【感想・ネタバレ】母なるもののレビュー

あらすじ

複雑に屈折した生き方を強いられた隠れ切支丹の姿に、自己の内なる投影を見た作者の魂の表白である表題作など全8編。――裏切り者や背教者、弱者や罪人にも救いはあるか? というテーマを追求する作者が、裁き罰する父なる神に対して、優しく許す“母なるもの”を宗教の中に求める日本人の精神の志向を、自身の母性への憧憬、信仰の軌跡と重ねあわせて、見事に結晶させた作品集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

キリスト教徒だった母親の影響を受けたながら反発した少年時代、フランス留学、背教者と隠れキリシタン等々を描いた自伝的短編小説。特に印象に残ったのは開国後に日本に来た神父による「信徒再発見」後に多くの隠れキリシタンがカトリックに改宗(?)する中、昭和になっても隠れキリシタンの教えを守る人々が残っていたという事(周りの地区と交流を避け、就職・結婚で差別もあったらしい)。もう一つは鎖国後に日本へ潜入した宣教師シドッティーの話。20年以上前に屋久島に行ったときに「シドッティー(シドッチ)上陸地」という場所があり、当時は「シドッティーwho?」だったのですが、初めてシドッティーの行く末を知ることがで来ました。これは何とも言えない哀れな話。気になる方は読んでみてください。

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2013年07月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

キリスト教と日本人、また遠藤周作がもつ信仰について。短編集ひとつひとつが心を打つ名作。かくれ切支丹から読み取られる、マリア信仰の強さ、母なるものへの思慕。日本の宗教的本質は、父なる神の教えと相容れない。遠藤の信仰は、実母への愛着を原点としており、かくれ切支丹への気恥ずかしいながらの共感を示す。明治以後に伝来したキリスト教への違和感、信じられることへの羨望。「最もアーメンに縁のないような人間に、なぜアーメンはとり憑いたのだろう」

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2020年04月09日

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