【感想・ネタバレ】透明なルールのレビュー

あらすじ

中学受験国語で出題多数の小説、
『キャプテンマークと銭湯と』『ソノリティ はじまりのうた』の佐藤いつ子氏最新作!
ーーー
平凡な中学生・優希は、クラス替えでたまたま「1軍」のグループに入れたものの、本当の自分を隠して生きている。
成績が悪いフリをするし、オタクなところは絶対にバレたくない。クラスメイトの投稿に「いいね」をつけるかどうかも悩む。
そして家でも、生理用品を買ってと親に言えない・・・・・・。

「周りからどう思われるか」を気にするあまり、生きづらさを感じる優希が、不登校ぎみの転校生やマイペースなクラス委員との心の交流を通じて、
自分を縛る<透明なルール>に気づき、立ち向かっていく。
教室の雰囲気やSNSの同調圧力に息苦しさを感じる全ての人に、勇気をもたらす爽やかな物語。
ーーー
★10代から共感の声続々★
「僕自身も、小学校の頃に同調圧力や連帯責任に疑問を感じたことから徐々に学校へといけなくなり、
悩み続けていた経験があるので本作の主人公の姿にとても親近感を覚えました。
自分自身の軸が決まらず、迷っている人にこの作品をぜひおすすめしたいと思いました!」
「ずっとわからなかった<自分のもやもやとした経験、思い、感情>の名前。
それにぴったりな言葉を知ることができました。
読み終わった時に前を向こうと思えるような、素敵な物語でした。」

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本の雰囲気的に、夏休みの課題図書とかになってるのかな?と思ったら、中学受験向けの模試のテスト問題になったりしてるらしい。
なるほど〜、どうりで読みやすいわけだ。
小学校高学年くらいの子ならサクッと読めてしまいそうな内容だけど、ちゃんと伏線回収の要素もあるし、本を読んで自分のことを顧みる余白もあって、とても良い小説だと思った。

私がこの本で1番好きだったポイントは、本当に嫌なやつがほとんどいないこと。(北側先生は明確な悪役って感じなので彼は除く)
たしかに、瞳子や流星など、その人の言動・行動が自然と「透明なルール」を生み出してしまう登場人物もいるが、そいつらも心の芯から悪いやつなわけではない。「無自覚な、でも憎めない女王」なのだ。(p.314)

登場人物も想定される読み手も若者だからこそ、希望を持たせるような人の描かれ方がとても素敵だと思った。
個人的には、北側先生にも変わってほしかったけどね〜
年次の浅い辛島先生と比較して、北側先生は大人=考え方古い・透明なルールに縛られまくり・悪、みたいな感じで終わったのがちょっと寂しかったかな。

ともあれ、とっても爽やかでほろりと泣けるいい小説でした。

0
2024年11月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

季節は終わりましたが読書感想文にもってこい感強めの1冊。

進級によるクラス替えきっかけで、クラスカースト高めのグループに入ってしまい、とにかく「嫌われないこと」「ハブられないこと」に心を砕きまくることになる主人公の優希。中2女子。

大体の物語では、カースト上位女子はプライド高めの嫌なヤツ率高し。
気弱な主人公は

風見鶏→勇気出す→楯突く→ハブられボッチ

この辺までを共通して辿り、反撃や懐柔などのルートを辿り、98パー

「私らしく生きていく」

にゴールするわけです。

これもゴールは一緒といえば一緒。


ただひと味違うテーマは

自分自身を縛る「透明なルール」。

その透明なルールにはテーマとしてよく扱われる「同調圧力」も含まれているものの、この本が強めに押し出しているのは

「自分自身を縛る」の部分。


私は


〇〇したい。
〇〇だと思う。


だけどそれを実行すると、
それを表明すると、


笑われるんじゃないだろうか?
嫌われるんじゃないだろうか?
ハブられるんじゃないだろうか?
いじめられるんじゃないだろうか?


同調圧力テーマものは、そう予想してブルっていると、まあ十中八九


笑われ、嫌われ、ハブられ、いじめられる
んですよね。

そこからの這い上がりや倍返しをカタルシスと感じるのは、脈々と受け継がれし水戸黄門DNAが宿る日本人に限ったことではないはず。
それはそれで確かにスカッとするしいいんですが……

この「透明なルール」は、
③に注目しています。

ネガティブすぎじゃない?って。

ほんとに周りってそんなクズばっかり?
考えすぎじゃない?
妄想でしんどくなってない?
もうちょい自己主張してみては?
的な。


しかしまあ……これは実際どうでしょうね。


がっつりネタバレですけど、結果このストーリーではクラスカースト上位は普通にいいヤツばっかりでした。
先生のナイスアシストもありつつ(ああいう場での先生の空気作りって小中ではけっこう結果を左右する)、
悲観的な妄想で自分で自分を押し込めんなよ!キラーン
っていう爽やかエンドです。



でも、リアルの言動にはある程度の不可逆性があるもので。

あ、やべ。主張してみたら周りクズばっかりでネガティブパターンだった……。ってなった場合。
現実はセーブポイントまで戻ったりはできないわけですよ。

ネガティブ妄想が現実になった結果訪れる地獄に、耐え忍び、抗えるメンタルが備わっているのか。
緊急避難場所はあるのか。
最悪の場合、自死を選ぶ結末や、暴行がいきすぎて殺されるパターンもあるわけです。

おそらく加害グループだって、それぞれの「透明なルール」にガッチガチに縛られてますから。

③の段階で透明な戒めを引きちぎり腹を割るっていうのは、実際けっこうな大博打なわけです。

自己主張の貧弱さに定評のある日本人。
「透明なルール」はとっても日本人らしい自己防衛手段ともいえるんじゃないでしょうか。

かといって縛られ続けて生きていくのが幸せかっていうと決してそうではなくって。
学校っていう括りから卒業しても、結果次は会社とか組織っていう括りに入学するわけで、そこにもきっと透明なルールは必然的に生まれる。時が解決してくれる問題ではないんですよね。

むしろ大人になればなるほど、透明なルールから逸脱したときに身に降りかかる結果は良くも悪くもデカくなる。ハイリスクハイリターン。

多分日本人にとっては(いや、自己主張ガチムチ日本人だっているから自己主張貧弱族に属する日本人にとっては)幼稚園から老人ホームまで解決することはないテーマではあるんです。

 1人がそこを取っ払おうとすると、ネガティブ展開鬱エンド訪れがちなので、目指すはみんなでいっしょに自己主張マッチョになろうぜ!の方向なんでしょうね。

職場でいろんな外国の方と雑談する機会がありますが、透明ルール緊縛外国人も実は結構いて。
彼らは母国より日本が生きやすいって言いますね。
自己主張マッチョなタイプに囲まれ、消耗しながら生きてきたと。

なんかそんな話を聞いていると、透明なルールっていうのも100パー悲観するべきものってわけでもない気がしてくるんですよね。

透明なルールに縛られながらも、苦しいポイントを縛るものは切っていって、ある程度の縛りには寄りかかって身を委ねるのもありなじゃないかなーと。


あ、ギフテッド完全スルーしてますが、ギフテッドである必要あったかな?
気付きへのきっかけ。他者理解。の役割は果たしてるから、まあいっか?

0
2024年11月11日

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