【感想・ネタバレ】雨の日の心理学 こころのケアがはじまったらのレビュー

あらすじ

こころのケアははじめるものではなくて、はじまってしまうものである。
つまり、自主的に、計画的に、よく考えて契約書にサインしてから開始するものではなく、受け身的に、期せずして、否が応でも巻き込まれてしまうものです。
よく晴れた休日に散歩に出かけたら、突然大雨が降ってくるようなものです。
そういうとき、僕らは当初の予定を変更して、とにもかくにも雨宿りをできる場所を探したり、傘を買ったりしなければいけなくなります。

同じように、ある日突然、身近な人の具合が悪くなる。
子どもが学校に行けなくなる。パートナーが夜眠れなくなる。老いた親が離婚すると言い出す。部下が会社に来なくなる。あるいは、友人から「もう死んでしまいたい」と連絡が来る。
突如として、暗雲が立ち込める。
どうしてそうなったのか、なにをすればいいのか、これからどうなるのか、全然わからない。
でも、雨が降っていて、彼らのこころがびしょ濡れになっていることだけはわかります。
そのとき、あなたは急遽予定を変更せざるをえません。とにもかくにも、なんらかのこころのケアをはじめなくちゃいけなくなる。
傍にいるのがあなただったからです。その人があなたの大事な人であったからです。
ある日突然、あなたは身近な人に巻き込まれて、雨の中を一緒に歩むことになってしまう。
こういうことがどんな人の身の上にも起こります。
人生には、こころのケアがはじまってしまうときがある。

ですから、突然の雨に降られている方々に向けて、あるいは長雨の中で日々を過ごしておられる方々のために、心理学の授業をしてみようと思います。
雨が降ったら、傘をさすように、こころのケアがはじまったら、心理学が役に立つと思うからです。
(まえがきより)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

この本のキーポイントは「ほどよく」と「わかる」でしょうかね。
大事なセンテンスは太字になっているのですがどれも確かに書き留めておきたいような大切で本質をついた言葉ばかりです。
全文実際に行った講義をもとにしているので喋り言葉で文章が綴られているので、読んでいるけど語りかけられているような読み心地で大変読みやすいです。
読みやすいので理解もしやすい。平易な言葉で染みるように入ってきます。雨の日というだけあって水のように浸透力バツグンです。

ケアはまずモノやカラダという環境からしていって、ココロはその次というのはとても的確だと思いました。
確かに言われてみるとそうだな、と思いました。
心身が疲れ切っている時は日常の生活に関わる家事や作業が本当にしんどいときがあります。
そういう時それをやってもらえたら確かにすごく楽になります。
やってもらえてる上できれいになってたり整ってたりするのを見たら元気にも慣れます。
「環境を整える」ことの大事さって見逃されがちな気がしますがとても大切だなと改めて発見した気がしました。

傷ついたこころは見えにくいところに置かれる(p101)

環境はうまくいっているときには忘れられて、失敗したときにだけ思い出される(p218)
親が子どもからあんまり感謝されないのはそのせいだと書いてあるのを見て膝を打つ思いでした。なるほどね。
だから傷ついているときのケアは環境を整えるのが大事というのはすごく納得感がありました。

緊迫は悪いことではない(p191)
何年も前のことですがなんか誤解されてるなと思った時、知らぬふりして流したほうが気まずくならなくて済むけど自分はこの先ずっとその人にわだかまりを抱いたまま付き合っていかなくてはならないだろうそれは嫌だな、と思ったので勇気を出してそのことについて問いただしたことがありました。緊迫しました。
誤解してないかと問いただしたら、おそらく相手もあのことを言ってるんだなと思いあたったはずなのだけど、気まずくなりたくなかったと見えて気づかないふりをして「そんなことあったけ」と言ってくれて何事もなかったように緊迫が終了したことがありました。
その後からその相手とは緊迫しなくなったので(お互いに「そういう人だ」という了解ができたのだと思う)付き合いやすくなったことがあります。
人間関係において時には必要な緊迫、はあると思います。

考えさせられたのは「ケアを軽く扱う社会(p278)」社会自体にケアする人を傷つける構造があるという指摘はとても鋭いと思いました。
確かに、だから会社で問題を抱えた人は同じような部署に固まって配属されるし(ケアする人の負担や評価されない不条理を考えてない)、介護や保育の仕事は賃金が安いままなのだと。
これはみんなが見ていてもきちんと認識できていない大きな社会問題の一つだと気付かされた思いでした。

こころは移動しつらさは感染する(p272)
でもそれはちゃんと接触しているということでもあると。これは覚えておきたい言葉です。

本当にしんどいとき本書は読めないかもしれない。冒頭にあるようにこころのケアははじまってしまうものだから思いがけないときにはじまったときに備えて、本書の言葉を思い出せるようにしておきたいと思いました。

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2025年05月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人と関わっていると、どんどん相手がわからなくなるし、正直放り出したくなる。そんな自分に嫌気がさすし、なんで人はこんなに勝手なんだと絶望する。でも、きっとそれでいいんだろうな、しんどいけど。一生手元に置きたい本ができた。

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2025年05月05日

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