【感想・ネタバレ】不滅のレビュー

あらすじ

パリ。プールサイドに寝そべっていた「私=作者」は、見知らぬ中年女性の、軽やかにひるがえる手の仕草を見て、異様なほど感動し、彼女をアニェスと名づけた…。こうして生まれた「女」の、悲哀とノスタルジアに充ちた人生が、時空を超えて、文豪ゲーテと恋人の「不滅」を巡る愛の闘いの物語と響きあう。詩・小説論、文明批判、哲学的省察、伝記的記述など異質のテクストが混交する中を、現実と虚構、過去と現在、個人の運命と歴史が交錯し、軽やかに駆け抜けていくポリフォニック(多声的)な、壮大な愛の変奏曲。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

最初のうちは面白く読んでいて、付箋なんかもつけたりしたのだけれど、半分も読み進まないうちに何を読まされているのかわからなくなる。
今は誰の話を、なんの話を、いつの話を読んでいるのか?
物語の大半は理解できないうちに零れ落ちてしまったけれど、なんとか少しでも掬い取れたらいいのだが。

ふと見かけた見知らぬ女性の、軽やかにひるがえる手の動きを見て心を惹かれた私は、その女性にアニェスと名付けて、彼女の家族とその関係性について思いを馳せる(妄想する)。

アニェスの母は、家族や友人たちに囲まれて生きることに喜びを感じる人だったが、アニェスの父や彼女は、人と離れて生きることに安心を覚えるタイプだった。

”彼女が求めていたのは、彼らがときどき便りをよこして、身辺に厄介なことはなにも起っていないと請け合ってくれることだけだった。それはまさしく言いあらわしにくく、説明しにくいことだった。彼らに会いたいとも一緒に暮らしたいとも望んでいないのに、彼らが元気でいるかどうか知りたいという彼女の欲求は。”

序盤に出てくるこの文章、「わかるわ~」と思った。
アニェスが夫や娘に対して、一緒に暮らしたいと思わないけれど、元気かどうかは知りたいと思うこと。
でも、私がいつでも同居できる状態での別居を求めているのに対して、アニェスは最後まで同居を望まない。
望まないのに別れることができなかった不幸。不幸?
アニェスは別に不幸ではなかったな。幸せでもなかったかもしれないけれど。

そして、姉の生活に容赦なく入り込んできては振り回す妹のローラ。
彼女のエキセントリックなほどのかまってちゃん言動は、読んでいるだけでしんどい。苦手だ。

不滅。
不老不死とはまた違う。
体は死んでも思いは残るとか、作品が残るとか、思想が残るとか、生きてきた証が残れば、その人の存在は不滅なのかもしれない。
偉人だけではなく、今ならSNS上に、永遠に顔や姿が、発言が消えることなく残されてしまう。
この作品が発表されたときはアルバムの写真の中だったけれど。

”あたしが子どものころ、誰かの写真を撮りたいと思うときには、かならずその人に承諾を求めたものだったわ。(中略)そのうち、いつか、誰もなにも頼まなくなった。カメラの権利はあらゆる権利の上のほうへと高められて、そして、その日からすべてが変わってしまったのよ、完全にすべてが”

”ジャーナリストの力は質問をする権利にもとづくのではなく、答えを強要する権利にもとづくのだ”

30年前の作品とは思えないほど、今の社会にも当てはまる。
というより、30年前よりも、今だ。

アニェスに関する私の妄想部分はまだしも、ゲーテと彼の恋人たちの話や、ゲーテとヘミングウェイの対話、ルーベンスの恋愛事情と、どんどん話は難解に、構造は複雑に、そこにまたアニェスやローラやポール(アニェスの夫)の人生も絡み合って、もう何が何やら。

作者のミラン・クンデラはチェコの作家なのだけど、フランスの作家の小説を読んでいる気がしてしょうがなかった。
多分それは、思想のど真ん中に恋愛や性愛や宗教の愛が動かしようもなく存在しているからなんだろうと思う。
苦手なのだ、そういう作品。
だからそういうものに囚われまいとするアニェスのパートが好きなのかもしれない。

最後のほうに出てくる「リュートひき」は、てっきりローラだと思ったんだけど、アニェスだった。
言われてみれば、アニェス以外の誰でもないとわかるのだけど、サングラスに騙されたよね。
やれやれ。

”彼は死に対する戦闘と、生にたいする闘いのことを語る……「闘い」という単語が、短い演説のあいだに五度繰りかえされ、我が昔の祖国プラハを私に思いおこさせてくれる、赤旗、ポスター、幸福のための闘い、正義のための闘い、未来のための闘い、平和のための闘い。万人による万人の破滅にまで至る平和のための闘いと、チェコの民衆の智慧はそう付けくわえるのを忘れなかったけれど。”

これもまた多分に現在。
チェコではなくウクライナで。
万人による万人の破滅にまで至る平和のための闘い。
経験者の語る、これほどに深く真実をえぐるような言葉があるだろうか。
だがこの作品のテーマは〈不滅〉なんだな。
ああ、とてつもなく理解が遠い。

0
2022年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作中で、作者はエピソード(エピゾード)のとるにたらなさを語っている。だけれど、本作で伝えられているのはそのエピソードの威力にほかならない。私たちの存在を支え、他者に印象を与え、思い出させるのはエピソードであって、私たち個人そのものではない。

キャラクターの魅力でいうと、ファザコン極めたアニェスの高潔さが好きだし、ヒステリックで自己愛が過ぎる(でも、自分に自信がない)ローラの身勝手さには苛々する。ポールの空しい若さ崇拝や半分意識的な無神経さにも。

でも、最後にアニェスの仕草でポールをつなぎ止めるローラや、その仕草を嬉しがるポールには、スカッとするような可哀相になるような、不思議な気持ちがした。「シャボン玉の中へは庭は入れません まわりをくるくる廻っています。」という詩があって、アニェスに対するローラとポールの関係には、そんなイメージが似合う。

でもさぁべつに、アニェスは自分の仕草を覚えていられようが、どうでもよかったし、むしろ、記憶に残るのが嫌だったんだよね。お父ちゃんのように生きて死にたいっていう気持ちにとりつかれた変な女だったわけで・・・だけど、なんでかそんなこと忘れて、夫子供捨てて好きなことしてるアニェスかっけーって思っちゃう。
だから「不滅」は、そこに収められたたくさんのエピソードを以て、不滅の恐ろしさと輝き、翻って、忘れられることの価値も伝えている・・・、気がする。

あと、作者が女の子の身につける、今でいうワイドパンツ?やカジュアルな服装を憎みに憎み抜いていて笑った。

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2018年05月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【概要・粗筋】
「私」がプールサイドで友人を待っているときに見かけた初老夫人の魅力的な仕草から生まれた主人公アニュス。彼女の愛と悲しみと戦いの人生を描く物語(粗筋を書けるほど理解できていない・・・)。


【感想】
非常に難解な小説。断片的に理解はできるものの、一読しただけでは大まかにも把握はできなかった。それでも、語りの巧妙さから600ページものの長さを感じないほどどんどん読み進めてしまうほど不思議な魅力を持っている。

この小説の主要人物はアニュスを中心とするその家族たちなのだが、そこにゲーテやヘミングウェイ、実在の人物なのか架空の人物なのかわからないアヴェナリウス教授、ルーベンスというあだ名の男などが脈絡が不明なまま登場してくる。ところが、それらの登場人物の関わりが要所要所で明らかにされていくのだが、そこがまた面白くて感心してしまう。

この作品は理知的小説なので、読む上で想像力よりも知性や理性を駆使しなければならない。一方で、第三部最後のシーン(P307~P308)のように鮮烈な印象を残すような場面もある。さすがだな、と思ってしまう。

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2011年06月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「存在の耐えられない軽さ」に感動したので読みました。
不思議な世界観や独特な文体は十分楽しむことが出来たのですが、テーマや一人ひとりの人物の魅力という点では「存在の~」のほうが好きでした。

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2014年02月06日

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