あらすじ
地方都市・天島市で造船業を営んできた大家・扇谷家で2025年4月、予言者として一族を繁栄させてきたおばあさまの手帳が見つかった。手帳によると、おばあさまは100歳となる今年死亡するらしい。一族の皆が集まり、家じまいをすることになるのだが、本家の娘・立夏には気になることがあった。それは認知症になって以来、おばあさまが繰り返し「若い頃、桜の木の下に死体を埋めた」と言っていたことと、言葉なき者の声を聞く能力を持つ立夏は、それが本当だと知っていること――。
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Posted by ブクログ
静岡本屋大賞受賞作なので
読んでみた
予言する力のあるおばあさまをはじめとする
不思議な力を授かる扇谷家の女子
11月に死ぬというおばあさまの予言にむかって扇谷家の家じまいがはじまる
そして家を市に寄贈するにあたり、桜の木を切ることが条件になるが、その木の下に死体を埋めたという話をおばあさまから聞いていた孫娘の立夏は…
力をめぐってしきたりのある家につながれる子どもたち
扇谷家一族のそれぞれの過去の思いや今の思いが短編のように綴られて、おばあさまの最期につながっていく
登場人物それぞれの愛が温かい素敵なお話でした。
これは映像化間違いないでしょう
Posted by ブクログ
題名を見て、遺産相続で骨肉の争いがあり一族が滅びる、という話かと思って読み始めたけど、全然違いました。"不思議な"がポイントですね。帯をよく見ると、ホラー要素も少しあり私好みのお話でした。
扇谷家という名家の血を受け継いで生まれた女性には不思議な力が。それによって色々な制限があり、一族の女性は窮屈な想いをする。それは男性も。制限に抗おうとしてもどうにもならない。決められた未来だから。そこで自暴自棄になるかと思いきや、扇谷の人間は強い。窮屈な人生を受け入れて、抗いながらも生きていく。特に女性たちの決意がジーンとくる。
心温まる話でした。家じまい、扇谷家の人たちにとって忘れられないものになったんだろうな。
Posted by ブクログ
造船業を営んでいた地域の名士、扇谷家。高台の豪邸。
扇谷の女にだけ発現する未来予知等の超能力。
ワクワクする要素が満載。
このままミステリーやホラーになればおどろおどろしい展開になりそうなんですが、
ハートフルで優しい物語でした。
Posted by ブクログ
未来を見る能力は便利そうだ。でも、先がわからない方が幸せなのかもしれない。
千里眼も役立ちそう。でも、見たくないものまで見てしまいそうで怖い気もする。
朽ちた桜が満開になり大団円。大人のためのファンタジーだった。
Posted by ブクログ
美雲の千晶に対する友情を超えた、でも性的なものも感じさせない崇高な愛の形を時子が受け入れた時、代々取り決められた相手の結婚を余儀なくされ続けてきた秘められた超能力を持って生まれた女子たち一族の未来に風穴を開けられる。でも、彼女達は過去、それに強制させられたり、甘んじてきたからといって、不幸には見えなかった。ただ強固な砦であっても時代の流れで瓦解していくものだ。彩菜や立夏がどういう伴侶を選ぶか(持たないないという選択もあるが) 、続編がもし出れば是非読んでみたいものだ
Posted by ブクログ
扇谷家には預言者、千里眼、言葉なき者の声を聞く者などの超能力を持つ女性が産まれる。この設定だけでも好みだし一族のキャラもいいし、おばあさまが遺した予言帳など絶対面白い。どんな謎が解き明かされるのだろうととても期待しながら読み進めると、少し期待とは違った方向だったけどそれでも楽しめた。時代ごとに視点も変わり、それぞれの立場から超能力や家の掟などについて書かれているけどこの内容では1話が短すぎる印象。もっと話を膨らませることも盛り上がることもできそうだし読みたかった。言葉選びがとても良くて心に残したくなった。
Posted by ブクログ
扇谷家という一族のファミリ 一・ヒストリーがそれぞれの視点から語られる物語。女性が代々不思議な能力を持つ扇谷家の女性達を中心に展開するそれぞれのエピソードに不思議な力のエッセンスが感じられる。波乱があると分かっていても好きな人の傍にいることを選び、自分の道を突き進む美雲さんが好きだなと思った。家じまいをした後も、植物が根を張り枝葉を広げていくように、この家の物語は続いていくのだなと思える、余韻のある終わり方も素敵だった。
Posted by ブクログ
扇谷(おうぎたに)家は、港を擁する天島市(あましまし)で、かつて造船業を営んで財を成した家です。
その屋敷は、天島港を見下ろす高台の一等地にある二階建ての和洋折衷の邸宅で、母屋の延床面積は百坪を超え、それより広い庭があります。3台停められる駐車場があり、裏庭には大きな桜の木が植わっています。
二〇二五年四月、大学二年生の扇谷 立夏(おうぎたに りっか)さんは、今年百歳になる曾祖母の時子(ときこ)さんが認知症で施設に移ってから空き家となっているこの屋敷の掃除の手伝いを両親から命じられました。
めぼしいものがあれば持って帰ってメルカリで売って小遣いにしても良い、と言われていたため、食器棚の食器を物色していた時、立夏さんは自分宛の手紙を見つけます。
見るからに高級な封筒の中には、便箋とポケットサイズのノートが入っていました。便箋には、こう書かれていました。
「扇谷立夏様
前略
よくこの手紙を見つけましたね。
わかっていると思いますが、同封した冊子は予言帳です。大事なことを書いてあるので、今すぐ一族に連絡し、面々が揃い次第、中身を確認するように。
頼みましたよ。 かしこ
扇谷時子」
一族十四名が加入するLINEグループで呼び出された面々が予言帳を広げると、そこには「二〇二五年十一月十三日に時子さんは亡くなる」と書かれていました。
実は、扇谷家の血をひく女性は代々不思議な力を受け継いでいて、時子さんは「予言者」で、その能力で扇谷家の繁栄を導いてきた人でした。
この予言帳が本物であることを一族のもう一人の「予言者」である美雲(みくもさん)が認定し、面々は時子さん亡きあとの財産について話し合いを始めます。
しかし、この古い大きな屋敷については、皆が持て余すと思っています。屋敷を天島市に寄付して文化財として活用してもらおう、ということで話がまとまりかけますが、市は裏庭の桜の木を伐採することを条件として提示していることが分かりました。
伐採条件のことを聞いて皆の表情が曇ります。というのは、時子おばあさまが、認知症になる前から繰り返し「若い頃、桜の木の下に死体を埋めた」と言っていたからです。しかし、さすがにそんなことは無いだろうと皆が思い直した時、立夏さんは本当のことなのではないかと思っていました。
なぜなら、立夏さんは、扇谷家女性に伝わる特殊能力の1つ「言葉なき者の声を聞く能力」を持っていて、桜の木の地縛霊と話しができるからでした。
でも、当の地縛霊(男性)は、自分が殺されて地縛霊になったのかどうかは覚えていないのでした。
さあ、はたして桜の樹の下には本当に死体が埋められているのでしょうか? そして、時子さんは本当に11月13日に亡くなるのか? また、扇谷家の家じまいは上手くいくのでしょうか?
お話は、扇谷家の人々の歴史を辿りながら真相に近づいていきます。
女性たちの不思議な能力と家や人との繋がりのお話をお楽しみください♡
〔目次〕
二〇二五年四月の予言帳
一九九〇年五月の扇谷家の人々
一九八六年六月の結婚
二〇二〇年七月の恋
一九四五年八月の告白
二〇一七年九月の予言者
二〇一〇年十月の葬式
二〇二五年十一月の別れ
二〇〇四年十二月の友情
二〇二二年一月の家族
一九三八年二月の思い出
二〇二六年三月の未来
Posted by ブクログ
思ったより不思議な感じはしなかった。
この物語は、扇谷家という一族の断片的なファミリー・ヒストリーである。一話の主人公である立夏からすると曾祖母の時子が、認知症を患って施設に入所したことから、彼女の住んでいた家を親戚一同で家じまいするところから始まる。
不思議な、と題しているのが何故かというと、この扇谷家に生まれる女性には超能力が発現するからだ。曾祖母の時子は予知能力者。自らの死期を記した予言帳なるものを、立夏の片付けそうなところに隠しておき、見つけさせた。
予言帳には時子が十一月の十三日に死ぬことが書かれていて、家族はその日までに誰も住まなくなった家をどうにかしようとする。だが、気がかりな点が一つあった。時子は認知症になってから頻繁に、自分は昔人を殺して桜の木の下に埋めたといっていたのだ。
この謎を中心に物語が進むのかと思ったら、そうではない。物語は総勢十八人の扇谷家に関係する親戚の中の、大叔母・恵美子、父の従弟・羽矢彦、父の従妹・美雲のエピソードを中心に断片的なストーリーがまとめられている。それも、予言帳とは関係のない若い頃の、受験に悩んだ話やプロポーズした話や子供が生まれる時の話だ。
そういった誰にでも起こり得るエピソードの中に、少しだけ不思議な力のエッセンスが匂う。
時子の人を殺したという話も淡々と明かされ、他のエピソードと同じように扱われている。というか、まず立夏たちがその言葉の真偽を探ったり、死んだ男が誰か突き止めようとしたりしないのだ。まあ、おばあさまならやりかねないけど、記憶を混同してるんだろ、で終わりである。
視点がすべて扇谷家の人間になっているのも、この物語から「不思議」が失われている一因かもしれない。彼らにとっては昔から家族の中で当たり前に守られ、利用されてきた力。予言も千里眼も、霊と話す力も、想定内とされて淡々と進む物語だった。
文章はとても読みやすく、ストレスもまったくない。物足りなく感じたのは期待値が高すぎたせいかな。