あらすじ
刀の様し斬りと罪人の斬首を生業にしている山田朝右衛門は、死に取憑かれていた。師匠、思い人、兄弟子・・・・・・大切な人を次々になくし、荒れきった屋敷でただひとり、自分の寿命が尽きるのを待ち、お役目だけの日々。そんな無聊の中、あり得ないことに、ひとりの罪人の斬首をし損ねてしまう。服部半蔵を名乗り、身軽に逃げ去ったその男は不老不死で、斬られた首さえ再生させることができるという。しかも、余人からは記憶に残らない顔に見える反面、朝右衛門からは半獣に見えていた。屋敷に転がり込んできた半蔵は、300年前から彼を知っていると言うが・・・・・・。安倍晴明の子孫、沖田総司、土方歳三、吉田松陰など幕末の激動を生きるものたちとの交流、死神との対決の末、朝右衛門がつかんだものとは――。幕末怪異ファンタジー。
【著者プロフィール】らんどう・つばめ 1995年生まれ。徳島大学総合科学部人間文化学科卒業。2020年、「めめ」でゲンロンSF新人賞優秀賞受賞。2021年、『鯉姫婚姻譚』で日本ファンタジーノベル大賞2021大賞を受賞し、デビュー。本作が二作目となる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ちょっとグロいけれども、どんぴしゃに好みの本だった。
不死身の半蔵と、刀の様し切りと罪人の斬首を生業とし死神に憑かれている朝右衛門のコンビがとても良かった。
吉田松陰や沖田総司が晴明がでてきて、面白い。
二人だけの生活になるのかと思いきや、紺太夫の息子、犬憑きの柴丸を引き取ったことで、またさらに深みが増して良かった。
犬神の墨麿が可愛い。
シリーズ化させるのかなぁ。期待したいなぁ。
Posted by ブクログ
死神に取憑かれた山田朝右衛門と不死になった服部半蔵、人や妖怪を切るシーンは、読んでいても強烈だったが、作品全体には常に優しい気持ちが流れていて、あっという間に読めた。
新川帆立が藍銅ツバメについてXで書いていたので興味を持ったのが、読むきっかけだった。実写版があれば見てみたいなぁとも思った。
Posted by ブクログ
二人で事件を解決するといえば聞こえはいいが半蔵の執着っぷりがもはやブロマンスなのよ。
ちなみに15両は200万円くらいらしいので柴丸が激おこになるのも無理はない。
Posted by ブクログ
初めて読む作家さんだが、楽しく読めた。
幕末の江戸で死罪人の処刑を生業としている朝右衛門の前に、馬とも鹿ともつかない獣の顔をした男が現れる。
死神に憑かれた朝右衛門と、不老不死の呪いを掛けられた半蔵とのバディもの。
自分の近くにいる者が次々と亡くなっていく不幸が続く朝右衛門と、何百年も生きて仕える人を次々と見送ってきた半蔵との、それぞれの孤独と生き方や人との交流の仕方が描かれる。
ひたすら耐え忍びやり過ごす朝右衛門と明るく懐に飛び込む半蔵の対照的なキャラも良い。
終盤は朝右衛門が唯一遠ざけ生かしている同門の親友·紺太夫との運命が描かれ、目が離せない。
幕末の歴史上の人物も登場し、より興味深い。
ふたりの結末がどうなるのかと思いきや、新しいキャラクターも現れて賑やかになる。
悲しい結末にはならないようにと願いつつ読んだが、意外にも晴れやかな希望もあり、ほっとした。
Posted by ブクログ
明るいエンタメ。いや、人の首は飛ぶし結構血生臭い話だと思うんですが、読み終わった時の感覚がエンタメだったので、エンタメでいいと思う。幕末って雰囲気はそこまでしないし、吉田松陰をはじめ幕末の有名人が出てくるけど短編小説のゲストキャラ的な扱いなので、ほぼ作中には絡んでこない。満足はしてるけど、わがままを言うならもう少し盛り上がりがあってもよかったのになと思う。
Posted by ブクログ
刀の様し斬りと罪人の斬首を生業にしている山田朝右衛
周りにいる大切な人を次々と亡くし、一人淡々と役目を過ごす日々だった
斬首をしくじり、逃亡した罪人が浅右衛門を訪ねてくる
半蔵と名乗り、浅右衛門と一部の人には馬鹿のような頭部に見え、不老不死だという
死に取りつかれた浅右衛門と不老不死の半蔵
二人の関係性が面白い
柴丸と墨麿の成長も楽しみだし、続きを読んでみたい
Posted by ブクログ
はい、まだあまり世間に知られていない作家さんをいち早く読んで後々売れっ子になったとき、まぁわいはだいぶ早いうちから目を付けてたけどね!って言うための企画「発掘王への道」#10です
なんとほぼ1年ぶり
そんなこともやってたな〜状態です
今回は藍銅ツバメさんの『馬鹿化かし』です
まずは藍銅ツバメさんのプロフィールから
1995年生まれ。徳島大学総合科学部人間文化学科卒業。
ゲンロン大森望SF創作講座第4期を受講し、2020年に「めめ」で第4回ゲンロンSF新人賞優秀賞を受賞。
2021年に「鯉姫婚姻譚」で日本ファンタジーノベル大賞2021大賞を受賞。翌2022年に『鯉姫婚姻譚』を刊行し単行本デビューする。(ウィキペディアより)
本作『馬鹿化かし』は幕末を舞台に、死神に憑かれた首斬人の山田朝右衛門と不老不死となり三百年生きる馬とも鹿ともつかない顔を持つ初代服部半蔵の主従が江戸の町で様々な怪異に出逢っていくという伝奇小説となっております
なるほど〜、物語全体を覆うおどろおどろしい雰囲気の中、生と死の狭間で生きるふたりの物語を通して、生きることと死ぬことは一体なんなのかと言うことを問いかける!なんてつもりは一切なくエンタメとして楽しんでほしいみたいw
作者の藍銅ツバメさんはゲームや法話が大好きでそんなところからもインスピレーションを得ているそう
また、宮部みゆきさんや京極夏彦さんもよく読んでいるとのことで、おーなんか第三世代登場か?って感じやな
文体が非常に伝奇小説向けというか、雰囲気があるのに、キャラ重視のライトノベル感も合わせ持つという不思議な仕上がりになっていて、新たな伝奇小説の担い手としてちょっと注目したい作家さんですが…もっと、どんどん書かないと置いてかれてしまうで!