あらすじ
生物部に入った出田たち四人が発見した、50年前の怪しげな報告書。かつての部員たちが「天狗の怪異」とされる現象を科学的に調査したというレポートからは、なぜか肝心の結論部分が抜け落ちていた。まるで後輩たちに向けて、続きを調べろと訴えるかのように。
失われた真相を確かめるべく、連休を利用して実地調査を敢行する四人。森を探索し、夜の神社を歩き回り、宝物殿に伝わるミイラさえも観察しながら、伝説を科学的に検討する二泊三日の合宿が始まった。
「こんな調査がしてみたかったんだ。同い年の、同じ趣味の人たちと」
それは紛れもなく理系の青春だった。しかし怪異の真実を追う中で見えてきたのは、彼らの日常を壊しかねない不穏な秘密で――?
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『豚のレバーは加熱しろ』原作者様の、豚レバシリーズとはだいぶ毛色の違う理系ミステリ青春物!
1巻の時から専門用語が散りばめられる作風で、そこがハマる人・そうじゃない人に分かれるかも。しかし専門用語をまぶしただけには終わらないストーリーのギミックが良く、青春ストーリーとの絡みも絶妙!1巻以上にスケールアップした内容の今巻、大いに楽しませてもらいました。
理系ミステリとはいえ、「数学」ではなく「理学」であるところが本シリーズの持ち味かな。「理学」が扱える領域が意外と広く、そこがこのシリーズの懐の広さにもつながっている印象。3巻も楽しみにしております
Posted by ブクログ
綱長井高校に潜む魔物の存在にすっかり怖気を覚えた第1巻から続く第2巻の舞台は学校を飛び出し合宿となるのだから、魔物の存在に脅かされる事など無いだろうと軽い気持ちで読み進めていたから、話が進み別の魔物が現れる展開には本当に驚かされた……
しかも今度の魔物は本郷を遥かに超越する魔物なものだから、読んでいる時は「これって高校生が対峙できる相手じゃなくない…?」と肝が冷える思いでしたよ…
理系に強い高校の生物部で扱うには不似合いな『天狗の正体について』なんて題名が躍る研究冊子。どう考えても真面目に取り合うなんて馬鹿げているのだけど、これをGWの研究テーマとして科学的に取り合おうとする理桜達は良い意味で青春っぽさに溢れているね
深く考えずに見遣れば怪しさ満点のオカルト。けれど、科学的に面と向かえば地に足ついた真実が見えてくるかもしれない
彼らの調査研究は一見するとGWで男女合同の合宿として浮かれた遊びと思えてしまう部分もありながら、正体の判らない要素を一つずつ解き明かして検証から実証へと移行するとても科学的なアプローチとも感じられたよ
そうして始まった合宿は本当に真っ当な調査をしているかのよう。というか調査していたね、普通に
全く理系では無い私からしたら、天狗とか鵺とかを現代でどうやって探せば良いのだと迷って終わりそうなものだけど、理桜達それぞれの調整力が秀でている為か天狗探しや鵺探しが無謀なものとならずに、真相究明に必要な物証を一つずつ集めて伝説の正体へと迫っていく様子はワクワクさせられるね
また、その渦中では樟と理桜が初々しい交流を続ける様子もとても良い。あの二人は既に付き合っていても可怪しくないような雰囲気を発しているのだけど、このまま3年時まで交際しないのかと思うとヤキモキさせられるね
まあ、そのように感じながらのんびりと読み進めていただけに「蛇ヶ沢」という消えた地名の謎から合宿が全く別の顔を見せ始める流れには心底驚かされたよ
物語がそれまでと異なる展開へと進み始めるキーパーソンとなった日知は予想外の深みを感じられるキャラクターとなったかな
そもそも生物部の1年は既に1巻で繰り広げられた物語により充分な絆を獲得している。そのような集団に生物部でもない男子生徒を混じらせて面白くなるのか?果たしてそんな男子に好感を持てるのか?と疑問だったのだけど、そんな心配が杞憂と理解させられるほど、最終的にはとても魅力的だと感じられるキャラクターとなったね
日知は登場当初こそ、変人っぽいしめっちゃアレなラノベ読んでいるし、「これはあまりお近づきに成りたくないタイプかな?」と思わせた。しかし、『天狗倒しの謎』は絶対に近付いてはならない禁足地だと理解させられるに従い、日知ほど頼りになる人間は他にいないと判っていくね
そして、日知の魅力だけが突出しない作りが維持されているのは、この件は日知1人だけでは対処できなかっただろう点も見えてくるから
秘密の協力関係が始まった序盤にて日知が樟に告げる「僕らは、似ているはずだから」という言葉、当初は理解できなかったそれは日知の正義を目指して止まれない姿勢が、真実を目指して止まれない樟の姿勢にリンクするものだと感じられてくる
文と理、共通項の少ない二人は魔物をも超越する巨悪が隠す真相へと協力して近付いていくわけだ
そうして開かれた「加点」へ至る真実の扉には興奮させられたけど、同時にここまで隠さなければならない真実には本当に近付いて良いのか?と改めて考えさせられたよ。相手は高校生相手でも容赦なく脅してくるような相手なのだから
だからこそ、真実を希求して止まない樟と日知には太陽のような輝きを見てしまったな。
真実が明かされた際には先輩達がどのような想いで二人の真相究明に対応しているかも明かされる。御影兄達は二人の味方をしつつも、体制を守る者として闇を真実で照らすのではなく出来る限り痛み分けとなる折衷的な対応策を選んでしまっていると判る
ある程度、世に揉まれてしまうと御影兄のような考え方に落ち着く方が正しいと、それが本当の意味の正しさではないと判っているが多くの人が受け入れ可能な解決策とも呼べない何かを正しいと思ってしまうようになる
だからこそ、「許されていいはずがない!」と吠える日知の姿に眩しさを覚えつつも同時に「若いな…」なんて思ってしまう
でも、本当の本当は日知の方が正しいと呼ばれるべきで
けれど、彼の求める正義は執行されない。あれほど眩しかった日知も樟も暗闇に落とされてしまった。思い返すと1巻の終盤も苦い物を飲み込むような展開だったけど、今回はそれ以上だったな…
そうした憂いを踏まえている為か、エピローグでの新たな真相究明や正義の執行も綺麗サッパリと喜べるものとはなっていないね
樟達を警戒していた者を捕らえて成敗する事は出来た。けれど、あの人物とて巨悪を前に敗北せざるを得なかった人間と思えば、これが正しいなんて到底思えないわけで
悪事を働いた者は去った。ただ、これを正義と飲み下すにはあまりに闇が深すぎる
この巻を通して得られた収穫が有るとするならば、樟と日知は似ていながら役割の違いが明確化された点か
日知は樟が驚く程に決断力と行動力が有る。けれど自覚があるように狡猾さはない。樟は海に行く例え話に表れるように決断力や行動力は欠けた部分があるが実行力や狡猾さがある
これは通知書を副知事に届けるまでのシーンにも垣間見える要素だったが、エピローグで真犯人を追い詰める工程ではよりはっきりしているね
今回は巨悪に通じた小悪を倒す程度に留まった。しかし、役割が違いながらも似た究明を志す樟と日知の繋がりは今後訪れるかもしれないまた別の魔物との戦いにおいて、頼り甲斐の有る繋がりになりそうだと思えたよ
Posted by ブクログ
理系高校生のライトミステリ第二弾。
今回はGWのフィールドワーク話なのだけど、なんというか思っていたのと(期待していたのと?)はちょっと違った。
確かに科学的推論を実地で確かめて行くフィールドワーク部分は楽しかったのだけどそれが大きな社会問題と隠蔽された巨悪に行き当たってむしろその話がメインになって行く流れは、ああそういう方向に行くんだと思った。
残念なのはこのメインの話に岩間さんが関係して来ない事。
理由は分かるのだけどでもデルタとガンマの理学部ノートであるからには岩間さんも何らかの形で関わってほしかった気がする。
そして生物部的には甘南備さんの話だけどむしろ新登場の日知くんがメインのお話だった。
それにしてもなかなか強烈な人物だよね。まさに主役。良くも悪くもこれからの物語に影響を与えそうな人物だ。
今回のお話でこのシリーズがどこへ向かって行くのかちょっと分からなくなった。
単純な理系ミステリでは終わらなそうではある。
それはそれとして、もっと岩間さんの活躍が見たいぞ!
Posted by ブクログ
謎解きとして少々甘いところはありつつも、ミステリとしてここまでやってくれると爽快さすらあった。結末で事件の真の姿が見えてくるところで、なるほどねぇ、と膝を叩いていた。
ロジックを作っていく様はもちろんロジカルなのだが、その合間にそっと挟まれる青春模様がいい。甘さとほんの少しの「?」。青春の頃にあった「あれって一体……?」をちょっとだけ載せてくるのが巧い。背景をしっかり描きつつ余白があるから色々な想像が入りやすいのだ。次巻が今から楽しみである。