あらすじ
焼肉擬人化漫画をこよなく愛する腐女子の由嘉里。人生二度目の合コン帰り、酔い潰れていた夜の新宿歌舞伎町で、美しいキャバ嬢・ライと出会う。「私はこの世界から消えなきゃいけない」と語るライ。彼女と一緒に暮らすことになり、由嘉里の世界の新たな扉が開く・・・・・・。推しへの愛と三次元の恋。世間の常識を軽やかに飛び越え、幸せを求める気持ちが向かう先は? 死にたいキャバ嬢×推したい腐女子――金原ひとみが描く恋愛の新境地。第35回柴田錬三郎賞受賞作!
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Posted by ブクログ
初めての金原ひとみ作品。面白かった〜!
ストーリーもさることながら、随所に出てくる、現代の若者が抱きがちな幸せとか生きることに対する価値観に対する提言というか、「もっと気楽に生きたらいいんじゃない」というメッセージのような表現が散りばめられていて素敵だった。
恋愛経験0の腐女子・由嘉里が数合わせの散々な合コンで飲みすぎて気持ち悪くなったところに、「救急車呼んだほうがいい感じ?」と救いの手を差し伸べたキャバ嬢のライ。それまで交わることのなかった2人が共同生活を始め、心の距離を縮めていく、と思いきやそう単純な話ではない。生に対する価値観が違う人と心の距離を詰めて生活していく楽しさも感じたし、やっぱり分かり合えない部分もあるよねというリアルな描写もあり、そのバランスが面白かった。
由嘉里が自分の母親を嫌厭するようになった原因とも言える、母親からの「幸せの価値観」の押し付けを、由嘉里もまたライに対してしてしまっていたのでは、という後悔を感じている部分は読んでいて辛かった。「死んじゃダメ」という由嘉里にとってはまごうことなき「正しい価値観」を、気づかぬうちになんとかライに分からせようとしてしまった。それはライのためでもあるけれど、自分のためでもあった。その構造が母親が由嘉里にしていたことと同じすぎて、そして自分にもそんなことあるなと感じて辛かった。結局ライが消えてしまってどう思っていたのかわからず、答え合わせができないのも残酷だなと。
そしてライが消えてしまったのが思ったより早かったのももどかしかった。最終盤で消えてしまったならまだ良かったけど、意外と早く「もしかしたらライに繋がる手がかりが最後に出てくるのかも?」とドキドキしながら読み進めたので、由嘉里が抱いているであろうもどかしさや虚無感を共有できた感覚になった。
アサヒもユキもこじらせすぎて個性が強く、でも生命力に溢れるというか、欲望に真っ直ぐというか、そういう変な計算をしないで生きる生き方には憧れも感じた。アサヒはチャラチャラしているように見えて、由嘉里に恋愛についての話(人と触れ合うのってちょっと気持ち悪いものだから、本当に気持ち悪くないと思えるような人と出会えるまでは無理して恋愛する必要ないみたいな話)をしていたところはすごくかっこいいと思えた。そして由嘉里はみんなと関わるうちに(特にアサヒ)、生きる上で肩の力を抜いて息をしやすくなっているように変わっていったように感じられて、アサヒと由嘉里のコンビはすごく推したいと思った。
Posted by ブクログ
恋愛経験のないアラサー婦女子と、希死念慮のあるキャバ嬢ライをはじめとした歌舞伎町でのお話。
最近、希死念慮を持つ人と話してすごく驚いた。かなり忘れっぽく、前しか見れないような自分が、そのことをそれから時々考えている。そんな中でこの作品に出会った。
それぞれが自分の世界を、自分の価値観で生きている。似ていることもあるし、全然違うこともある。そんな他人の世界を理解し切ることはできない。相手が望まないまま押し付けようとするのは自分のためでしかない。
でも、それぞれが自分のために生きるべき人生でもある。価値観が違うから、主張する、押し付けるのはやめよう、だけだったら、コミュニケーションなんてできない。
自分は主人公のように押し付けがましく、お節介になってしまうと思う。それは主人公の母親がやっていたことと同じだと言われたとしても。