【感想・ネタバレ】新訳 赤毛のアンのレビュー

あらすじ

Anne of Green Gables
By Lucy Maud Montgomery,1908

これからの女の子たちへ。かつての女の子にも。
【NHKアニメで話題】
本当の子じゃない。でも、家族になれた。――永遠の名作を新訳&完全訳で。

偏屈な年寄り兄妹マシューとマリラは、孤児院から働き手として男の子を引き取ることに。なのにやってきたのは、赤毛でそばかすの少女アン。マリラはアンを追い返そうとするが、アンは号泣し…。自然豊かな美しい島を舞台に、夢見る少女が起こすおかしな騒動。そそっかしくて失敗ばかりのアンが感動をもたらします。泣いて笑ってキュンとする、世界中の少女が恋した名作を新訳・完訳で。アンが親しんだ英文学の徹底解説も掲載。

「新訳 赤毛のアン」シリーズ、1~3巻を、2ヵ月連続刊行
1巻『新訳 赤毛のアン』発売中
2巻『新訳 アンの青春』2025/4発売
3巻『新訳 アンの初恋』2025/4発売

英文学研究の第一人者だから訳せた、文学少女としての『アン』。
訳者あとがきで、アンが親しんだ文学作品についても徹底解説!

カバーイラスト/金子幸代
カバーデザイン/鈴木成一デザイン室

※本書は二〇一四年三~四月に角川つばさ文庫より刊行された児童書『新訳 赤毛のアン(上) 完全版』、『新訳 赤毛のアン(下) 完全版』を一般向けに大幅改訂したものです。なお、訳者あとがきは書き下ろしです。

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Posted by ブクログ

河合さんが赤毛のアンを新訳!?と情報解禁の際に驚いたものの、考えてみればシェイクスピアが全編に散りばめられたアンの世界を、シェイクスピアの第一人者である河合さんが訳すのはとてもわくわくする流れで、大好きなアンの世界にまた新たな魅力が沢山見つかりそうで胸が高鳴る。

不思議の国のアリス同様、沢山の翻訳家さんが訳してきた世界的文学作品であり、有名な名称や言い回しが多い作品だけに、新しく訳すことの難しさやどこに特色を付けていくか、往年のファンの方々への配慮など、細部に渡り大変でチャレンジングな訳業をこうして大御所である河合さんが新たに担ってくれたことに歓びを噛みしめながら読んだ第一巻。

一番馴染みのある村岡花子さん訳での呼称や言い回しなどと比べてみるだけでも違いに個性が垣間見えてとても面白く、長い時間をかけて久しぶりにじっくりとアンの世界に浸ることができた。今年は新しくNHKでアニメ「アン・シャーリー」も放送されたので、アニメの新旧・小説での新旧を平行して鑑賞し、自分好みのグリンゲイブルズを脳内に展開していくのにも絶好の機会ではないだろうか。

「歓喜の白路」は「喜びの白い道」、「輝く湖水」は「きらめきの湖」、「恋人の小径」は「恋人の小道」など、少しずつ様変わりをしているが、「すみれの谷」や「樺の道」など名称もそのままにアヴォンリーの豊かな景色が受け継がれている。

『訳者あとがき』に河合さんご本人が書かれているように、「シェイクスピアを専門とする英文学者の私が本書を訳す意義は、その文学性を余すことなく汲み取るところにあると考え、その点を特に配慮して丁寧に訳した」とあるように、豊かな空想力を持つアンを包む世界は少女特有の夢見がちで傲慢できらめく世界でありながら、シェイクスピアのように詩的でロマンチックな憂いを纏っている。

少女から女性へと成長していくアンの姿は、時に読者自らの忘れがたき時代の姿となり、希望や絶望、くるくると目まぐるしい感情に翻弄された眩しい季節の中の少女として心地よく甘い痛みが遠くから押し寄せてくる。

ページを閉じてなお、詩に始まり、詩に終わる構造を持つ美しいアンの物語を河合訳で読み直すという僥倖が始まったばかりであるという興奮が胸を満たす。「神、空に知ろしめし、世はすべて、こともなし」。

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2025年11月28日

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