あらすじ
【小説すばる新人賞、史上最年少受賞から8年】
三重で育ち、京都の大学に入学した数学好きの田辺朔。
大学生活に馴染めず、漫然と授業に出て、バイトをしているうちに一回生前期は終わってしまった。
後期に入り、旧文学部棟の地下、通称「キューチカ」でひっそりと経営されているバーのマスターである先輩の夷川と出会い、朔の大学生活は一変した。
夷川につれられ、初めてのウイスキー、タバコ、そしてバーやクラブなど、これまで見たこともない世界を知っていく。
しかし、ある日をさかいに、何の前触れもなく夷川はナイジェリアへ留学に行ってしまった。「バー・ディアハンツはお前に任せる!」の一言を残して。
そこからマスターとしてバーに立つことになった朔は、その大学内の不思議なバーで数々の出会いと別れを経験する――。自由奔放な女の子に振り回されたり、学生運動紛いに巻き込まれたり、自分の行く末に悩んだり……
二十代前半の「不変」と「今」が詰まった圧倒的青春小説!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
23歳の今、何気なく手に取ったこの本は、読んで本当によかったと心から思える一冊だった。
大学4年の自分と重なる部分が多く、自分の中でも言葉にしづらかった感情が、この本の中で丁寧に描かれていた。
大学生になると、「自分とは何か」「自分は何をしたいのか」といった問いに向き合わざるを得なくなる。
明確な答えのない問いを探し続けることは、時に苦しく困難でもあるが、その過程に無駄なものは何一つない。
悩み、もがき続ける中で、少しずつ“自分”という輪郭がはっきりしていくのだと思う。
ディアハンツのシーンでは、思わず自分もお酒を飲みたくなった。
Posted by ブクログ
高校卒業したばかりの主人公が、大学生活の4年間で出逢った人や出来事を通じて、少しずつ大人へと成長していく物語。その過程でみせる、大学生ならではの、完全な大人にはなりきれず、しかし子どもでもない中途半端さや儚さが、人間関係の変化や自分自身の心の揺れを通じて鮮明に描かれている。
誰もが大学生活で経験するであろう、人生の分岐点にたった時の葛藤や、思い通りにいかない他人の気持ちへのもどかしさ、親しい友人との心のすれ違い、こうしたリアルな感覚に自然と自分と重ねてしまう。あの時の青さや自由の中にある青春が、ページをめくる度に蘇る。もし22歳の時に出会っていたら、きっとより自分と重ね深く共感していたと思う。
Posted by ブクログ
頭の中で今夜はブギーバックが流れてました。
この小説を読んで主人公のように自分も物事に対してもっと深く考え、行動するべきだったとおもいました。
Posted by ブクログ
読み終わった時には22歳の扉というタイトルに誰もが共感するのではないだろうか。自分の学生生活に重ね、主人公と同じように同じような悩みを抱えていたな、友達や他人と比べ彼らを羨んでいたな、自分に自信がなかったなと、でもそうやって毎日を生きていくことで多少なりとも成長しているんだと、よくやっているよ、と声をかけたくなった。誰だって頑張る時もあるけれど、休息の時間も必要で、決して自分がダメなことなんてない。これといって特別何かが起こるとかはないストーリーだが、主人公が大人になっていく様子が鮮明に書かれていて若さ、美しさ、鮮明さ、心地よさを感じる非常に読みやすい本だった。青羽さんの本を初めて読んだが他の作品も読みたいと思った。単純に私の感性に刺さる本だった。
Posted by ブクログ
自分が知ってる学生時代の京都にはまだスマホも無くて、市電が走ってた。随分時がたったけど、青春の思い出は今でもすぐに復活して来る。なんでもない日常のように思えて実は大事な4年間やったんやって思う。みんな生きてるかー。若き日の宮本輝作品「青が散る」を思い出したよ。
Posted by ブクログ
読んでいくうちにだんだんと引き込まれておもしろくなって、最終章の途中まできたところで、もう一度最初から読み直して、ラストまでを読み切った。
どんなにおもしろいと思った本でも、これまでは一気に読んで再読することはほとんどなかったから、私にしてはめずらしい読書の仕方。
ドラマチックなことやびっくりさせられる意外な展開もとくになく、順序よくダラダラと大学の4年間が描かれているんだけど、それがまたなんかとっても良かった。
関西のまちで過ごした自分自身の大学4年間のことを思い出した。ふだんはほとんど思い出すこともないような出来事やそのときの自分の感情、親しくしていた人たちのことなど。
読み終えて何とも言えない気持ち。
若い時代の恥ずかしくてなかったことにしたい事柄を思い出したり、宝物の思い出をあらためて取り出して味わったり、あの頃から30年近く経ったいま現在の自分の状況に感謝したり。
京都に行きたくなった。
いや、京都でなくても、新しいまだ知らない土地で新しい生活をしてみたいと思った。
Posted by ブクログ
京都大学のアングラな地下部屋、学生が長居する喫茶、自由を持て余すキャンパス、どう処理したらいいのかわからないどでかいエネルギー、生と性がぶつかり合い、酒と議論と煙草が空間を支配していたあの頃を彷彿とさせるちょっと最近のキャンパスには面影のない群像がいい。
Posted by ブクログ
私の大学時代の部室は、何故か一般の場所と異なる場所に。その建物は、乞食小屋と呼ばれた。複数の部で衝立等して分け合っていた。学食のお金もケチってそこで、蕎麦に卵入れたりして昼食を作っていた。ワンゲルだったので、煮炊き道具は、揃っていた。前の週に登った山行の反省会、次の山行の計画会、テント干し等で、昼に集まる。といっても、脱線して馬鹿話。土日は、登山。夏休みは、山を縦走。冬休みと春休みは、スキー合宿。スキー合宿は、山小屋か、冬季で閉鎖中の企業施設。よって、自炊。毎日夜は、酒盛りと生ギター伴奏の合唱。眠くなった奴から寝袋で寝る。酒や食材が無くなると、下界にスキーで降りて買い出し。リュック一杯買ってくる。幾つかこの物語とダブってくる。
大学時代の恋愛って、危うく、幼い気がする。でも、それは恋愛の練習期間かも。その時代の恋愛から、結婚に繋がる者達。北海道の一人っ子が九州の奴ととか。人生分からん。
文中に出てくる担当教授が素晴らし過ぎる。やりたいと思った事をやれ!そんな時期か…。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
京都の大学に入学した数学好きの田辺朔。
大学生活に馴染めず、漫然と授業を受け、バイトをしているうちに一回生前期は終わってしまった。
後期に入り、旧文学部棟の地下、通称「キューチカ」でひっそりと営業されているバーのマスター夷川と出会い、朔の大学生活は一変した―。
【感想】
朔が大学入学から卒業するまでに、色んな人と出会い、様々な出来事を経験し、成長・変化していく様子がありありと伝わってきた。読み手も朔の人生を経験してるような感覚になり、楽しくも辛い、そして読み手も成長できるような作品だった。
Posted by ブクログ
京都の大学に進学し、様々な人や場所に出会い、自分らしさも模索する主人公。将来に迷いながらも、人生の選択をしていく姿に共感しました。自分の大学時代をなんか思い出す、いい作品でした。
Posted by ブクログ
京都で過ごした4年間。ディアハンツのマスターを務めながら、友人の北垣とその彼女の三井さん、もはや腐れ縁?的な野宮さん、真っ直ぐに朔を見つめる日岡さんらとの日々。これらを朔に与えてくれた夷川が死んだ時、彼は京都を離れる決意をしていた。大学時代は良いなぁと思い出させてくれた一冊。
Posted by ブクログ
大学生の苦悩を描いた、どこか文学的で情緒的な作品でした。
ただ流されるだけの人生、ただ好きな物を追い求めるだけの人生に疑問を持ち、青春を謳歌しながら自分なりの答えを出せた主人公の成長が感じられた。
そこには僕らのすべてがあった。帯に書かれたその言葉がこの作品の全て。思い出が過去として消化されず、確かに胸の中にある。そんな境地に至れたのは、主人公の成長と呼べるのだろう。
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色んな人の生き方があって、世界がある。
大学生活が終わる直前に読んだ。
バーに行ってみたくなった。
ただ私は場所じゃなくて人に救われる。
Posted by ブクログ
現代版リアル四畳半神話大系。
大人と子供の狭間である大学生、彼らは確かに大人でありながら、大人になろうとしている子どものようにも見える。
どんな4年間を過ごそうが、なるようになるというか過去は過去であって未来を生きる気力になる。全て忘れて消えてしまうけれど確かにそこに足跡がある。人に揉まれながら、好きを知り、他人を知り、自分を知っていく主人公がとても恵まれていて羨ましく見えた。
大学生活って何故これほどに魅惑的な時間なのか。何に熱中してもいいし、全てを怠惰に過ごしてもいい。十人十色の生活の先に共通する価値観も存在すれば、全く異なる未来も創造される。それを能動的に行動できるならばそれ以上に素晴らしく効率的なものはないが、そんなことは到底不可能である。そう。だからこそ、どっしりと構えて生きれば良い。自分を変えるのは確かに自分だが、人を変えるのは環境であるのだから。
Posted by ブクログ
朔の4年間を通して、私も大学時代を過ごした京都の景色を少し懐かしく感じました。
それにしても若いです。
大学生だからこその馬鹿らしさ、青さを存分に楽しませてもらいました。
その時間は楽しいけれども、乗り越えて先に進まないといけないもので、ある意味まだ学生気分を抜けれてないようです。
でもこんなパワーもう私は失ってしまったかもしれない。
没頭できるもののある人生を羨ましく思います。
僕はただ、好きなものを好きだって言いたい。
俺は面白いものが見たいんだよな。面白くないものを見てると、搾取されてる気分になるだろ。何だろうな、そう、面白いというか、弾けるというか、しがらみのないものが見たんだよ。
We live in the top point of our past even though we forget the past.
Just living means not forgetting everything.
Posted by ブクログ
主人公は、京都の大学(おそらく京大)に入学した数学好きの田辺朔。大学生活になじめず、漫然と過ごしていた1回生の後期に、旧文学部棟の地下(通称「キューチカ」)でひっそりと営業されているバーのマスター夷川歩と出会って、大学生活が一変してからの4年間を描く。
出会い、恋愛、友情、サークル、学問、進路の悩み・・・と大学生というものが凝縮されたような小説で、自分の学生生活の断片も思い起こされた。京都を舞台にした現代版『三四郎』という印象。「場所が人を救う」というのは言い得て妙だと思った。
ただ、同じ京都の大学生活を取り上げる森見登美彦の作品などと比べると地に足のついた小説だとは思うのだが、どこか空想の産物感があるというか、現実には存在しない大学生活の「理念型」を見せられているような感じはあった。特に、最近の大学生がこんなに煙草を吸うのかなとは思った。
漢詩について愛を込めて澱みなく語る汀先生が、とても魅力的なキャラクターだった。
Posted by ブクログ
変わらないなぁ、というのが感想である。
Z世代とか様々な世代でくくりたがるのは世の中についていけなくなった老人たちで、我々はずっと彼らに振り回されている。
本書に詰まった青春には「無駄」と「怠惰」が染み付いている。恐らくその昔から繰り返されてきた青春の日々が、この中には詰まっているのだ。数多の恋愛と、数多の痛々しい日々と数多の無駄。その二度と戻らない輝かしさを青春と呼ぶのかもしれない。
いつの時代も青春というのは変わらないのだ。
Posted by ブクログ
青春の青さ、硬さ、痛さはいつの時代も変わらない。
大学生という、大人でありながら社会に揉まれることのないモラトリアムな期間。
時間と自由があるが故に自身について思い悩む。
2000年生まれという主人公たちとほぼ同年代の作者が書いているせいか、表現に遠慮がなく、より真情が伝わるように思える。
令和版「青が散る」か。
Posted by ブクログ
青春でした。
基本的に、理系の主人公はどこか醒めていて淡々と話は進むけれど、大学生らしい恋愛・酒・タバコといった若々しい熱量や、変人の先輩、気になるあの子に翻弄される姿が爽やかに心へ爪痕を残します。
Posted by ブクログ
登場人物の感性や感情が描かれていて面白かった。
大学に通う醍醐味はこういうところだと思い出した。
自分の子どもにも、こういう時間を過ごす意義が大学にはあるんだと経験してもらいたいと思った。
Posted by ブクログ
なんかしんどかった。
懐かしくもあり、知らない世界でもあり。
京都の大学ものが読みたくて、かつ作者が生まれた年に縁を感じて買ったけど、その年月の差によるものか。
「中国文化史I」を受講したくはなった。
Posted by ブクログ
読書備忘録897号。
★★★。
青羽さんは凄い方です。高校生の時に小説を書いてなにか賞を獲った。そして、この作品は京大大学院在学中に書いた。
究極に頭良いんですよ。そしてカッコいいんですよ。見栄えが!
本作品はラノベ感覚の青春小説。
青羽さんがどういう学生生活を送っているのか存じ上げませんが、私小説的な感覚はあるのかないのか?
京大出身の小説家、森見登美彦さんや万城目学の世界観は京大にあるのでは?と京大に入ったとのこと。すげえ!
ただ、この作品は大学生を主人公にしたステレオタイプの青春小説という感が。
「ふぞろいの林檎たち」の衝撃は全然超えられない・・・、と思う。知らんけど。
そして、ホルモーに代わるとんでも世界感・・・、でも無く。
大学とは?
①普通に行けば、在学中に成人する。未成年から大人へ。タバコ、お酒。ただただ闇雲に大人を経験する時。
②学生という枠組みの存在から、百人百様の社会人・・・、もっと言えば自分はなんなんだ?何になるんだ?という試行錯誤の時。
この2つの"時"が交錯するとき、登場人物たちが青い世界に不安定な足場の上で浮遊する。
ちょっと良いな、と思ったのは物語の舞台。
旧文学部棟という壊れかけた建物の地下(キューチカ)。そこにひっそり営業するバー「ディアハンツ」。
主人公の田辺朔は、バーのマスター(学生)夷川歩からマスターを引き継ぐ。
歩は言う。「人は人を救えないけど、場所は人を救える。ディアハンツを任せた」と。
場所がヒトを救う。良いなぁこのフレーズ!
ただ、う~ん。
自分が京大のような個性の塊のような大学には行ってないし、大学時代、学業以外は体育会テニス部に明け暮れていたので響かない世界でした。
テニスだけをやってどうやって単位を取るか!しか考えていなかった・・・。
平凡すぎる大学時代を過ごしたってことなんだろうな。今考えると寂しいわ。
ということで、大学生活の風景が描かれているだけでストーリーが見え難かった。ジジイには。
なので備忘録はこれにてさよなら。
Posted by ブクログ
『星に願いを、そして手を。』(2017年刊)の時には高校生だった著者が、この作品を上梓するころには京大院卒!時間が流れるのは早い。京都大学のキャンパスのある近辺が舞台となっており、作者にとってもこの作品は22歳の扉だったのかもしれないと思ったり。
Posted by ブクログ
大学生の堕落した感じ。それをかっこいいと思っている、尖っていることがよしとされるような、独特のあの感じがめちゃくちゃ解像度高めに描いてある。そしてそれに陶酔している感じも、、
Posted by ブクログ
若い方の作品はほんと素敵ねぇ、と思いながらどっぷり浸らせていただきました。
史上最年少ですばる新人賞を受賞された作家さんですが、意外に感じたのは、一回り以上違うはずの自分の学生時代とキャンパスライフの印象があまり変わらないこと。
え? 今の若い子って、こんなにハチャメチャやるの……?
もっとスマートでドライなのかと勝手に思っていましたが、お陰様で自分の青春の思い出に引き寄せて読み進めることができました。
ファム・ファタールの野宮さんと、乗り越えるべき壁としてそびえる夷川さん。
父親不在の機能不全家庭で育った野宮さんが人として未完成な若いうちに、彼女の中へ入りこんで懐柔していった(と主人公の田辺くんは見ている)夷川さんのグロテスクさが冴えていました。
彼のマッチョイズムから強烈な洗礼を受け、地下サークルのバー「ディアハンツ」を守り、そして彼からの卒業に成功した田辺くんにあっぱれと言いたいところですが、一方でそんな田辺くんも日岡さんを振り回しているところにリアリティを感じます。
人からの影響って、プラス面もマイナス面も渾然一体となって、ぐちゃぐちゃになって押し寄せてくることがありますね。
モラトリアム期であればなおのこと。
だからこそ臆病な田辺くんは、人との関わりでなく「場所」や「学問」を志向したのでしょう。
田辺くんは抑制的で控えめ、そして自覚的な青年ですが、日岡さんや北垣君に対しては割と鈍感というか、ナチュラルに傷つけている場面がありました。
そういう相手こそ大切にしてもらいたいなと、おばちゃん目線で感じてしまいます。
なんにせよ、みんな自分の生き方を真剣に見つめていてえらい!
若者を応援する気持ちがあふれてくる、素敵な小説でした。
京都という場の設定も素晴らしかったです。
Posted by ブクログ
7年前のデビュー作を読んで以来の筆者の作品。そうか、その後京大に進んだのか。いや、何人か京大卒知ってるけど、なんか京大生らしい話やなと感じる。ちょっとめんどくさいZ世代。でもなんか、昭和らしさを感じる、不思議