あらすじ
ココ・アパートメント――心地よい暮らしを作るために住人が協働するコミュニティ型マンション。住人たちが一緒にダイニングルームで食事する「コハン」があったり、互いの子供を預けあったりする一方で、個人の独立性も重視した住まい。家族と離れて暮らす男子高生、結婚を前に惑うカップル、シングル家庭の親子、秘められた過去を背負う老女……。それぞれの胸の裡を繊細に浮かびあがらせながら、多世代の心の交流を温かな筆致で描く。静かな感動を呼ぶ連作小説。
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Posted by ブクログ
読書をしていると、不思議な縁を感じるときがある。意識せず続くときは続くというか、「水車小屋のネネ」に続いてこの本を読むという縁。生きづらくなった環境を飛び出して、新しい生活の場を描く小説を立て続けに読むという縁。
というか、俺はどうにも、近隣の人々が助け合って生きていくという物語が好きなんだということなんだろう。東京バンドワゴンもおけら長屋も宇江佐真理等の市井人情モノも、俺の好きな小説たちは、自助と公助、「奪い合えば半分以下だが分け合えば倍以上」の思想に溢れたものが多い。
成功人生のレールに乗るために勉強も学生生活を上手く生き抜く高校生から、父子母子家庭、発達障害をもった兄弟を育てる一家、謎の過去を持つ婦人や大家の男性。
この小説の章それぞれに描かれた、生きること暮らすことに一生懸命な彼らを追うごとに、俺も明日からもっと暮らすことをしっかりやっていこうと思えてくるのである。
そういう小説を今後も出会い、都度自分の生活を改めていきたいのである。
Posted by ブクログ
どの話も終わるたびにほっと優しい気持ちになれる作品でした。
人に干渉されることを煩わしく思う時もあるけれど、自分が困った時に助けてくれるのは自分以外の誰か。人との関わりをほどよく保てるココ・アパートメント、私も住んでみたいなと思いました。
時が経ち、ココ・アパートメントを出て行く人がいてもまた遊びに来れる関係性も素敵だなとも思いました。子供でも大人でも、住んでいる場所以外に行く場所があるのは、救いです。
ちょっと家に帰りたくないなって思う時に、安心して行ける場所があるのは素晴らしいことだと思います。
章ごとに話の主役は変わるけれど、他の話でそれぞれの進捗もしれるのが面白かったです。
どれも未来が明るく感じられる終わり方で、読んでいて幸せな気持ちになりました。
欲を言えば一章の賢斗くんのその後がもう少し見たかったです!