あらすじ
大学時代から8年半付き合った婚約者を突然のバス事故で亡くして以来眠れなくなった依里は、デパートの寝具売り場で働くことに。そこには眠りについての悩みを抱える人々が訪れる。夫に言われるままあわない寝具を使う老婦人。愛着ある毛布を手放したことで寝付けなくなった会社員。家族を優先し自分は後回しの母親。そんな折、婚約者と共に亡くなった女性の夫が店を訪れて――元寝具店店員の著者が贈る眠れない夜に寄り添う物語。
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Posted by ブクログ
婚約者が事故で亡くなった。それも、他の既婚女性と一緒に…
婚約者が亡くなった事でストレスを感じ眠れなくなった依里は親身になってくれたデパートの寝具売り場の店員に救われた。それが縁で寝具売り場で働く事に。
婚約者の直樹はなぜ既婚者と出張と偽り東北の温泉へ行ったのか。ただの婚約者故の身内に入れず法事にも参列できないなど、モヤモヤはありましたが、既婚女性の主人・高橋と出会い、少しずつ前を向き始めた依里。そのまま付き合うかと思いましたが、誰かに頼る人生よりも自分の足で進もうとする依里は強くなったと思います。個人的には付き合って欲しかったなぁ。
寝具売り場で自分のやりたい事を見つけ、それに一生懸命取り組む依里にお客さんがつき始めたのも嬉しかったです。
Posted by ブクログ
とても良かった。やっぱり自分は畑野智美さんの小説が大好きです。
頃畑野智美さんがパートタイマーをされていたのはXで見聞きしていたけれども寝具店だったのですね。テーマも面白いし、お客様としてやってくる人たちの心の内や優しさに溢れていて、依里と高橋さんの変化にも心を奪われました。
高橋さんから妻についての話を聞いた後の依里の怒りがすごくリアルで、二人の関係がどうなってしまうのかドキドキしながら読んでいたのでとても素敵な終わり方で読後感も良かったです。オススメです。
各章の始めに直樹のぬいぐるみのイラストが載っていたのが最終章に変わっていたのもよかったな。
寝具に関する耳寄りな話も満載。近くの駅ビルの高級寝具店は敬遠していたけれども今度立ち寄ってみようと思いました。
Posted by ブクログ
続編が待ち遠しい。
寺地はるなさんの書評に惹かれて購入しました。
畑野さんは初読み作家さんでしたが、滑らかな文体ですらすら読むことができました。
『宇宙の片すみ』という表現に、広大な情景と小さくて狭い場所にいる自分という対比を感じ、どんな物語なのだろうと思い読み進めました。宇宙のスケールに重ね合わせるほど不眠の原因が深いものなのだろうと予測はしていましたが、やはり大きな理由でした。
全体として、こうなってくれたらいいなという期待とほんの少しズレたところにこの物語の着地点があり、限定特典のフリーペーパーで、さらに続きを読みたくなるような展開でした。
寝具の知識も学べました。枕、購入してみようかな、と思います。久々にラブコメ読んでみたくなりました。それにしても、フリーペーパーの結末の描き方がうまい!!きゅんきゅんしました
Posted by ブクログ
【宇宙の片すみで眠る方法】
眠れない人、体に合わない寝具を使い続けている人、体が痛む人。 様々な悩みに対して、自分に合った寝具を選ぶことで眠りが心と体に寄り添ってくれるという。
寝具店店員という経歴を持つ著者ならではの専門的な知識が作中に盛り込んであり、ひとつの物語を読んでいる傍ら、自分の眠りにも活用できることがたくさんあることに気付く。
主人公が真面目でまっすぐな心ゆえ、ラストは少し切なさが残ってしまう。 全てがうまくいくように人生はできていないが、タイミングが違えばふたりが一緒になる未来もあったかもしれない。
ふたりがそれぞれ生き続け、また深い眠りにつくことができる未来がそう遠くありませんようにと願わずにはいられない。
Posted by ブクログ
引き込まれて2日で読み終えた。辛くをも大好きな人に出会えて、大切にしてもらえたと主人公依里が深く思うシーンがよかった。亡くなった婚約者と住んでいた部屋で、亡霊のように婚約者が出てくる描写がなんかリアルで切ない。だんだん、婚約者が亡くなった時の様子が分かっていく構成が面白く、状況が分かった時は悲しかった…かつ結局本当のところの真相は分からないまま、それでも一緒に死ぬなら自分がよかったと依里が言うところは悲しい。自分だったら立ち直れない。
寝具店で一生懸命働く姿もよい。最後、モラハラ云々でてくるのはなんか違和感があったけれど、全体的に静かで、描写が綺麗で、悲しいんだけど悲しくなりすぎないところが良かった。
結局最後はどうなったかが気になる。
Posted by ブクログ
眠れないひと、実はたくさん居ると思うのです。眠れないというだけで孤独で苦しく、寂しくなる。
そんな眠れない日に、そっと寄り添ってくれる物語。
主人公の依里はある事情があって眠れなくなっていた。その事情は決して易しいものではない。深々と語られている。けれど、その事情をふわっと包み込んでくれる寝具たち。
世の中に、悲しんでいる人、眠れない人が出てくる物語はたくさんある。しかし合わせて寝具がでてくる物語は少ないだろう。
眠るためには心を癒すだけではなく、身体も大事。心だけではなく、身体も労わろうと。
身体を労わるための寝具。
物語が終わり、少し前を向きたくなる気持ちに変わり、快眠のコツも身につけた。きっと今日の夜はよく眠れるだろう。
そう思う物語でした。
新しい枕が欲しくなります。
タイトルの片すみが、片隅ではなく、ひらがなを使用されているのがやさしくて素敵だなと思いました。