社を徐々に崩壊させる復讐を、新しい「前」に設定する。

それは、「顔の黄金比」のみで学生を選対すること。
顔の黄金比のいい学生は、離職率が高く、会社にいつまで経ってものさばるような「凡人」にはなる確率が低いからだ。

複数の基準を持って人間を総合的に評価する「新卒一括採用」とは、全くの矛盾の行動だが、そもそもそんなシステムは欺瞞であり、成り立たない。

だからこそ、顔の黄金比での採用基準がまかり通る…

日本の採用システム、会社組織の不条理さと、正しくはないが「自分の美学・信念」を持って職務を全うする主人公の皮肉さが相待って、とても痛快な部分もあった。

0
2025年11月15日

「小説」ランキング