【感想・ネタバレ】この部屋から東京タワーは永遠に見えないのレビュー

あらすじ

「みんな、高校卒業おめでとう。最後に先生から話をします。この街を捨てて東京に出て、早稲田大学の教育学部からメーカーに入って、僻地の工場勤務でうつになって、かつて唾を吐きかけたこの街に逃げるように戻ってきた先生の、あまりに惨めな人生の話を――」(「3年4組のみんなへ」)など、Twitterで大反響を呼んだ虚無と諦念のショートストーリー集。話題の覆面作家、衝撃のデビュー作!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

人はいつ、「自分はもう何者にもなれない」と気づくのだろう。この本の主人公たちは、まるでかつての自分のようで、読んでいて少し恥ずかしかった。

「朝活」「成功者の思考」「年収1億」──そんな自己啓発本を読み漁り、マーカーを引いて満足していた自分。
YouTubeの履歴は「成功者の習慣」「日本はオワコン、海外へ」。でも、本当の成功者は、きっとそんな動画すら見ていない。

35歳になった今、私は気づく。
私もまた、何者にもなれなかった。

私の部屋からも東京タワーは、永遠に見えない。
でも、見えなくてもいい。そんな人生も、悪くない。
この部屋から見える景色を、大切にしていこう。

0
2025年08月09日

Posted by ブクログ

昔から気になっていた本の文庫本があったので買ってみた。解説にもあるように、固有名詞を形容詞的に使うことでリアリティのある文章が描けることに驚いた。「慶應」「商社」と聞けばどことなく華やかな、エリートな、といった属性を持つし、「JRの終着駅」「コンビナートが立ち並ぶ沿岸部」と聞けば田舎なのかなといった印象を受ける。
こういった固有名詞が持つ固有の属性を最大限に引き出した書き方で臨場感もあり面白かった。
東京で生まれ育ちながらも、SNSの浸透によって本来面前で見ることの無いエリートの姿が見えるようになり、その比較で押しつぶされそうになる自分の脆い感情がズキズキと蝕まれる小説でもあった。
小説としては非常に面白いが、読むタイミングは考えておきたいと同時に思った。

0
2025年07月29日

Posted by ブクログ

東京の暮らしのドロドロした部分を感じられて、とても面白かった。
東京という街はキラキラして見えるが、必ずしも成功者だけがいるわけではなくて、たくさんの失敗者たちの屍の上にあるのだと感じさせられた。

人にマウンティングを取ることでしか自尊心を保ちつづけることができない人たちが住んでいるのが東京であり、これがタワマン文学たる所以なのだと思った。

各短編の主人公たちのように地方の人間ほど都会に夢を見て、夢破れて去っていくのだと思った。

『大阪へ』『大阪から』という短編が好きだった。

0
2025年07月30日

Posted by ブクログ

各編、1人の人間の人生に焦点を当てたショートショートだった。

その人物にリアリティを持たせるのは固有名詞なんだと気付かされた。
麻布競馬場の物語はレトリック云々よりまず圧倒的固有名詞だと思った。
その人を形容するのにありふれた形容詞を用いるよりも、どこの学校を出てどんなものを与えられ、どんな服をきてどんなものを食べてきたか、それらの固有名詞を列挙することで人物像を鮮明に形作ることが出来る。

これ、関東住みの自分は面白く読めたけど、地方住みの人はどんな感想を持つんだろう?

0
2025年06月19日

Posted by ブクログ

Z世代かそのひとつ上くらいの若者が、ずーっと自己紹介をしている。Twitterは基本的に自分のことを書くミニブログサービスだから、その形式が合うのだろう。

良いもの、高級なもの、分不相応なものに対する欲望や執着がある。イギリスの高級靴とか、バルミューダの加湿器とか、高いナイキのシューズとか。そしてそれを冷笑するような文体。不満を慰め合うような物語。想定された読者は東京に少しでも住んだことのある人で、それは結構なマス層だろう。自分はそうではないけど、確かに20代のときは東京に憧れがあった。

人の本心、欲を描くというのは微妙に露悪的だと感じる。女性主人公だと特にそう思う。別の書籍で、『鍵のない夢を見る』とか『いい子のあくび』とかでも同じことを思った。

一方、「吾輩はココちゃんである」とか、「希望」とか、客観的な評価が出てくる話だと違って見える。あなたの地獄はあなただけのものであって、傍から見ればよくやっている。

「僕の才能」とかも、求めるものは手に入れられていないが、そこまで恥じる人生ではないように見える。「期待はずれ」に対する評価が厳しいが、少なくとも自分には主人公たちは主体的に努力をする素晴らしい人物だと思える。

0
2025年04月07日

Posted by ブクログ

誰のことでもない誰のことでもある自分のことに見えてよっぽど情けなくなり、同情か同調かそれ以下か。とても良い作品。

0
2025年03月23日

Posted by ブクログ

初めてのタワマン文学購読。幸せの定義とは、年収や家賃、交際費など定量的な指標を高めることにあるのでしょうか。いい大学に入って、いい会社に入る、平成型のサクセスストーリーとその裏にある無数の失敗、挫折、侮蔑。人生の分岐点を振り返り、選択の積み重ね次第では、自分もこうなっていたのかも、という共感と恐怖心がこの新たなジャンルに惹き付けられる一因なのかもしれません。

0
2025年11月09日

Posted by ブクログ

人との比較。なりたい自分。憧れた自分。少しでも人より上にいることで気持ちを落ち着かせたい。そんな人たちの物語。具体的なブランド名や商品名がリアリティーを与えている。成功をつかみたい若者たちを代弁。どうなれば成功者と言えるのか。人間の価値って何だろう?

0
2025年10月12日

Posted by ブクログ

最初は、なんだなんだ~東京に住まう見栄っ張りのこと小馬鹿にした感じの内容か~?(笑)ぐらいのテンションで手に取ったのだけど、一遍読み進めてくうちに胸の内にホントやや黒い染みが広がってく感じだった。

何かを得てるはずなのに、本当に欲しいものは手に入れてないというか。今回の私は虚しい、って気持ちになった。

それと同時にみんな一生懸命自分で在りたくて必死に生きてるんだよな、って愛しくも思った。

これは作品ではあるけれど、この感じで自分のことを吐露できるのであればそれは羨ましくもあるなと思った。

0
2025年09月24日

Posted by ブクログ

実家の太さ、学歴、年収、容姿を比較し、卑屈になっている東京に住む人たちの短編集。
非常に読みやすく、固有名詞のオンパレードなので具体的なイメージがしやすかった。
これほど注目され、読まれているのはこの小説が現実に近しいからなのだろう。

0
2025年08月25日

Posted by ブクログ

良かった。
令和の感性に肉薄したストーリー。
学歴、就職、結婚について、人と比べて常に成功か失敗かを考え続けている話だった。
短編であるが、独白の文字起こしに近い。
話はそれぞれ結構似ている。

東京だけをステージだと思っている人にとって、SNSや見栄は1番大事なのかもしれない。
特に、SNSにより需要が可視化されている昨今では狭まった世界でより孤独を感じるのだと思う。

語り手は実際には才や財力に恵まれていて、満足と言える生活を送っていると思う。
しかし高すぎるプライドから人と比較し、「成功ルート」を作り出し渇望している。

失敗したときに恥ずかしいからと「理想ではない現状」に甘んじることばかりし、がむしゃらに努力する人を冷笑しつつもないものねだりがやめられない。

虚勢を張りながら臆病で、自己肯定感が低く受け身な語り手ばかり出てくる。
叶わないことを諦めているように振る舞い、実際にはコンプレックを抱きかなり執着している心の内を語り手、立場を替えて吐露する内容だった。



「変わった人間でいることにアイデンティティを見出すことはいい麻薬」



「3年4組のみんなへ」
これだけは他の短編とは異質だと思った。
どの短編も、語り手は死を待つだけの空虚な締め括りだが、これには希望があっていい。

0
2025年08月11日

Posted by ブクログ

麻布競馬場さんの本が好きで手に取った1冊。
短編集で非常に読みやすい。総じての印象としては、自分の思い描く成功者という名の何者かになりたくてなれなくてもがいている人達。私所々にも共感できることはあって、人から凄いねって言われる生活がハリボテだとしても自分のアイデンティティになる感覚がつらい。本当に切り取った一部分でも、人に憧れられる自分でいたい。でもそうしようと思えば思うほど、自分の理想とは離れている現実に打ちのめされそうになる。ずっとなんとも言えない気持ちになる。

0
2025年08月06日

Posted by ブクログ

集英社のナツイチにあわせ、著者名だけで購入。タワマン文学だとか、Twitter由来だとかの知識なし。途中で、段落分けが1ツイートごとであることに気付いた。

人のプライドをえぐるような内容の話が多く、中年以上には刺さると思う。
港区女子の生態はよく知らないのだけれど、この本のような感じなのだろうか。
ストーリー的に気持ちはマイナス方向に行くので、1冊の本として続けて読んでいくのは結構しんどい。Twitterで読んだ方がいいのかも。

0
2025年08月01日

Posted by ブクログ

作者名が麻布競馬場ってのがそもそも可笑しい。Twitter小説の書籍化。どこにでもいそうなそれなりに優秀でいたが、社会に出ると頭打ちになって、気持ちも生活も落ち込んでしまう。

0
2025年07月13日

Posted by ブクログ

登場人物は皆、屈折しているように見える。心を捻じ曲げたのは、他人と比較する考え方、劣等感ではないか。比較して、努力して、周りから見れば成功した学歴やキャリアを手に入れても、当人からすれば、より高い位置にいる人たちがみえて、永遠に安心できる立ち位置には到達できない。そういう意味で、成功の象徴たる「東京タワー」は永遠に見えないのかもしれない。

0
2025年07月02日

Posted by ブクログ

東京に住む私の、誰にも理解されない孤独を集めた短編集。というか、どれだけ恵まれているように見えたってめちゃくちゃになることあるんだぞ、みたいな。でもみんなが身近に感じるんだろうなあ。

0
2025年06月03日

Posted by ブクログ

読後は、若い頃に悩んだり考えたりしたあの時の黒い感情が頭の中にドロドロと溢れ出てきた。
それはきっと、自分自身も上京してきた身として、共感するところがあったからかもしれない…。
(ただし、30年前だけどネ…)
劣等感は常にあったし、自分の境遇を不幸に感じたり、もがいていたなぁ。
SNSの発達したこの時代の若者は、他人のキラキラした様子をみるにつけ、特に強く感じるのでしょうか。

富めるものはさらに富み、そうでないものはどんなに頑張ってもそれ以上にはいけない、ってことを哀しいかな、東京にきて学びました…。

0
2025年05月30日

Posted by ブクログ

僕がこの本を前情報も無く読んだきっかけは
タイトルから予想して、今はまだ東京タワーの見えない部屋に住んでいるが、最終的には成り上がって立派なタワマンに住めるハッピーエンドかと思っていて、そんなスカッとしたエピソードを読みたかったからだった。
違った。
東京タワー、...むしろタワーとか関係なく東京そのものに執着し、挫折して皮肉って。
かといって、話に出てくるそれぞれの主人公は自身の出身地や実家にも劣等感を抱き育っている。
この人たちの本当の居場所はどこにあるのか。
読んでいる自分にも当てはまる感情もあるだろう。
夢を見れば見るほど現実で他人と見比べて自分を惨めに見えてしまって何もやる気も出なくて負の連鎖に落ちてしまう。
地方に住んでいる人が「東京とはこんなところなのか」と楽しむ分にはいいだろう。
ただ、東京に住んでいる全ての中途半端な人は読まない方がいいのでは。

0
2025年05月20日

Posted by ブクログ

先に読んでいた『令和元年の人生ゲーム』と同じく現代の若者たちが主人公で、彼ら彼女らがいわゆる「社会」というか「東京」という得体のしれない篩にかけられて脱落していく様をシニカルに描いた作品集。
前作同様、登場人物たちの意識が現代の若者たちのそれとどのくらい重なっているのか、自分にはなかなか判断が難しいけど、小説としてはどれもシンプルなストーリーでメッセージ性が強く出ており、『令和元年』より刺さる部分が多かった本作のほうが個人的には好み。
やや気になったのは、中盤あたりまで似たような展開が何度も出てくる点で、
 学生時代はそこそこデキる子→社会人になって挫折→会社を退職
のパターンの連発はさすがにどうなのという感じだったのだけど、終盤は手を変え品を変え一本調子の展開ではない作品も増え、なんだかんだ最後まで面白く読み通せた。

注目に値する作家なのは間違いないけど、ペンネームとタイトルでイロモノ扱いされているのがもったいないなと思う。あえてそれを狙っているのであれば大したものだけど。

0
2025年02月24日

Posted by ブクログ

Twitterで話題になった短編を纏めたものらしい。
人の嫉妬や欲望がわかりやすく描かれてて、
共感したく無いけど、共感してしまう。

0
2025年10月19日

Posted by ブクログ

Twitterで話題になったショートストーリー集。誰もが一つでも身に覚えのある、感じたことのあるエピソードだらけで、そのどれもが吐き気がするほどリアルで、どこまでも悲哀に満ちてて、心情剥き出しになっててやるせなくなった。と同時にどこか軽くなった気もした。「大阪へ」と「大阪から」のバックトゥバックストーリーが良かった。

0
2025年10月19日

Posted by ブクログ

Twitterにいる、ある程度同じような育ち方をしたロスジェネ世代よりちょい下の人たちの物語。まあ、ロスジェネ世代の私としても共感できる気持ちはわからなくもない。こういう育ち方をして葛藤を抱える感じはわかる。でもSNSと同じで共感してるのは読んでる時だけ、読み終われば全く内容を思い出せない感じでした。なんでだろうね。

0
2025年10月12日

Posted by ブクログ

早慶ではないけど私もいわゆるエリートコースの人生なので読んでいて嫌な気持ちにはなる。でもなんだかんだ登場人物みんな成功者じゃないかと思う。大体みんな経済的に豊かだし。ただ自分の捉え方がマイナスなだけに見える

0
2025年10月12日

Posted by ブクログ

東京は90%の諦め、10%の成功で構成されてるのかな。若者溢れる東京、テレビが語るきれいな東京というのはたいていがまやかしであり、虚像であると。マッチングアプリはもう立派な一つの文化になってるんだな。ただその世界というのもかなり混沌としている模様。こういう東京のいろんな街にスポットが当たっているときの、解像度が高く、その分その作品を楽しめるのって、東京に住んでいる人の特権だよな。
来年から東京と神奈川の境に住む予定だけど、東京を腐すのか、関西に戻りたくなるのか、意外と居心地がいいのか、どう感じるか楽しみ。

0
2025年09月15日

Posted by ブクログ

全体を読んで感じたこと。
友達がいない、愛されない、慕われない、コミュ症、根暗、自己肯定感の異常な低さ。
そういった負の感情が生み出す妬みや僻み。
そんな自分に嫌気がさして、だから自分にも周囲にも分かりやすい学歴、職歴をラベリングして、比較して、自分が上だとランク付けすることで自分を守る。
でも、根っこでそれが虚しく価値のないことだと知っている。だから、苦しい。
コミュ力と図太さ。それが人間、学歴より家柄より何より、最強スキルなんだと思い知る。

0
2025年08月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

刺さりすぎてしんどい。そんな自分と、いや私は違うと思う自分。そんな姿はまさに登場人物たちのよう。
東京に暮らす人、暮らしたことがある人、暮らそうと思ってる人、みんな読んで欲しい!…いや、やめといたほうがいいかも!!!…いや、でも読んで!!! 


ここからネタバレ

今年で31歳になる を読んで
く行く飲食店で誕生日を祝われる(正確には来月末)主人公。ありがとうございますと言い、たまにはこういうことがあってもいいな、と思う主人公。
私が店員なら誕生日を聞いていたら祝いたくなってこんなことしちゃうだろうなと思いつつ、自分が客ならもうたぶんこの店には行かない。誕生日がずれていたとかそういうことじゃなくて誕生日を祝われる店員と客の距離感が居心地悪く感じる。たとえ誕生日を話したとしてもそれは祝って欲しいわけじゃなくて、人間らしく話すためのネタにしただけ。
店員なら祝うくせに?私の人生のコンセプトのブレがすごい。

0
2025年07月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

Twitter文学なるものを初めてちゃんと読んだ。Twitterに文章を載せるという行動に出て、noteなども活用している時点で、筆者は私とあまり変わらない年齢なのだろうと思うが、就活やら何やらを終えた身としては共感できる部分も多かった。
学歴、就職偏差値で測られる部分とそうでない部分、どちらも人生に大きな影響を及ぼし得るが、結局本人の心持ちが良い方にも悪い方にも人生を転がしてしまう、リアルな様子を描いていた。
短編集だけど、読みやすく、かつ飽きない内容だった。

0
2025年07月15日

Posted by ブクログ

おもしろかったけれど、救いのなさを感じる話も多かった。東京から大阪からという話が好きだった。
東京という街はきれいだけれどもいろんな人のコンプレックスを抱えて動いているのだなということを直に感じることができて、そしてそのコンプレックスはきっと自分の中にもあるものだからこそ、何とも言えないぐちゃっとした気持ちになった。そういうことをしっかり見つめることがどれだけ大切か痛切に感じられたような、気がする。

0
2025年07月08日

Posted by ブクログ

東京に来なかったほうが幸せだった?
Twitterで凄まじい反響を呼んだ、虚無と諦念のショートストーリー集。

………

新しい形の小説?型破りな小説?
つぶやきを、つないだかのような、文節の短い印象的な本だった。感動するかと言われたら、感動はないけど。確かにTwitterで反響を呼ぶのは、わかる気がした。
Z世代付近の若者の、現代を生きる悲哀のような叫びとも言えるような、話の数々。
なかなか、面白い視点で書いているなとは思う。

でも、自分世代にはあまり響かないのかもしれない。

0
2025年04月12日

Posted by ブクログ

22篇の短編集。
元がTwitter(X)に投稿されていた所謂「Twitter文学」なので140文字毎の短文で構成されていて、これが紙の上でも結構読みやすいかもしれないという発見があった。

内容はえげつない程にリアルで致死量の東京を一気に浴びられる。

0
2025年03月04日

「小説」ランキング