【感想・ネタバレ】黒牢城のレビュー

あらすじ

本能寺の変より四年前。織田信長に叛旗を翻し有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起こる難事件に翻弄されていた。このままでは城が落ちる。兵や民草の心に巣食う疑念を晴らすため、村重は土牢に捕らえた知将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めるが――。
事件の裏には何が潜むのか。乱世を生きる果てに救いはあるか。城という巨大な密室で起きた四つの事件に対峙する、村重と官兵衛、二人の探偵の壮絶な推理戦が歴史を動かす。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

織田信長に謀反を起こした荒木村重、そして翻意するよう説得に来てそのまま幽閉された黒田官兵衛。その後、城内で起こるいくつかの凶事(現代的に言うと殺人事件)についてこの黒田官兵衛が牢の中から安楽椅子探偵となって推理を展開する時代小説。4篇に分かれているが、結局は全てが繋がり、やがて真相へ。短編であり、長編でもあるこの作品は探偵小説としても存分に堪能でき、また、幽閉自体は史実通りであるため、フィクションを織り交ぜつつ、歴史小説としても極上。この手法でもう数本書いてほしいと思った。

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2026年07月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今年公開された映画から本作を知って、所謂爽快ミステリー!という感じではないものの物語終盤の場面に漂う寂寥感が心に残り、村重という人物にはかなり興味を引かれた。今回原作を一通り読んだことで、改めて映画を観に行きたくなった。というか、個人的に原作小説は絶対に併せて読むべきものだと思っている。その順番は人に寄りけりだろうけれど。
まず、わたしは映画鑑賞時に随分思い違いをしていた。村重はてっきり戦乱の世に疲れ果てて、武士というものの在り方に憂いを覚えていたのだと考えたけれど、小説を読むと異なる印象を受けた。業の深い生き様であると自覚しながらも、彼は己の選んだ道に悔いはなく、武士として、荒木としての誇りを全うしようと最後までもがき続けていた。ただ、その過程でいつしか織田に反旗を翻した目的を忘れ、手段であったはずの戦そのものに取り込まれてしまったことに気付いて、それを恥じているのだなと。
(映画はかなり原作に忠実だったので、わたしが捕え損ねていただけでこのあたりもきちんと台詞になっていたのだと思う。一方で、久左衛門に言い放った「天下は犬にでも食わせておけ」という台詞はオリジナルだったようなので、やはり映画の方がどことなく武士という身分を脱いだ‘‘村重そのもの’’にフィーチャリングしていた気はする)
その他にも、家臣や周辺人物の素性及び村重との関係性、更にそこからどう変容していったかを理解出来ると、個々の場面の感じ方が全く変わってくる。特に3つ目の事件に関しては、無辺という人物の立ち位置と如何に武士や民草から重んじられていたかを把握しないことには中々事の重大さが分からないと思った。
そして、原作エピローグにあたる家臣達と官兵衛の末路は映画だと丸々カットされており、やはりこれも踏まえたうえでもう一度観たい。特に官兵衛の独白は、胸に来るものがあったので……。
あと個人的に最後土牢で村重が蜘蛛を逃がしたシーンはすごく印象に残っていて、あの瞬間は千代保の言葉を思い返していたんだなという事が分かって良かった。
総括として、文字と映像の相乗効果によって物語をなぞる度に思い入れが深まっていく作品。

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2026年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1章を読んで謎に満足してしまい積んでしまっていた。この度映画化を受けて再読開始
やはり米澤先生は外れがない
真っ当に面白かった

以下ややネタバレ
内容については他の方がたくさん書いてくだかっているのでそれ以外の部分で

米澤先生はストーリーを作る上手さに加えて、読者に親切な文章を書くのが本当に上手いなといつも感じる

今作においても歴史に明るくない読者、歴史物に親しくない読者にも読みやすいような配慮が所々に見られた
たとえばここ
「……月が改まって八月となる。天正七年の八月は、宣教師が用いるユリウス暦ではほぼ九月に当たる。夏は終わった。」
暦は八月になったよ、でもそれは今の9月のことだよ、昔の9月だからもう真夏じゃないよ、
というのを地の文として組込んで違和感のない表現で伝えてくれる
こういう親切な注釈があちこちにある
それゆえ読みやすく、内容がすんなり入ってくるから、内容の面白さが伝わりやすい

また、たとえば第一章
事件に関わった人物をひとりひとり問答する場面で
・誰が何の武器を持っていたか
・どの位置にいてどの順番で駆けつけたか
・誰が何を聞き何を見たか
を、村重の詰問という形で明らかにしてゆき、更に庭を突っ切ることができなかった事実、矢を紐で引いたのではない事実などを明確に述べる
推理をしながら読むミステリー好きが、情報不足により不憫な思いをしないよう丁寧な配慮が、それもまた違和感なく盛り込まれている

今作は歴史物×ミステリーという特殊な舞台において、殊更丁寧にその仕掛けがなされていたと思う
そのひとつひとつに感心しながら読んだ

陰で千代保が関わっていそうなことには薄々気が付きながら読んだが、自念の件などは言われるまで気づかなかったし、その動悸も予想外の角度で、
これが「武士としての視点でしか物事を見られていない村重」には見えない仕掛けにハァーッとなる
インシテミルの時も同じような気持ちになったことを思い出した

そして、村重の軽率な?行動によって官兵衛の子の命運が絶たれたように、
官兵衛の行動によって有岡城の面々の命運が絶たれる、という因果が巡ったラストは面白かった
「そんなつもりじゃなかったのに」の連鎖
切ないし、皮肉

全体的に本当に面白かった
ただ最後…
結局村重が城を出たのがどういう心づもりだったのかだけがいまだに分かっていない…
史実だからと言われればそれまでだが、あの流れで、なぜ、と
滅びの道と分かっていながら、一瞬見てしまった戦場への夢を捨てられなかった、という解釈でいいんでしょうか
読み込みが足りないでしょうか。もう一度読もうかな

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2026年07月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒田官兵衛の幽閉を安楽椅子探偵とする発想、そして史実をもとに展開させるミステリ、時代背景があるからこそオチが陳腐にならならない作り、とても素晴らしい!面白い作品だった。ただし僕が歴史を全然知らず、かろうじて大河ドラマを見てるからなんとなく分かるところもあるけど、読みにくさはどうしてもある、、、

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2026年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

荒木村重の謀反と黒田官兵衛の有岡城監禁、そして、城主荒木村重の逐電。大河ドラマなどでもよく題材に有名なくだりが、ミステリー小説になったと聞いたとき、その意味がよく分からなかったが、読んでみて非常に納得した。
米澤穂信と言えば、『氷菓』シリーズで、それしか読んだこともなかったので、そのイメージが強かったのだが、歴史モノになっても、基本的な物語のエッセンスは変わっていないように感じた。『氷菓』は、高校生の日常の中に小さな謎を発見してミステリーにした小説だったが、今回の『黒牢城』も、「籠城という日常」の中に小さな謎を生み出してミステリーにしていくという点では、とても『氷菓』を思わせるような作品だと思った。
ミステリーにおいて謎は、登場人物たちにとっても非日常的な出来事として発生するのが普通であるように思われる。殺人事件をはじめ、それは、普通は起こらない出来事であり、普通では起こらない出来事であるがゆえに、探偵役によって解決されるべき謎になりうるのである。その点、米澤穂信の作品では、とにかく、謎の作り方が、そこにいる人々にとっての「日常」の中に埋め込まれているように感じる。『氷菓』の中で殺人事件が起こらないのは、それが、高校生の日常ではないからである。逆に、『黒牢城』の中で起こる殺人や手柄首のすり替えといった事件は、籠城という出来事の内にあっては、極めて「日常」的に感じさせられる。

本編は、荒木村重が監禁した官兵衛の力を借りながら城内で起こる様々な不可思議な事件を解決していく物語になっている。ただ、その物語を貫いているのは、視点人物になっている村重ではなく官兵衛の方である。実際、序章も終章も、この物語は官兵衛の登場に始まり、官兵衛が松寿丸と再会するところで終わる。この物語は、官兵衛が「因」となってもたらされる官兵衛の「果」の物語になっている。

こうして官兵衛は、摂津国有岡城に囚われた。
ーー因果が巡り始める。(p21)

ここで巡り始めた因果は、誰にとっての、どのような因果であったか。村重は、官兵衛を生かしたことによって、一人城を抜け出すという武士としての汚名を被ることになった。では、官兵衛にとっては、何が松寿丸と再会するという結末への「因」になっていたのだろうか。
官兵衛は、村重への復讐心から、有岡城の「寿命」を伸ばす手助けをした。それは、果たして最愛の息子と再会する行いだったのだろうか。
この物語を貫いているのは、章題に立てられているような「因果」以上に、無常とでもいったような哲学である。官兵衛の浮沈には、因果応報らしき出来事のつながりはなく、ただ、思いもしない不幸と幸運とが巡ってくるばかりである。
その点、村重の因果ははっきりとしているように見える。官兵衛を救ってしまったがために、官兵衛の思惑の通りに、彼は一人城を抜け出ることになってしまい、歴史に武士としての汚名を刻むことになったのである。
この物語は、因果と無常とが、村重と官兵衛の存在によって対立する物語なのではないかという気がする。官兵衛にしてみれば、松寿丸が生きていたという事実は、天恵のようなものであった。その一方で、村重は、自らの手で行った判断によって、自らの身を滅ぼすことになる。
こうして見ると、因果というものほど、やりきれないものはないように見えてくる。

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2026年07月24日

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