あらすじ
【罪を犯した「本当は良い子」の少年たち。奪われた命が、彼らの真実を浮かび上がらせる。】
重大な罪を犯して少年院で出会った六人。彼らは更生して社会に戻り、二度と会うことはないはずだった。だが、少年Bが密告をしたことで、娘を殺された遺族が少年Aの居場所を見つけ、殺害に至る――。人懐っこくて少年院での日々を「楽しかった」と語る元少年、幼馴染に「根は優しい」と言われる大男、高IQゆえに生きづらいと語るシステムエンジニア、猟奇殺人犯として日常をアップする動画配信者、高級車を乗り回す元オオカミ少年、少年院で一度も言葉を発しなかった青年。かつての少年六人のうち、誰が被害者で、誰が密告者なのか?
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Posted by ブクログ
最初、本当にあった事件のルポルタージュのようなものだと思った。ところが後半、ルポを手がける女性が誰なのかわかったところから、単なるルポルタージュではなくなる。重たいテーマだなぁ。
人を殺して、でも少年だからと「少年法」で守られ、数年で社会復帰。当然、殺された子の親からすれば、なぜうちの子は命を奪われ、未来も奪われたのに、犯人はのうのうと生きているのか?と憎しみが湧くものだと思う。
堂城くんのようにやってしまったことを反省し、後悔し、償いたいと考え、でも償うことの意味を考え、悩み、苦しみ…。それを読んでいると、生きてほしかった、と思ってしまうのだが、自分の娘が殺されたとなると、私も美雪のように、犯人をつきとめ、殺すかもしれない。反省し、後悔したところで、謝罪を受け入れるなんて、到底できない。
だから余計に、復讐と贖罪について考えさせられた。
少年院に入ったからといって、全員が更生するとは限らない。ミドリ班の6人は、それぞれに何らかの支援が必要な人だったのかもしれない。
特に雨宮くんは、そんなに多くの情報が書かれていたわけではないが、犯罪の内容が実際にあった少年犯罪を彷彿とさせる。猟奇殺人犯ユーチューバーと名のり、活動していたが、彼に反省や後悔や自分のやったことへの罪の意識とはどうだったのだろうか。
Posted by ブクログ
誰が密告者か?という謎を追うミステリーとしても面白かったし、復讐と贖罪というテーマで腑に落ちるラストが用意されていたのも良かった。
ライター視点から一人の母の視点となり、そうなると復讐を肯定しそうな気持ちに引っ張られた。でも堂城くんの場合は適切な発達支援に繋がっていれば防げたことがあったのでは?と思うので堂城母の一方的な被害者意識はモヤモヤしたり。
しかし最後の大阪くんの宣言がやはり真の贖罪なんだろうなと思えた。
Posted by ブクログ
初めての新川帆立さん。
不穏なタイトルと、少年院から出所した少年Aが殺された。一緒に院で過ごした少年Bが被害者遺族に密告したせいで。誰が少年Bなのか!といったあらすじに興味を惹かれて読んでみました。
インタビュー形式で少しずつ6人の関係が明らかになっていく。みんな怪しくなってくる。
終盤明かされていく真実に読み進める手が止まらなくなりました。そして、自分に当てはめて考えざるを得ない内容。
もし自分が被害者遺族になった時。復讐したいと思わず居られるのか。復讐以外の気持ちの納め方とは。当事者にならないと見つからない答え。面白かったです。
Posted by ブクログ
少年院で過ごした6人の少年達。幼少期は普通よりちょっとはみ出た子ども。家庭環境やイジメによって、成長するにつれ各々の特性が際立ち、歪んだ思考回路の末、犯罪を犯してしまう。
仮谷さんの取材していく過程で、一人ひとりの犯罪に至ってしまった経緯と浅はかな思考が、とても良く描かれていた。
「目には目を」この復讐の連鎖を嘆いて終わりかと思ったら、ラストはこの連鎖を断ち切る、真の贖罪に心打たれました。
Posted by ブクログ
少年A 少年Bを取材しているルポルタージュなのかと思ったらその真意は。
少年院の小説を二作連続で読んでしまったけれど施設内の様子が違うのは作家さんがちがうから?
Posted by ブクログ
少年院を出た六人の重罪犯。一人が被害者遺族に殺された。情報を提供したのは誰なのか。
彼らのことを一人のルポライターが調べ始める。
ルポライターが記事を書くためにインタビューをするという形式の小説。この場合、ルポライターが純粋かどうかがまず問題になるわけで、身構えて読む。
途中までは面白く読んだ。
ルポライターの正体がわかってから、中立に見えた彼女の狂気が加速していき、息苦しくなる。
目には目を、という感情はわかるが、贖罪や更生を否定すると、社会が成り立たないのではないかと思う。
これを許すと、最初が何かは置き去りにされ、やられたからやり返すの無限ループになってしまう。
日本の刑法が応報刑ではなく教育刑よりなのなら、それが生かされる社会を作ることが必要なのでは。やり直せない社会は生きづらい。被害者はやり直せないと言われてしまうと心情的に反論しづらいものはあるが。でも優先されるべきは感情論ではないと思う。
Posted by ブクログ
娘を殺された女の復讐譚ではなく、殺人を犯して少年院に服役していた6人の少年達の生活と社会復帰後の姿を取材する話。
少年達の中には更生している者もいれば、犯行時から微塵も変わらない者もいる。
目には目を。殺人には殺人を。そんなありふれた話では終わらない。復讐の連鎖を終結させる主人公の選択「反省には反省を」 明言を避けて誤魔化すのではなく、贖罪に対して2つのアンサーを並列に示しているところが凄い。
Posted by ブクログ
犯罪者に寄り添わせる構造はどうなの?と思って読み進めたらその理由がわかった。お前親かい!だとしたらそんな取材だめだろ!って投げそうになった。展開は湊かなえの告白みたいでよかったんだけど、ミスリードにいまいち乗り切れない。10歳の女の子を少年Xって書くのも違和感があるし、堂城君はたまたま女の子殺したんじゃなくて複数の子を襲ってる(本人の認識はちょっと触った、だとしても)よな、と嫌悪感が募るからあんまり庇われても……。親バレしないようになのか運動会来てないことになってるし、娘を殺した憎い相手を眠らせてから殺してるし、ところどころ引っかかった。