【感想・ネタバレ】かずをはぐくむのレビュー

あらすじ

「生まれたばかりの息子を初めて腕に抱いたとき、いつか彼が数をかぞえたり計算をしたりする日が来るとは、まだとても信じられなかった。言葉もない、概念もないのだ」(本書より)。しかし、やがて、子どもの心の中には数が“生まれ”、おとなと共に“育み”あうようになる。3歳と0歳のきょうだいが、8歳と5歳になるまでの驚きに満ちた日々。独立研究者、森田真生があたたかく見守り、やわらかに綴る。画家、西淑による挿絵もふんだんに掲載。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ほんと、この人の言葉が好き。私が大切にしたいと思ってることを掬い上げてくれるよう。
動画やゲームなどの人から与えてもらう楽しみだけではなく、自分で楽しみを創り出せる人になるためには、「感じる」「分かち合う」経験をいかにしてきたかだなと思った。


・今回改めて実感したのは、虫や草花や木々や土など、人間でない者たちの存在がいかに、子どもたちの才能を引き出していくかだ。「教室」で「人間」の話だけを聞くという特殊な環境に「education」を閉ざしてしまっては、あまりにもったいないのである。
・食べ物や、資源を社会で分け合うときも、厳密な数値や計算を提示すると、いかにも公平感を演出できる。だが、分配に公平さを感じる人間の心は、もっとはるかに 複雑で曖昧なものである。厳密で正しい計算だけが、分配の全てではない。たとえば弁当を家族で分けるとき、いちいち重さを厳密に計測していたら、食事の時間も楽しくないだろう。分配の本質は、みんなが少しでも楽しく 喜びを分かち合うことである。
・現代の人類が直面している気候変動やパンデミックは、「どこが違う場所に逃げる」ことで回避することができない。「この場にいながら問題を解く」という、植物がこれまでずっとやってきたことを、僕たちは自分の課題として、背負ってしまったのである。だから、もっと植物に学ぶ必要がある。粗雑な現状認識のまま、闇雲に動くのではなく、まずは現状を精緻に把握するための感覚を磨いていきたいと思う。
・自分のどこを探しても、自分でないものがいない場所はない。これが、地上で生命を持つすべてのものを共通する最も基本的な原理なのである。自分であるとは、自己の存在を、他者とシェアしていることなのである。
・自然の生き物は、人間をいたわってくれるからではなく、人間に無関心でいてくれるからこそ、僕たちをなぐさめてくれる。
・何をしていいと言われるよりも、何をすることができないかをはっきりさせていくことでこそ、新しいもの、面白いものが、生まれることがある。目の前の制約を、新しい何かが生まれる支えととらえてみること―制約を遊びと創造に転じる、ひとつの楽しい工夫である。

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2025年11月28日

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