あらすじ
100億円という前代未聞の不動産詐欺を成し遂げた彼らが地面師になるまでを描く、それぞれの前日譚――。司法書士歴20年の後藤は、一人娘の塾代に困るほど、薄給に喘いでいた。そんな中、山中と名乗る実業家から300万円で不正への加担を依頼される。喉から手が出るほど欲しい金額だが、事務所の所長を裏切れないと拒否。だが、事態は一変し!?(「ランチビール」)など、スピンオフ短編、全7編収録。
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Posted by ブクログ
悪は日常に潜んでいるし、普通の人間が悪人に変わる境界というのはこんなにも曖昧ですぐ側にあるのかと思わせられる。あとがきにもあるように、著者がドラマを見てから、演者に寄せながら書いているというのもあるからか、人物描写力も相まって、何か決断が必要な時、あいつなら確かにこうするだろうなという納得感があった。それはそれでドラマの続きを見ているようで面白いのだが、ハリソンだけは想像を超えてくる怖さ。その異常さが際立つことで、元は普通の人間でいつの間にか悪人になっている「彼ら」の人生に説得感が出ていると感じた。
Posted by ブクログ
後藤の楽観的で周囲の見えていない善意による見当違いの行動が、昔ならただただ共感のできない自己中なおじさんと捉えていただろうけど、自分に都合の良い解釈をして見えないフリから本当に見えなくなってきたのだろうと、明日は我が身と感じるようになった。
"真実などどうでもよかった。心優しい穂香を誰にも壊されたくなかった。"
いじめは被害者にもいじめられる要因がある、という意見には正直私は肯定的で、ただしだからいじめていいとは甚だ思っていない。
それと同様に、いじめる側にも何かそうなってしまった要因がある。どんな時もその背景には「想像の及ばない何かがある可能性」を意識しているのだけどこの後藤が娘に対して抱いた感情がまさにそれだった。生まれた時から悪の人間なんていないのだから、悪人はどこかで壊されてしまった人間なのだと。
Posted by ブクログ
ドラマを受けて、それぞれの前日譚を書いたという7篇の短編集。短いのもあって読みやすくて面白かった。特に後藤と麗子のは切なかった。家族のためにと真面目に司法書士してたのに全部が裏目に出るというか、逆効果になっちゃう後藤。確かに私もこの人が身近にいたら嫌っちゃうだろうなぁ。あまりにもおじさんな感じがして。でも後藤にも若い時代があったのだ。曲がりなりにも良いとこがあったから妻は結婚したんだろう。麗子が元公務員だったとはびっくり。悪い母親だわ。気の毒に。最後の作者とピエール瀧との対談も面白かった。やっぱドラマも見てみたいな。全7話だったとは短いよね。
Posted by ブクログ
街の光 辰(刑事)
辰
藤森
代々木署。
ハリソン山中
ランチビール 後藤(法律屋)
後藤
アミ
事務員。
所長
洋文
都内の大手事務所で華々しく司法書士のキャリアをスタートさせた所長の息子。
ラン
穂香
後藤の一人娘。
景子
後藤の妻。
ハリソン山中
剃髪 川井菜摘(尼僧)
川井菜摘の母
子宮頸癌のステージ2で入院中。安土桃山時代からつづく寺を尼僧として引き継ぎ、今日まで守ってきた。
川井菜摘
母の体調を考慮して、寺の宗教法人の代表役員に選任された。
カズキ
川井和希。菜摘の年少の夫。女性専用の更生保護施設の運営をまかされている。
マサル
母方の従伯父。企業勤めをしながら寺の責任役員をつとめ、新人住職をささえてくれている。
紗都美
ドイツに滞在中の一人娘であり、寺の後継者。
麻子
大学時代に青春のすべてをそそぎこんだ演劇サークルの仲間。
和田勉
年始に亡くなった演出家。
本山
不動産屋。
森田多恵
更生保護施設に入所していた。
ユースフル・デイズ 長井(ニンベン師)
長井広司
紗良
大樹
半期だけ基礎情報と体育の授業をともにした一年時の同じクラス仲間。大樹を代表取締役社長に、坂崎、ヨウタ、カズマンの四人で起業した。
カズマン
半期だけ基礎情報と体育の授業をともにした一年時の同じクラス仲間。
ヨウタ
坂崎
モカ
カズマンと付き合ってる。
見村
ビリー。見村研究会の先生。
ウチダ
戦場 青柳(石洋ハウス)
青柳
ママ
松平
少々強引だが有力な地上げ屋。
モエ
普段はフリーランスのデザイナーだという。ママの店に三ヶ月前に入店したばかり。
松尾
課長補佐
高梨
指定暴力団がメインの金主と噂される地上げ屋。
ルイビトン 竹下(図面師)
竹下
蘭子
錦糸町の店で引っかけた四十すぎの女。
マル
竹下の手下。
天賦の仮面 麗子(手配師)
岩瀬麗子
デートクラブ勤務。銀座店のマネージャー。
上智大学に通う現役の女子大生。最上位ランク。
入江真紀
三十三歳。公務員。
闇金の男
課長代理
山内
パスポート申請の受付。臨時職員。
ウチダ
純也
商社に勤務する。麗子の五歳年長。
ミズキ
Posted by ブクログ
『地面師たち』に登場する7人それぞれにスポットを当てた、小説の地面師詐欺が行われる前を描いた短編集。
『地面師たち』では、拓海と辰(青柳もだったか⋯)の視点で描かれていたと思うので、本編では謎に包まれていた、ほかの人物たちの性格というか心理も伺いしれました。
ずっと被害者な菜摘、輝かしい未来が待っているはずだった長井、親に植え付けられたコンプレックスと不倫の裏切りに遭った麗子は気の毒だなぁと思いました。
その反面、竹下はずっとこんな感じなんだなぁと思い、後藤も気の毒ではあるのですが、そもそもの性格が好きになれずかも⋯と思いました。
ハリソン山中の不気味さは健在で、辰の娘のことを知っている情報網や、長井に接触している行動範囲の広さ、麗子の整形を見抜く眼力(?)など、さまざまな能力が合わさってのカリスマ地面師なんだな⋯と感じました
Posted by ブクログ
「地面師たち」の前日譚。
どう考えても別世界に思える地面師グループの面々が、どういった経緯でハリソン山中の元に集ったのか…という過去が書かれており、答え合わせをする感覚。
さくさく読めてあっという間に一日で読み切ってしまった。
本編ほどのハラハラ感や面白さはないが、前作を読んで面白かった人なら楽しめる内容だと思う。
真っ当に生きていた彼らが、なぜ詐欺師へと変貌してしまったのか。
辛いことがあったり、道を見失ったりした絶妙なタイミングで、ハリソン山中が現れるという…。
ただ、ハリソン山中の過去についてだけは触れられておらず、彼自身はやはり謎のままだった。
最後、ドラマ版に出演したピエール瀧さんとの対談がある。
ドラマは見ていないのだが、このアノニマスは映像とのリンクを感じながら書かれたものだというのも納得。