あらすじ
日本最古の歴史書『古事記』で命じられた「校正」という職業。校正者は、日々、新しいことばと出合い、規範となる日本語を守っている「ことばの番人」だ。ユーモアを忘れない著者が、校正者たちの仕事、経験、思考、エピソードなどを紹介。「正誤ではなく違和」「著者を威嚇?」「深すぎる言海」「文字の下僕」「原点はファミコン」「すべて誤字?」「漢字の罠」「校正の神様」「誤訳で生まれる不平等」「責任の隠蔽」「AIはバカともいえる」「人体も校正」……あまたの文献、辞書をひもとき、日本語の校正とは何かを探る。校正者の精緻な仕事に迫るノンフィクション。
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Posted by ブクログ
これは面白かった!
「校正」という仕事をめぐるノンフィクション、と書かれていた通りに
校正の仕事の内容・知識と、その仕事をされている方の想いについて知ることができた。
ただ、これからもっとAIが進歩してきたときに、こういう仕事はどうなるんだろう、と思ったり。
以下メモ(豆知識も)
校正とは
・校正とは「照合」比べる・正す・元の原稿と照らし合わせる
・校正とは文を読むことではなく字を見つめる。
・校正者は「正確」ではなく「不正確」の許容範囲を定めている。
・本当にそれを指摘すべきか。赤字を出すセンスより出さないセンス。全体を考えて最終的に重大な間違いが出ないように努力する
・日本最古の書と言われる「古事記」もその前にあった「旧辞」を校正したもの。
・何をもって、「正しい」とするのか。「正しい」とは、ありのままなり。正義というニュアンスではなく直・唯のような意
・かな文字は自然に発生し、自然に淘汰され、自然に統一されていった。
・文字の形の相似が校正眼をくらますこと、混読。「ヒ」「モ」とか。
面積の伸縮と線の集合離散が原因。そもそも平仮名やカタカナが漢字を崩してできた成り立ちを考えると伸縮性を持つことも納得・
・「読む」とは「寿ぐ(ことほぐ)」と同義。言葉で祝う。だから和歌をよむ、という。
・漢字があるから校正が必要になる。漢字かなまじり、混じらせ方に
公式な正解がない。
・諸行無常・・本当に「諸行」が「無常」なら、諸行無常自体は「恒常」では?
・常用漢字・・戦後GHQは漢字を学習上の障害とした。理由は、漢字を覚えることが負担で他の必要な学習が進まない、国家の孤立性と排他的性質を支えるから。そこに、GHQの威光を利用した文部省と新聞社の動きで、漢字は廃止に向けて整理される方向になった。新聞社らは、通信と印刷技術の問題で漢字を減らし、なくしたかった。が、ワープロの普及によりその必要もなくなり漢字は今に生き延びた。
・校正にAIも利用するようになったが、AIは「慣用」をチェックするが意味を理解していない。例:今週はずっと晴れるが、明日は晴れでしょうなど。
Posted by ブクログ
「校正」についてのノンフィクション。著者最後の本。「校正」」という主題のためか、これまでの著作よりも「根拠」へのこだわりが強い感じがする。参考文献も豊富。
【目次】
第一章 はじめに校正ありき
第二章 ただしいことば
第三章 線と面積
第四章 字を見つめる
第五章 呪文の洗礼
第六章 忘却の彼方へ
第七章 間違える宿命
第八章 悪魔の戯れ
第九章 日本国誤植憲法
第十章 校正される私たち
Posted by ブクログ
漢字の成り立ちや憲法の誤植、AIと文章の関係性にまで迫った名著で、校正者のみならず文字に関わる者の必読書。
そもそも校正とは、文字とは、正しさとはなんなのかどうにもわからなくなってくる。私たちは文字に使われているにすぎず、本当の「校正技術」はDNAのみ持つのではないかー。筆者は後書きで、最終章は飛躍と捉える人がいるのではないかとしていたが、あの章はないと救いがなかった。新聞の書評欄で何度も取り上げられていた印象があり、いつまでも語り継ぎたい一冊。
Posted by ブクログ
つい先ごろ亡くなった高橋秀実の最新刊。「弱くても勝てます」以来、だいぶ読んできた。そして最後に本のテーマが、昨年1年勉強した校正とは…そして本で取材されている辞書を7000冊持っているという境田さん、いや境田先生と本で再会できるとは…いろいろ感慨深いものがありました。
Posted by ブクログ
#ヨンデルホン
#ことばの番人 / #高橋秀実(#集英社インターナショナル)
#ドクリョウ #ヨミオワリ
いわゆる、イメージどおりの「校正」に始まり、果ては漢字の成り立ち、分子にまで。膨大な参考文献・取材に裏打ちされた展開は圧倒的見事。考えるに、文字を作ったのが、誤りの始まりかもしれない…。
Posted by ブクログ
ことばの番人とは、校正者のことです。
校正とは、文章を読んで、誤字や脱字などを見つけて修正することです。
ことばに対する膨大な知識とこだわりを持つ、超ベテランの校正者に著者が話を聞きます。
へぇ〜と感心し、そこまでやるのか〜とため息が出るエピソードがいろいろ出てきます。
出版を陰で支えて、ことばを守る校正者。
初めて知ること満載の本です。
本のレビューを書いて、ことばで感想を発信しているわたしたちも読んでおくと良いと思います。ことばについての考えが変わるかもしれません。
超オススメの一冊です!
著者の語り口が滑らかで、ときおりクスっと笑えるユーモアもあります。読む前は堅苦しい本かと思っていましたが、そうでもありませんので、ご安心ください。
Posted by ブクログ
実におもしろかった。私はもうかれこれ四半世紀、ニッチな専門分野の編集&校正をしているが、登場される校正者の考えに首が折れそうなほどうなずいたり、目からポロポロと鱗がこぼれ落ちたりした。
冒頭「世の中には優れた書き手などおらず、優れた校正者がいるだけではないか」という著者の嘆息から始まる本書は、読者を校正の奥深い世界へと誘ってくれる。『言海』を270冊も自宅に所蔵する方、溢れる思いをとめられず自ら漢字辞書の編集までしてしまう方…先輩方の凄まじさに私などは只々畏れ慄き、ひれ伏すばかりである。
AIと校正という章はタイムリーで興味深かった。最近、本当に原稿をAIで書いてくる方が増えたのだ。急に文体が変わったり、出典がまるで存在しないものだったりと校正の仕事がシンドイ…。著者がAIに書かせる、ないし校正させた原稿を、私が校正することに疑問しかなかったのだが、本書の著者・髙橋さんは言う。「校正はさらなる校正を生む。…校正は永遠に終わらないのだ」と。私は、自分が校正の終着点だと思っていたが、そうではないのだ。
本を愛する方へ、その裏方の知られざる世界をのぞいてみてほしい。
Posted by ブクログ
久しぶりの高橋秀実
やはり視点が良くて面白い
ただ、なんだか一緒に考えなきゃいけないような気がして意外と頭が疲れる
ダラダラと進んでいるようで、情報量も結構あって行間も読まなきゃ何か逃してるような気がしてしまう
そうも思いつつ軽く読めてしまうのが魅力(いつか読み直すかなあ)
Posted by ブクログ
本書は2021年夏号から2024年冬号『kotoba』に連載された「ことばの番人」を加筆・修正したもの。第一章「はじめに校正ありき」から始まって第十章「校正される私たち」まで、驚きとなるほどの連続で目から鱗がポロポロ落ちる。私の目はどれだけ曇り耳は塞がったままだったのか‥お恥ずかしいかぎりだけれど、「DNA」レベルでも、そんなことなら、致し方なし。「ことば」とはなんと大雑把であることか!けれどそこがおもしろい!まさに「校正こそ命」。
Posted by ブクログ
一応、言葉を追うことに愉しみを覚え、言葉を綴り、校正する仕事もしているので、たまたま手に取った。文字に溺れる人、文字に正しい人、文字と遊ぶ人、文字と漂う人、文字と正しくある人。文字といろいろな付き合い方をしている人たちが登場し、それぞれ驚かされた。本文の中で言うと、私は確かに読書が好きというより文字を追いかけるのが好きな方なのかもしれない。
そんな矢先に「はてこの著者は何者か」と思ったら、昨年亡くなっていたことを知った。彼はまた、天国までどんな文字と昇ったのであろう。合掌。
Posted by ブクログ
前半はタメになる。例えば、改善策は次の3点。
ー句読点を入れる
ー言葉の順番を変える
ー修飾語と被修飾語を近くにする
さらにチェックすべきは
数字と固有名詞
まさにそうだろう。
自分でも朧げに感じていたことを断言された。素晴らしい。
ただ後半は今ひとつ。日本国憲法の話は面白い。
Posted by ブクログ
校正にはすごく興味がありましたが、この本に出てくる校正者の方の職人ぶりに圧倒されました。ことばについても知らないことだらけで、とても興味深かったです。
Posted by ブクログ
我々が手にしている本には欠かせない校正作業。形に残らない作業に携わる人々を描いたノンフィクション。日本国憲法とDNAの複製に触れる後半が面白い。
ネット記事が増え読書量が減る今日だが、校正のないネット記事は信用できない。
大手の出版社の方が信頼できるのも校正があるからこそだろう。
Posted by ブクログ
書名「ことばの番人」とは凄いタイトルだ。番人、ことばの見張り役、ことばを守る役割の人。という意味に解釈できるが、要するに、校正者だ。
第1章 はじめに校正ありき
で、「文章は書くというより読まれるもの。読み手頼みの他力本願なのだ。世の中には優れた書き手などおらず、優れた校正者がいるだけではないかとさえ私は思うのである」とある。なかなか意味の深い言葉だ。
校正に纏わるいろいろ面白いトピックスが多く紹介されている。中でも伝説的な校正者、その方の蔵書は辞書だけで7000点を超える。7000点だ。ポピュラーな辞書『広辞苑』だけでも100点以上所蔵しているという。校正に辞書は欠かせないツールであるが、ここまでくると、ことばの海にどっぷと浸かっているようだ。
その昔、ヨーロッパでは聖書に誤植が見つかると、校正者は死刑に処されたという。
一方で、法律の条文などの誤りが、毎日のように『官報』の巻末に正誤表として掲載されているようだ。
文字を書くとき人は間違える。これはいつの時代でも必然のようだ。
自分の知らない校正の世界を垣間見ることができた。
自分の書いた文章。この文章も含めてよく読み返さなければ。
Posted by ブクログ
「校正」に関するエッセイ集。最初は校正者への取材から始まり、校正という仕事、言葉の意味について書いているのだが、憲法にも誤植はある、という話からどんどん話は広がって薬のラベル、遺伝子の話にまで行き着く(遺伝子にも校正者がいるのだ!)。読みやすいんだけど読みごたえはある、という感じの文章で、言葉についての面白い話が次々に出てくるので読んでいて飽きない。
憲法にも誤植があるという話は驚いたが、ただ「ある」という豆知識的な話に終わらず、英語の草案との比較や憲法制定のために行われた議論にまで踏み込んで憲法の文章の意図に迫っていくのが面白かった。
その他の章も辞書や古典、哲学者の言葉を引用しながらも言葉の意味を柔らかく解きほぐしていくような内容で、「よむ」は数え上げていくこと、寿ぐ(言葉通りに物事を動かす呪術)こと、というのがなんだかいいなと思った。著者の他の本も読んでみたい。
Posted by ブクログ
校正に関する様々なテーマに関する本。校正者にたいするインタビューや実際の誤字、そこから深堀りして日本語や漢字の成り立ちについて、などの多様な話題。日本語についての興味が深まり、楽しく読める。
Posted by ブクログ
自分が普段何気なく使用している言葉も毎回辞書を引いているわけではないから、意味がゆれていることってあるし、知っているってことが知っていると思っているだけかもしれないということを肝に銘じておかなければいけないなと思わされた。
ただ、言葉って生き物で、誤用も長く使われ続けると普及しすぎて正しい使い方になっていったりするし、本当に言葉って難しいなと思う。
Posted by ブクログ
本の雑誌から。本書は純粋に読みたくて手に取ったものだけど、前後して訃報も聞こえてきてしまい、追悼の意も込める感じになってしまった。ご冥福をお祈りいたします。本書は校閲に関するエッセイなんだけど、先だって読んだ漫画の記憶もあり、かなり興味深く読めた。自分には出来ないだろうだけど、深い世界ですね。
Posted by ブクログ
“「ゲラが間違っているのではなく、自分が知らないだけかもしれない。まず自分を疑う。そのために辞書を引くんです」”(p.101)
“一字一句を軽んじてはいけない。一字一句をおろそかにすると、二字二句をおろそかにすることになる。”(p.57)
Posted by ブクログ
校正をめぐるノンフィクション
校正の仕事や日本語や漢字や憲法やら、様々な校正にまつわる話が書かれていて非常に興味深い。
読みやすい文章で気軽に読め、日本語を使う者として知っておいた方が良いが、考え出したらキリがないほどの深い内容。
Posted by ブクログ
日本語の校正者について書き始められて、日本語の漢字についても書かれている。一つ一つのエピソードは興味深い。尊敬の念がわく。面白くて、すごいなぁと思いつつも、自分は日本語について真剣に考えられないタイプの人間であると感じた。読んでいるうちに細かすぎて眠くなってしまう。何とか最後まで目を通した。そして二箇所の誤植を見つけ、なぜ誤植があるのか、私たちが気がつくかを作者が面白がっているのだろうかと感じた。
Posted by ブクログ
普段目にすることのない校正という仕事、
活字を見ればゲラ刷りに見えてしまう校正者たちの
生態?を描いたノンフィクション。
を期待して読んだのですが、それは半分くらいで、
校正や漢字、日本語にまつわるエッセイという感じでした。
それはそれで面白いんだけど、せっかくなら
もっと校正者の生身の様子や仕事の風景を読ませて欲しいな、と。
Posted by ブクログ
校正から、漢字とは、文章とは、言葉とは、日本語とは。
色々巡るエッセイ。
文章を追えば文字が見えず、文字を追うためには文章を読んではならない。
そんな感じか。
書き文字とは何か。
色々と考えさせる。特に、日本語の文章にとって、公正とは欠くことの出来ない重要なパーツになっている。
わかる。
最近の書籍は、ほんまに校正入ってんのかと思うようなのが多い気がしている。
本書に何人か出てくる校正者たちの、プロフェッショナルなこととは大違いだ。
校正とは言霊であるという。
なんかわかったようなわからんような。
全体に、あまりユーモアは感じないエッセイだった。
ただ、よくわからないままに日本国憲法に手を出したのは、ちょっとどうかと思った。
Posted by ブクログ
日経ビジネスの書評で紹介されていて読んでみた作品。校正に関する話で興味深かったが、若干、文章に癖があるところが微妙な作品。ただ校正者という人たちの役割や考え方などを知ることができたのは、よかった。