あらすじ
ウクライナの戦野に立ち、作戦で第二次世界大戦を変えた知将。
・参謀では、フランスを早期降伏に追い込んだ作戦計画を立案。
・軍団長では、装甲部隊運用の名手であるグデーリアン将軍をも顔色なからしめるような機動戦を展開。
・軍司令官では、クリミア・黒海の大要塞セヴァストポリを陥落せしめた。
・軍集団司令官では、圧倒的なソ連軍を相手にみごとな防御戦を進め、ときには主力を殲滅した。
戦略・作戦・戦術。戦争の三階層において、上位次元の劣勢を下位からくつがえすことはほぼ不可能だが、マンシュタインはそれを果たした。
彼はドイツ国防軍最高の頭脳と称され、連合軍からも恐れられた。だが、その栄光には陰影がつきまとっている。ナチの戦争犯罪を黙認したのではないか、と。
ロンメル、グデーリアン同様、日本では独ソ戦「英雄」の研究は遅れていた。天才の全貌を描く、最新学説による一級の評伝!
■スターリングラードの廃墟で耐え忍ぶ兵士は「守り抜け、マンシュタインが助け出してくれる」とのスローガンを唱えた
■戦争犯罪人とされた訴因の半数以上はクリミアで起きた事件
【目次】
序章 裁かれた元帥
第一章 マンシュタイン像の変遷――テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼ
第二章 サラブレッド
第三章 第一次世界大戦から国防軍編入まで
第四章 ライヒスヴェーア時代
第五章 ヒトラー独裁下の参謀将校
第六章 作戦課長から参謀次長へ
第七章 立ちこめる戦雲
第八章 「白号」作戦の光と影
第九章 作戦次元で戦略的不利を相殺する
第一〇章 作戦次元の手腕――軍団長時代
第一一章 大要塞に挑む
第一二章 敗中勝機を識る
第一三章 「城塞」成らず
第一四章 南方軍集団の落日
第一五章 残光
終章 天才作戦家の限界
あとがき
主要参考文献
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ユンカーの軍人一族でヒンデンブルクの甥。エリート軍人まっしぐらで戦間期も実質的参謀本部の作戦第一課長。
WWⅡでは、電撃戦の立案者にしてヒトラーを動かす。
更に、バルバロッサ作戦では自動車化軍団長、セヴァストポリ陥落、スターリングラード解囲、撤退・反攻、クルスク攻勢と縦横無尽の活躍をし、電撃戦、浸透戦術、撤退攻勢と戦術レベルでは天才的作戦家。
しかし、著者は戦略レベルでは疑問符が付くとする。もっとも国家戦略レベルでは軍人の意見は限界があっただろうし、その下の前略レベルでもドイツの国力の限界とヒトラーの介入があったので、いずれにしろ十全な発揮ができようもなかったであろう。
ヒトラーが頻々と前線まで来て作戦に容喙し、しかも決定をしばしば翻すマイクロレベルマネージメントのまさに失敗例。
Posted by ブクログ
田中芳樹も悪いと思う
というわけで、WWⅡのドイツ国防軍において天才と評されたエーリッヒ・フォン・マンシュタイン元帥の人生を追いながら二十世紀の戦争を検証する『天才作戦家マンシュタイン』を、やっとのこと読み終えましたよ
長いわ!
しっかしあれだ
同じく大木毅さん著の『独ソ戦』のレビューでも書いたし、ほんとレベルの低い話で申し訳ないんだけど、まずかっこいいが先にくる
もうWWⅡの時点で、もうかっこいいもの
でさ
エーリッヒ・フォン・マンシュタイン元帥
ハインツ・ヴィルヘルム・グデーリアン上級大将
エルヴィン・ヨハネス・オイゲン・ロンメル元帥
ヒマハルト・フォン・メーロングラム元帥
名前並べただけでもうかっこいいもの
で、天才的な作戦とかマジでエグいもの
ほんとね、シュミレーションゲームの世界ではワクワクしかないの
そして、そういう気持ちがあることはまず認めないと
たくさんの人が死ねば死ぬほど派手な戦闘ってことなんよな
ちょっとちゃんと書いとくね
第二次世界大戦における死者数は推計で5000〜8000万人
すごすぎるわ
もう人類がアホすぎる
よし、ちょっと冷静になった
大木毅さんの筆致がすごい好みで、マンシュタイン賛美になっていないところが非常に好感
他の著作もがんがん読んでいこうと今決めました
最後にもう一回書いておくね
第二次世界大戦における死者数は推計で5000〜8000万人
『銀河英雄伝説』の死者数(推計)とほとんど変わらんのやで!
もう田中芳樹がすごい、逆に
Posted by ブクログ
戦略次元でのやらかしを作戦次元で二度も取り返したのはやはり凄い。ただ政争に関しては凡庸で、ヒムラーやハイドリヒの様な権謀術数の権化みたいなのと比較したら可哀想。作戦術だけさせてくれれば、他のことにはあまり(モラル的な意味でも)頓着しないという姿勢だったのがニュルンベルクで効いてきた感じ。第三帝国という特異な環境において華開いた戦果の光と影。
Posted by ブクログ
戦史あるいは軍事行動作戦史?の分野で、多くの著作のある大木の力作。
WWⅡにおけるドイツ西部戦線の初期の躍進、東部戦線の難局の経営を支えた、傑出せる作戦家マンシュタインについての長大な評伝。優れた軍指導者であったことにはまぎれもないが、19世紀的感性の貴族的テクノクラートとしての限界もあった、とのこと。