あらすじ
新時代の直木賞作家・小川哲の初となる対談集。
僕が考えたことはただ一つ――小説家として語ること――だけだ。
僕より喋りが上手な人なんて、この世界には数えきれないほどいる。でも、僕より小説について考えている人は、たぶんそれほど多くはない。番組には、小説家だけでなく、実にいろんな活動をしているゲストに来ていただいたが、彼らの話の中に「小説」を見つけ、その部分を広げることならできる。(中略)ただゲストが何に興味を持っていて、どういうことを考えているのか、「ゲストの人生」という小説の読みどころを探るように気をつけた。(「まえがき」より)
TOKYO FM/JFN発のラジオ対談番組『Street Fiction by SATOSHI OGAWA』がついに書籍化!
いま大注目の直木賞作家・小川哲が濃密な対話を重ねたゲストのうち、11名を厳選して収録。
小説家はもちろん、映画監督からアイドルまで、さまざまな分野の異才たちの原点と創作のアイデア、そして知られざる本心に迫ります。
書籍化を記念して、雑誌『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)2024年1月号に掲載された加藤シゲアキ氏との対談も特別収録。
【対談相手一覧(敬称略)】
万城目学(小説家)
小泉今日子(俳優)
渡辺祐真(書評家・ゲーム作家)
千早茜(小説家)
逢坂冬馬(小説家)
古川未鈴(でんぱ組.inc)(アイドル)
太田光(芸人・小説家)
九段理江(小説家)
濱口竜介(映画監督)
加納愛子(芸人・小説家)
福本伸行(マンガ家)
加藤シゲアキ(小説家)
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Posted by ブクログ
本書は、小川哲がパーソナリティを務める(務めた?)ラジオ番組でのゲストとの対話をまとめたもの。作家、映画監督など表現者との対話が主であり、なかなか錚々たる顔ぶれだ。1年半ほどの番組の中からセレクトした12人、12章が並ぶ。
ざっと見て、万城目学、逢坂冬馬、九段理江、加藤シゲアキとその著作を読んだことのある作家が目立つ。芸能人作家でもある小泉今日子に太田光も、どちらの著書にも触れたことがある。映画監督濱口竜介は、ちょうど『悪は存在しない』が上映されていたころの対談か。映画も観ているので話が分かりやすい。
そう、登場人物たちの作品にある程度触れていないと、その会話の深みが味わえない部分もあるが、本書をきっかけに、それぞれの作家の作品へ目を向ける一助にもなる。
それに作家たちは、小川哲も含めて、いろいろ古今東西の作品を読み込んでいるな、とういうこともよく分かる。小川哲は、このラジオ番組の仕事のためということもあろうかと思うが、対談者の作品は実にしっかり読みこんでいて感心させられた。
しかも、その読みが、半端なく深い!!
万城目の文章について、「」の後に“と言った”を付けないと指摘して、そこに気づいたことに万城目から驚かれるシーンは圧巻だ。
逢坂冬馬、九段理江との創作談義が深みもあって面白かったかな。九段理江は、声もいい。
そうそう、この対談は、元になったラジオ番組もネットで聞ける。本書の冒頭にQRコードがあり、番組サイトへ導いてくれる。
聴いてみると、しゃべっていることの3分の1から半分ちかくはカット、本書には収録されていない。ギュッとエッセンスを要約したものが一冊に収まっていて、読んだ方が時間は早い。
でも、読んでから音声を聴きながら、改めて読み返してもみた。
万城目学は、そのまま大阪弁全面押しで文章化してもよかったんじゃなかろうか(笑) そのほうが味わいが出る。