あらすじ
父の自殺、学校での苛め、母には徹底的に拒まれて…。幼い頃に受けた仕打ちで凍りついた篠崎真冬は心に深い傷を抱えて生きてきた。その愛に閉ざされた心を解き放つのは、ニューヨーク。恋人、ラリーの幼い息子ティムも、実の母親から虐待を受けて育った子供だった。自分の居場所を求めて模索し幸せを掴みかけたその時、真冬にさらなる過酷な運命が襲いかかる。そして舞台は広大なアリゾナの地へ。傷ついた真冬は再び羽ばたくことができるのか? 一人の女性の魂の再生と自由を描く感動長編。
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Posted by ブクログ
確か村山由佳さんの本との出会いがこれ。
父親が著者名を見て進めてくれた。
悲しくて人間の腹黒さの詰まった作品だけど、凄く凄く好きな本。
Posted by ブクログ
【翼】 村山由佳さん
父親は自殺し、母親からは「おまえは疫病神だ」と
ののしられて育った真冬。
彼女は自分とかかわった人間が不幸になるコトを恐れ、
他人とうち解けるコトを避け、ダレにも心を開かずに育った。
今、彼女は日本を離れニューヨークで暮らす。
そのニューヨークで大学教授のラリーに見初められ、
彼の真摯で誠実な人柄に少しずつ心を開いてゆく。
ラリーには前妻との間に出来た子どもティムがいた。
ティムは前妻に虐待され、心に問題を抱えた子どもだった。
やがてラリーとの結婚を決意する真冬だが、
彼女に悲劇が襲う。
結婚式の当日、式後に真冬とラリーが新居へ戻る途中
ラリーは強盗現場に居合わせてしまい、殺されてしまったのだ。
真冬はやはり自分が疫病神だと思いこんでしまう。
ラリーの葬儀はラリーの田舎で行われた。
彼の父親は観光みやげと牧場を営む事業家だった。
ラリーの葬儀の席で、真冬は白人とインディアンの混血児
ブルースと出会う。
彼もまた白人とインディアンとの境界線で悩んだ経験を
持つ青年であった。
ラリーの実家で、真冬は彼の複雑な家庭環境を知る。
☆
心に問題を抱えた真冬とティム。
彼らと同じ次元の悩みを持っていたブルース。。
彼らは似たもの同士だった。
自分の立つべき位置が分からず、自ら翼をたたみ
精神を殻の中に閉じこめることで、自らが傷つくことを
最小限に抑えようとする彼らが、大地の声を聴き
自らの足で地を踏みしめ、自分のあるべき場所へと
戻ってゆく。
最後に真冬もティムも自分の意志で自分の進むべき道を
見つける。
何かを手に入れようと思えば、
何かを手放さなければならない。
別れはそのための儀式のようなものだ。
最後で、ブルースがマイケルを助けるため、
永年連れ添ったパンチ(犬)に「(噛んでいる口を)放せ」
と命令するくだりには涙腺を刺激されました。
良い本でした。こういう最後にいい余韻を残して終わる本が
やっぱり好きだな。