あらすじ
ナチス親衛隊のメンバーの救済を目的とした秘密組織“オデッサ”。その存在は公然の秘密とされている。ルポライターのペーターは、老ユダヤ人が遺した一冊の日記からその存在を知る。それによると、“リガの殺人鬼”と呼ばれた元高級将校は、今も悠々と生きている。日記のある箇所に注意を惹かれた彼は、憑かれたようにその男の追跡を始めた。だが、それはタブーへの挑戦だった――。国際諜報小説の名手が綿密な取材をもとに描いた傑作長編。
※この電子書籍は1980年に刊行された文庫に、新たに校正を加えた形で電子版のみ発売。
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Posted by ブクログ
”オデッサ”とは、ナチス親衛隊(SS)のメンバーの救済を目的とする秘密組織のことである。
ルポライター、ペーター・ミラーをオデッサと結びつけたのは、老ユダヤ人が遺した一冊の日記だった。それによればリガの殺人鬼と異名をとったナチ収容所長、ロシュマンは、今もドイツに生きているという。
日記のある箇所がミラーの注意を惹いた。彼は憑かれたようにロシュマンの追跡を始めた。だが、それはタブーへの挑戦であり、組織の手はしだいにミラーの身辺に及び始めた…。
奥が深くて、必ずしもラストに読者をスッキリさせる類の本ではないのですが、ペーター・ミラーを通して、SSのメンバーを追い詰めていくストーリーです。
ヒトラー率いるナチス親衛隊がどれだけ残酷非道なことをしたのか、漠然と理解していましたが、戦後の混乱にまぎれて自らの保身のために国防軍をも時間稼ぎの駒として使ったことや、"オデッサ"を通じて行った行為は絶対に許せません。
ペーターは父親の復讐のためにロシュマンを追い続け、陰でモサドからの支援を受けていましたが、そこまで危険を冒してまでも復讐をやり遂げたかったのでしょうね。
ペーターを傀儡あるいは媒介者として、"オデッサ壊滅"への過程には十分すぎるほどの臨場感があり、冒頭で筆者が元SS隊員からの情報協力があったと述べていました。
こういう潜在的な危険というのは、今現在も世界のどこかの地下でうごめいているはずです。
戦争はいつになっても終わることがない…それが私の実感です。
Posted by ブクログ
ケネディ暗殺のニュースから始まって、ユダヤ系ドイツ人の老人の自殺、その日記のあたりでかなり凹んでしばらく放置してたけど、面白い。60年代が舞台で70年代初めに書かれた小説らしいけど、テンポがよくてさすが名作と言われる社会派ミステリー。実話や実際の人物も多くて、どこからどこまでが本当なのか、よくわからないが、ドイツの抱えていた戦後問題がかなりよくわかる。社会問題、差別問題、戦争、狂気、世界的に見て結局は同じような問題がまた起こるし、起こっているし、力のある者が生き永らえ、民がそのツケを払わされる、と言う矛盾に気付く者は、ことが終わってもどこの国でも少ないのかなあ、と感じた。
Posted by ブクログ
数あるフォーサイスの作品の中で、個人的にはトップクラスに好きなもののひとつである。ドキュメンタリー的な迫力では「ジャッカルの日」に及ばず、スケールの大きさでは「悪魔の選択」 にはかなわない。現代的なトピックスとしてなら「神の拳」等が上だろうし、作品としての余韻ならむしろ短編を勧めたい。
もちろん、ナチスドイツの戦争犯罪の話は、今読んでも褪せることのない迫力で迫ってくる。冒頭の日記は胸がしめつけられるようだし、途中明らかになってくるさまざまな「事実」には事実ならではの説得力があり、怒りで胸が苦しくなる。ラストに近い主人公と敵役の言葉による対決シーンは、単なる小説の世界を超えた力を持つ名シーンだと思う。
が、むしろこの小説の味は、ほとほと呆れるほどの主人公のいい加減さ、調子の良さであり、主として偶然のもたらすドタバタの追跡劇である。シリアスな背景を取り除いてみてみれば、ほとんどコメディといっていいかのようなすれ違いの追いかけっこだと思うのだけど、どうだろう。
フォーサイスの作品、特に長編の主人公はプロ、それもプロ中のプロといいたいくらい、さまざまな意味で鍛え抜かれた連中である。そういうプロの行動のあざやかさが、彼の作品の魅力であることは間違いない。
しかし、本作においては違う。主人公はどうしようもないくらいアマチュアである。アマチュアの、身勝手で怖いもの知らずのめちゃくちゃにハラハラしながらつきあいつつ、その先が読めない動きに引っ掻き回されるプロたちの姿をちょっと小気味良く眺めることに、この作品の最大の楽しさがあるのだとおいては思うのだけれど、どうだろうか。
Posted by ブクログ
高校の時に読んだ本 フレドリック・フォーサイスの小説の中では一番好きです。ナチスの親衛隊を追い詰めていくのはスリルがあって最高です。 自分的には主人公の彼女がストリッパーってのがちょっと。。。。でした。
Posted by ブクログ
最後の最後でストーリーをど〜〜んと上げてしまうような展開。
何冊か、彼の本を読んだけど最初の書き出しの頃から、わざと抑えて書いてるのかな?
それを狙っているのかな。
私は、彼の本で泣いてしまいました。
海外作家の方は、風景や建物、周りの景色や感情など、とっても詳細に情景を書くみたいです。
そうすると、読んでる最中に映画で画像を見ているか?の様な感覚になるから好き。
オデッサ(ナチス親衛隊)のメンバーをなぜ?そこまで執拗に追いかけるのか?
最期の最期に判明する場面が今でも、心に焼き付いています。
この場面で、涙が止まりませんでした。
Posted by ブクログ
フリーのルポライター・ミラー。取材力を生かして収容所の所長として悪行の限りを尽くしたSS大尉ロシュマンを追ううち、SS隊員を支援する組織オデッサに、イスラエル諜報機関の陰の協力により、潜入に成功。しかし、潜入も早々にミラーの不注意により、その正体は露見しオデッサの処刑人に追われることになるのだが……間一髪のところで追及をするりとかわす。オデッサの詰めも甘い。ハリウッド映画のようだ(笑)。それでもミラーがロシュマンに迫る描写に惹き込また。ミラーの動機が、自殺したユダヤ人の手記の中に伏線としてあった!
Posted by ブクログ
1972年の世界である・・フォーサイスの視点、執筆は何処までが事実でどこからがフィクションか混然となっていることは重要なキーポイント。
当時、アルツハイマーになって行った亡き父が「こんな面白い小説はない」と絶賛しており、20歳台で読んだ記憶がある・・がちんぷんかんぷんで私の孫綱頭では分析、玩味不可だった痛い記憶がある。
今、読み返し「今年最高の読んだ本」になかにランク☆
ページターナーと化した。
21Cに入り、化学的分析も加わり、ナチス追及の手は再び鋭くなっているとか・・出版も相次いでいる。
作品内の文に在るように「SSという特定の存在は独国民全体有罪論の陰に身を隠している。RSHA内の2つの部門が悍ましき世紀最大の責任を有している」とある。
初読当時掴めていなかった「実は、エジプトがナチスに同情的であった」がメインテーマという事は明確な驚き!!
南米がナチの主だった受け入れ先なようにエジプトもそうだったとは。
それから半世紀以上過ぎ、世界は根底から覆りが連続している・・いや し続けている~南米はもとより、アラブ諸国はロシアと手を結んで行っているし、イスラエルとも交渉のテーブルに在る。
そしてサブテーマであるロシュマンの存在。かくしてミラーは狂言回しだったという事、してラストがこういった形で読み手にとっては不消化感有るのは当然の成り行きだったという事も納得。 リガに収容所が有ったという事は知らなかった・・自ずとマンデルの「リガから来た女」の内容が思い出されたが。。。
何かにつけて言われるWW2の敗戦側の戦争責任、裁いた側の裁判内容の詮議が言われて久しい。
我が国の戦争責任もさることながら、独逸の在り様を見習うべきだという声も聞こえている‥そういうドイツの在り様は20C後半で「素早い保身と名誉ある地位への返り咲き」をした多くのSS幹部と彼らへの追及内容に温度差が混在してあったことは今後も解明が続いて行くに違いない。
今度は同じく、今一つ不明な読後に終わった「ジャッカルの日」を読まないと。
Posted by ブクログ
一人の青年ルポライターが戦後のナチスドイツの親衛隊の救済組織に鋭く迫っていく。モサドやユダヤ人側の訴追組織の思惑が複雑に絡む中、中核へと一歩一歩近づく程に高まるスリルは本書の醍醐味である。
後年のフォーサイスの作品と比較するとプロットの緻密さにおいてはやや欠けるが補って余りあるテーマの深みがある。
1972年当時、本書に記載・言及されている内容は、後日、事実として報道されたことが多い。この小説が当時の事実を超える真実を多く語っていると当時の読者が感じたことは想像に難くなく、このジャンルでの卓越した作者の才には感服する。
主題となるナチスドイツの親衛隊は、血の団結力を誇り、優秀な人材を取り揃えただけに、ユダヤ人収容所など第二次世界大戦後の大きな傷となった。
もしかするとドイツ人の戦後感が、わが国の戦後感と違うとするなら、敗戦と同時に逃げたナチス親衛隊のもたらした影の影響があるのかも知れない。
Posted by ブクログ
大学生のころ『ジャッカルの日』を読んで震えましたが、本書も同じく最後まで読み切らせます。大江健三郎の『性的人間』なんかもそうですが、無駄な伏線がいっぱい張ってあり、ミステリーのように幻惑を狙った効果が企図されていないので、不条理な日常生活と連関しているようで、そのへんも楽しめます。しかし、なんといってもローラーコースターのような展開で主役のルポライターが危機的な状況をすんでのところですり抜けるとホッと息を呑みます。初版は72年。全然古びていません。
Posted by ブクログ
ネオナチを扱った作品としては有名どころ。
ジョン・ボイドで映画化されたのをご覧になった方も多いでしょう。
事件の背後関係を掴むまで、時代背景が交錯するのでなかなか入り込めない人もいるらしいが、入ってしまえばこっちのもんです。
ミステリのようにドキドキさせてくれる。
執筆中、作者に脅迫状がばんばん届いたというのも頷けるくらい濃くて強い内容だから腰を落ち着けて読みたい。
Posted by ブクログ
偶然、収容所の生き残りの老人の日記を読んだことから、ミラーは老人の敵・SSのロシュマンを追いかけ始める。ところが、彼の前に元SSたちの組織・オデッサが立ちふさがる・・・ 手に汗握りました。ミラーの真の動機はわかりやすいものの、決め手に欠けるよな〜と思っていただけに、種明かしには驚きました。覚えてるものなんですね・・・。
Posted by ブクログ
まあまあ面白かったけど、期待していたほどではなかった。
ミラーはせっかく手間かけて化けたのに、自分の目立つ車に乗って
あっさりバレてしまったり、不用意すぎる。
それにオデッサの処刑人" マック・ザ・ナイフ "、マヌケすぎだろ。
あとロシュマンの用心棒も。爆弾仕掛けられた車の処分は
近い将来どうなるんだろうとか思っていたら、そう来たか(笑)