あらすじ
中学二年生の風汰が、授業の一環である職場体験として選んだ先は保育園。「子どもとあそんでいればいいってこと?」と安易な気持ちで選んだ体験先だったけれど、いざ始まってみればもちろん楽な仕事のはずはなく、なかには親との関係が気がかりな園児もいて……。保育士や園児たちと過ごした5日間、風汰の目や心がとらえたこととは? 青少年読書感想文全国コンクール課題図書(2020年中学校の部)選出作。等身大の十代読者をはじめ、大人にも読んでほしい物語。 解説・椰月美智子
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Posted by ブクログ
良かった……。清々しくて真っ直ぐで思いやりに満ちている作品でした。
中二男子が、楽そうなイメージで選んだ保育園での職場体験が描かれています。
言葉使いに関してはいかがなものかと思いましたが、彼が自然に他者に寄りそえること、そしてその人の気持ちを慮って咄嗟に動けるのがすごいと思いました。
幼い子どもは幼いなりに大人が思っているよりずっとたくさんのことを考えているし、敏感にいろいろなことを感じている。
心が痛むような現実がある一方で、手を差し伸べてくれる人や“差し伸べたい”と思っている人は想像しているよりももっといる。
読みながら、保育園の在り方や意義についても考えさせられました。
『小さいけど、強い。
だけど、本当はもっともっと弱くていい。』
ただこれだけの言葉に、切実な事情が透けて見えて涙が出そうになる。読み心地はサラッとしているのに、感動に包まれました。
色々と思い出して懐かしくなったり、改めて子どもの成長や保育士という職業の偉大さに感じ入ったり。
素朴で素直な雰囲気がただよう、人の優しい眼差しを感じられる素敵な作品でした。
中学生の風汰が保育士になった続編「蒼天の星」も読みたい!
『平等って全員に同じことをしてあげることじゃないと思うの。一人ひとり、その子にとって必要なことをしてあげる。それでいいと思うのよ。』
Posted by ブクログ
職場体験で保育園に行った主人公。職場体験の経験はないけれど、保育園に子どもを預けていたので、なるほどと思いながら読んだ。親子のあり方についても、色々あるよねというモヤモヤした形で終わっているのだけど、それが、帰って現実感がある。いい加減な主人公なのだけれど、子どもに好かれているのも、裏表がないのを子どもが見抜くということなのかと思った。
Posted by ブクログ
中学二年生の斗羽風汰。職場体験先を選ぶ際、「ラクそうだから」という理由で保育園を選ぶ。だが、始まった職場体験は想像以上に大変で。しかし、そこでの保育士や子どもとの出会いに風汰は色々と考えさせられて…。
面白かった。
担任教師や一部の保育士からは"いいかげん"だと思われがちな風汰の性格。確かに"いいかげん"かもしれないが、子どもに人気はあるし、これぐらいの性格の方が保育園なり幼稚園なり学校なり子どもに関わる仕事をするのに向いているんだよなと実感する。
ただの職場体験にきた現場をよく分かっていない者に対してろくに説明もせずにツンケンとした態度を取る保育士・林田の存在も妙にリアル。こういう"しごとはデキルから新参者を見下す人"っているよね。
保育園に限らず、幼稚園学校など子どもを預かってあげている場にはいろいろな保護者がいる。ささいなケガや虫刺されで「なんでちゃんとみていなかったんだ」と怒鳴りこんでくる親、それでいて子どもが発熱していても迎えに来ず結局は保育士が子どもを病院に連れていってあげることになる家庭。そんな親に憤りを覚える風汰に対して、保育園の園長や林田は「わたしたちはね、お母さんの代わりはできないけれど、お母さんができないことをほんの少し補うことはできる」(p.140)や「あたしたちはさ、子どもたちのそばにある調味料なの。」(p.150)などとフォローを入れる。この言葉に納得はできそうだが、同じように子どもと関わる仕事をしている身としては、『こちらが過大な負担をかけられてまで親の代わりをしてあげる必要があるのか』『産んだ以上はもっともっと子どもに対して責任をもつべき』『預かってあげている場で起こったささいなことにいちいち文句をつけてはいけない』といろいろと考えさせられた。