あらすじ
新人賞に応募された小説作品「完璧な家族の作り方」。
角川ホラー文庫編集部は、著者のある目的のため、本作の書籍化を決定しました。
※本作は、note主催・創作大賞2024〈角川ホラー文庫賞〉受賞作です。
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Posted by ブクログ
北九州のある住宅でかつて起きた凄惨な事件。心霊スポットとなったこの家で続出する行方不明者と心霊現象の謎を関係者の証言他から追った記録と、浮かび上がる家族の忌まわしく歪み切った肖像。
認知症になった老母の介護のため幼い息子を連れて東京から戻って来た鷹村翔太。元々10歳の時に父親の転勤で北九州へ引越してきた彼は、転校先の同級生たちにけしかけられ、近所にある気味が悪い誰も住んでいない一軒家に立ち入り、そこで世にも恐ろしい体験をする。それから21年後、再び北九州へ戻って来た鷹村は件の家がまだ残っていること、息子がその家に関心を示し「黒い人がいる」と語ること、さらには徘徊の始まった母親が夜毎息子を連れてその家の前に立つようになったことを知って次第に憔悴していく……。
物語は鷹村への聞き書きを主に、その家の持ち主や近隣住民、行方不明事件に関わったYouTuber等への聞き取り、凄惨な事件の当事者の日記とインタビュー記録(これがとにかく悍ましい)、過去の新聞記事、etc……を織り交ぜ、その家でかつて何が起きたのかが徐々に明かされて行く。また鷹村翔太やその他の人間に話を聞いているのは作家らしく、この家と事件を題材にホラー小説を執筆するつもりであることが幕間のメモで次第に見えてくるが……。
これも流行りの(というか一カテゴリとして既に定着した感のある)モキュメンタリー・ホラーではあるが、一軒家、そこに深く関わる事件と人物……と、場所も語られる内容も限定されており、それ故か話の全体像は中盤で見えて来る。鷹村の元に処分しても繰り返し現れるポラロイド写真が強烈に忌まわしい印象を残す。
これほど“一冊全てが悍ましい”小説を読んだのは久しぶりかもしれない。
Posted by ブクログ
気色悪ぅい、湿度の高い、王道忌み地ホラー。嫌な家に、嫌な家族が住んで、嫌なことが起きて、嫌な感じに死んで、死んだ後もみんなに嫌なことをしてる。結構楽しめた。ちょこっとびっくりしたけど、どんでん返し系ではない。
Posted by ブクログ
北九州にある最凶心霊スポット「虎ロープの家」にまつわる話。
音声記録や手記で構成されてる話だけど、なんだろう、いろんな設定や捉え方ができてモヤモヤとしちゃうあたりが、モキュメンタリーホラーの醍醐味なのかな。
単純に考えたら「翔太=篤と姉の子」なのかなとも考えられるし。
Posted by ブクログ
サイコ+オカルトホラー。
最低な親のせいで歪んだ子供たちが始まりかなと思ったけど、結局なんだった?と思ってしまう終わり方。
「何か悪いもの」「建ててはいけない門」なのはわかったけど、それから???という気持ちになりました。
内容は嫌な気持ちになる系のホラー。
Posted by ブクログ
怖かった…けれど、
とにかく、今昔いつの世も結局悪いのは人間なのだ。
ひとりの狂人の手によって歪に成らざる得なかったある家族、外への救いが望めない状況の中、内へ内へと進む中で子供たちは閉じた円環を結び、
その輪こそが完璧な家族となる。
やがて全員が死に絶えてもその輪は残り、新たな家族をその内に次々と取り込んでゆく。
そして、
そこで起こったそれらの事件の語り部こそが、我知らず円環の中央に座する者だったとは!
怖さは勿論、それ以上に気分の悪い物語だった。
作者自身も恐らくはそれを意図してこの作品を紡がれたのだと思う。
それも一つの悪意なのだろう。
2025年現在そしてその界隈、世界ではあちこちで暴力とそれに伴う怨嗟が渦巻き、日々それらの情報は刷新されて地球上を席巻する。
我々にとってセンセーショナルだったニュースはやがて耳慣れたただの情報へと変わり、心は麻痺を起こす。
麻痺するという事は知らず知らずのうちにそれらを受け入れているに他ならない。
静かに悪意と暴力を咀嚼しているのだ。
かくして、新たな悪の胚芽が誕生する。