あらすじ
奥多摩の、太古から神を祀ってきた霊山・御嶽山の上にある村。そこにある神官屋敷は浅田氏の実家である。彼が少年だったころ、美しい伯母から聞かされた怪談めいた夜語り。それは怖いけれど、美しくも哀しく、どれも引き込まれるものばかりだった。これら神主の家に伝わる話を元に脚色して書かれた短編を編み直し、単行本未収録作品「神上りましし諸人の話」(あとがきにかえて)と、書き下ろし作品「山揺らぐ」を加え、完本とした永久保存の決定版!
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Posted by ブクログ
表紙とキャッチコピーに惹かれて衝動買いしました。読んでみると少し不思議で、少し怖い話でどれも大変面白かったです。こういう不思議な現象と人間が共生していた時代があったんだな…としみじみ感じました。いつか御山に行ってお参りしてみたいです。
普段は静かな環境で読書しますが、無性に雅楽が聴きたくなりBGMとして流して読みました。とってもマッチして雰囲気が出るのでオススメです。
Posted by ブクログ
子どもの頃多摩地区に住んでいたので、御嶽山には遠足で行った記憶がある。
その山が神様の住まう山とは知らなかった。
どの話も非常に興味深く面白く読んだ。
小説ではあるが民俗学的な要素が満ちている。
読み終わるのが惜しいと感じながら、一つひとつ大切に読んだ。
あらためて御嶽山へ行ってみたくなった。
Posted by ブクログ
八王子児の小生は御嶽山には登ったこともあり麓のこともよく分かる。本書を読んでいると江戸から明治、大正昭和へと時代の移り変わりを感じてしまう。この頃の子どもの楽しみは父や母、祖父、祖母から寝もの物語で怖い話しを聞くのが楽しみであったろう。本書はそれがぎゅう詰めなった一冊だ。楽しく読み終えた!
Posted by ブクログ
どこまでが本当の話かはわからないが、戦前からの御岳山における生活等が垣間見れ、自然や色彩がとても美しい文章で表現されている。
登山で訪れたことはあるが、現在とはだいぶ様子が異なり、厳しい環境だったことが窺える。
御岳山に宿泊で再訪したい。
Posted by ブクログ
青梅の御嶽山、筆者の母の生家は山頂の集落の宿坊。夏休み集まった従兄弟たちに聞かせる叔母の寝物語。
世俗を超越した隔てられた異界ならではの数々のエピソード。
どこまでが創作か分からないが、浅田次郎の作品のファンタジー調な部分は、この幼児体験が影響しているのだろう。
Posted by ブクログ
完本、とあるのは様々な文庫や雑誌に掲載したものを集めたからですね。
不便な山の上にある知る人ぞ知る神社での奇怪な物語。叔母さんが少女の頃に体験したことを小さい子供達に伝える形。しかもそのうちの一人の子はちゃんと見えてしまう霊力がある。圧巻は狐が取り憑いた少女たちの狐落とし。
大騒ぎになりながら落とすこともあれば、寂しい結末を迎えることもある。
文章自体が浅田次郎の面目躍如。おどろおどろしい雰囲気を少し古めかしい日本語で記述するので引き込まれる。
Posted by ブクログ
10年ほど前に出版されたものを私は読んだのだが、今回は新たな書き下ろしの短編を加えて完本として出版された。
東京都の奥多摩の霊山・御嶽山の上にある神官屋敷は、浅田氏の母親の実家なのだそうだ。
浅田氏が少年だった頃、従兄弟やはとこ達と夏休みのほとんどをこちらの屋敷で過ごしたとのことだ。
就寝前、布団に横になった子供の枕元で、美しい伯母から怪談めいた夜語りを聞かされるのが常だった。
怖い話なのだが、少年少女達は不思議な世界へ引き込まれていた。
これらの話は、太古から神主に語り継がれたもので、浅田氏はこれに脚色を加えて短編集としたとある。
浅田氏のおじさん、おばさんから聞いた話の時代は、明治の頃から戦前の話のようだが、現在の御嶽山の環境とは大違いのような気がする。
神官屋敷の周辺には宿坊としての屋敷が30軒程あったようだが、麓からは険しい山道となっていて、この地域は隔絶されたような集落だった印象を受けた。
この物語の怖いところは、神の所業にあるといっても良い。
神社とお寺の怖さを比較すると、圧倒的に神社の方が怖さは勝ると浅田氏は語っている。
お寺やお墓の怖さには、人間そのものに関わった恐怖だが、神社には八百万の神(やおよろずのかみ)がぞんざいし、その数と種類の多さから様々な異界が生じているためだという。
そういえば他宗教には崇める「実像」が存在するが、日本の神には具体的な「像」というものが存在せず、自然を含めた万物が神というところにあるからだろうか⋯。
山、川、海、岩、大樹、小動物など、あらゆるものが神となる信仰は珍しいものだろう。
この一冊、「日本の言葉」と「日本の自然美」を愛でる浅田氏にとっては真骨頂の内容が盛り込まれているような気がした。
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著者の母方の実家が奥多摩の神社ということで、幼い頃から目には見えないけどいる何か、存在に触れながら育ってきたことが窺える。フィクションとノンフィクションがが混ざったような山にまつわる短編集。怪異譚のようだけど、全く怖くない、どこか懐かしいような感じ。
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連作短編集
神坐す山,御嶽山の武蔵御嶽神社を実家に持つ浅田氏.子供の頃,親戚の子供らが集まっているところに伯母の昔語り.その語り口そのままに少し怖い話が伝えられていく.峻厳な山の香が漂う中での思い出の中に見え隠れする一族の歴史が興味深い.
Posted by ブクログ
奥多摩にある御嶽神社の宿坊に集まった夏休み中の子供たち(従兄弟、従姉妹)に明治生まれの伯母が寝物語を話して聞かせる形で神社の宮司だった主人公の曽祖父や祖父に纏わる神座す山のエピソードが語られる。久しぶりの浅田節に思わず泣かされた短編集でした。それにしても著者の作品にはいつもながら美しい女性ばかりが登場します。
Posted by ブクログ
面白かったです!!!
御岳山に行った際に入った、神職の方が営んでいる喫茶処に置いてあった本。
今の御岳山は観光地っぽくなっているけれど、この本を読むことで、神秘的で不思議な御山なのだと厳粛な気持ちとちょっと怖い気持ちになりました。
本の中の景色が今も残っていたりするので、「この道か!」などとリアルなかんじでも楽しめました。
「天井裏の春子」が一番好き。
また御岳山に行きたくなったー!!
Posted by ブクログ
★4.2
怖いのに、美しい。
恐ろしいのに、どこか懐かしい。
代々神官の家系に生きる者として、血肉を通して描き出した連作短編集。
筆者の母系実家は東京都奥多摩の御岳山(みたけさん)の宮司を務めており、怪談や不思議譚が語り継がれてきた。
一つひとつの怪異は派手に恐怖を煽るものではない。
むしろ厳か。やけに静か。
「怖いから忘れたい」ではなく、
「怖いからこそ忘れずに守ってきた」。
日本の山岳信仰や自然への畏怖が、そのまま人の物語と重なっている。
継承される語り、思い出として語られる神域の怪異。
それらが少しずつ地層のように積み重なっていく様は、まるで現代版『遠野物語』のようだ。
完本版で追加された関東大震災や伊勢湾台風といった史実を絡めた一編も、自然と人と神との距離を改めて問い直す力を持っている。
いわゆるエンタメ怪談とは一線を画す、「神域の物語」としての幽玄さ。
人の美しさや弱さへの慈しみが息づかいを感じた。
と同時に、残すべき畏怖なのだと、深く腑に落ちる思いだった。
Posted by ブクログ
ホラーガイド新書から。カタカナ書きのホラーより、伝奇とか怪奇っていう方がしっくりくる物語。まさかの憑いた狐の方が勝ってしまうという、予想外の結末の短編が印象的だった。