あらすじ
声が大きな者による単純化された歴史(ストーリー)、
世界を覆い尽くすその暴力性に、
高妍の作品は静かに、
しかし全力で抗っている。
――宇多丸(RHYMESTER)
「私たちにはまだ時間がある。一緒に沖縄のことを知ろうよ!」
祖母の死、そして報われぬ恋。すべてを振り切るように飛び込んだ留学生活も、終わりを迎えようとしていた。台湾に生まれ、台湾人として生きる楊洋(ヤンヤン)。残された時間の中で、彼女は沖縄の歴史と文化に心を寄せる。母国と縁深いこの地を知ること。それは、自身を見つめ直すことでもあると信じて。――“私”はもう、孤独じゃない。
「私たちも、台湾のことをもっと知りたいんだ!」
植民地化、二二八事件、ひまわり学生運動、表現の自由、沖縄戦……。葛藤の歴史を抱える台湾と沖縄を見つめ、自らを見つめ、未来を見つめる楊洋(ヤンヤン)の、そして、普通の希望が欲しかった“私たち”の、青い覚悟。台湾と日本、歴史と現在、社会と個人、私とあなた……名もなき隙間に光を見つける、私たちの物語、完結。
フリースタイル「THE BEST MANGA 2023 このマンガを読め!」第2位&宝島社「このマンガがすごい!2023」オトコ編・第9位ランクイン、『緑の歌 - 収集群風 -』で鮮烈なデビューを飾った高妍(ガオ イェン)が贈る、未来へのメッセージ。超厚【290ページ】、最終第4巻。
●高妍(ガオ イェン)好評既刊
『緑の歌 - 収集群風 -』上・下
●コミックビーム 公式X(Twitter)
@COMIC_BEAM
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Posted by ブクログ
何度見ても、一巻からずっと、なんと美しい本なのだろうか。280ページの大作、表紙カバー折り返し紙質にもこだわりあり。全て細かくガオさんのセンス、趣味、美意識で固められていて税抜価格880円て、ありえないと、この本に似つかぬことをいいたくなるくらい。
圧巻の完結。
同じ地球上で同じ空気を吸ってるわけだが、だいぶ前とはいえ同じように20代を過ごした私と、このヤンちゃんのストレートさ、緻密な勉強、研究。
全ての言葉、表情、一コマ一コマ、ぺーじごとに、今、この腐れ切った日本社会にポーン、ポーンと大きなカーブ描いて沖縄から台湾から、カラフルな七色のボールとなって投げ込まれて欲しい。
Jというクソ男は、恋愛においてクソなのだが、戦争が破壊なら破壊と相対するものが創造なんだ、とかかっこいい事をいうのだ。それも彼の意識無意識のミソジニ的振る舞いの一部なのかも。
しかしヤンちゃんは賢いので、やがてその破壊と創造を丸木夫妻の、佐喜眞美術館の沖縄戦の図に解を求めるのだ。
1人じゃないということ。
沖縄も台湾も、私たちも、その場所でそれぞれに、そしてはなれていても互いに繋がり、同じ夢、本体裏表紙に書かれている100%自由のために声をあげたり、読んだり書いたり歌ったり歩いたり走ったり目を閉じて想像したりしていくのだ。
大きな希望の勇気。
隙間。かっこいいブレイク。
隙間。立ち止まることも、入り込むこともできる。広げることも詰めることもできる。
諦めない。
ヤンさんのこれからにますます期待する。
Posted by ブクログ
「隙間」(Gao Yan・著、KADOKAWA、全4巻)は、一気に読む進めることができなかった漫画だった。
物語は、台湾人の主人公の女子学生・ヤンが、沖縄の芸術大学に短期留学にやってくるところから始まる。唯一の家族だった祖母が亡くなったこと、好意を抱いていた男性に思いを告げる前に付き合っている本命の彼女がいることを知ったこと、高校の同級生たちとの人間関係がうまくいかなかったことなどなど、ヤンが沖縄留学に来た理由が「前向き」なものでないことが明かされる。
ヤンは、自分の胸の中に沸いた気持ちを「適当に」流したり、忘れたりすることができない。不器用な性格に見える。
そんなヤンが、沖縄で出会った大学の同級生や地域の人々、周囲で起こった出来事を通じて、少しずつ変わっていく。
台湾の学校教育で教わらなかった歴史、台湾が直面している政治的課題について考え、沖縄の歴史についても知り、それらに自分がどう向き合ったらよいのか、答えを見つけていく。
交換留学期間の1年間は、ヤンにとって、人生の「隙間」。
その「隙間」を描いたのが、この作品だ。
主人公の心のひだに触れているものを感じながら読んでいると、ページをめくる手が遅くなる。
一気読みしてしまうと、味わえない趣がある気がした。