あらすじ
アメリカにおける福音派の巨大な存在感は、近年よく言及される。しかし、彼らはどのように影響力を拡大し、トランプ大統領の誕生や再選、あるいは政治的・文化的闘争に関係していったのか。本書は、第二次世界大戦後のアメリカの軌跡を、福音派とその背景にある終末論に着目して描き出す。そこからは大統領の政治姿勢はもとより、中絶や同性婚、人種差別、イスラエルとの関わりなど多くの論点が見えてくる。
まえがき
序 章 起源としての原理主義
第1章 「福音派の年」という転換点――一九五〇年代から七〇年代
1 原理主義者と福音派のはざまで
2「福音派の年」とカーター大統領
3 終末に生きる選ばれし者たち
第2章 目覚めた人々とレーガンの保守革命――一九八〇年代
1 政治的な目覚め
2 モラル・マジョリティの誕生
3 レーガン政権と福音派のせめぎ合い――保守革命の裏で
第3章 キリスト教連合と郊外への影響――一九九〇年代
1 パット・ロバートソンの政治戦略
2 フォーカス・オン・ザ・ファミリーと伝統的家族観
3 クリントンの信仰と六〇年代の精神
4 ウォルマートとメガチャーチの止まらぬ拡大
第4章 福音派の指導者としてのブッシュ――二〇〇〇年代
1 ボーン・アゲイン大統領とネオコンの思惑
2 九・一一と小説のなかの終末論
3 信仰の公共性
4 スキャンダラスな福音派と右派の失速
第5章 オバマ・ケアvs.ティーパーティー――二〇一〇年代前半
1 初の黒人大統領と福音派左派
2 オバマ・ケアと中絶問題
3 ティーパーティー運動
4 アメリカ建国偽史
5 高まる人種間の緊張
第6章 トランプとキリスト教ナショナリズム――二〇一〇年代後半~
1 白人とイスラエルの味方として
2 保守化する司法と中絶・同性婚問題
3 キリスト教国家と非宗教者
終 章 アメリカ社会と福音派のゆくえ
あとがき
主要参考文献
略年表
主要人名索引
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アメリカ福音派の歴史。福音派はたんなる宗教復興運動ではなく、南部南西部の白人男性文化の復興運動。少数派になり特権を失うこと、カウンターカルチャーに対する危機感。
・源流は、20年代から始まるDispensationalismー7つの時代区分があり、7番目は終末。バルフォア宣言によるユダヤ人のイスラエルへの帰還と第一次世界大戦は預言の成就に見えた。聖書を字句どおりには解釈しないリベラル神学への対抗としてのfundamentals。ラジオによる伝道。
・ビリー・グラハム 戦後の反共(共産主義者は悪魔)。原理主義を離れ世俗化し、資本家、共和党政権に接近。
・ジミー・カーター 南部バプティストの回心者だが政治的にはリベラルで、福音派をかえって政治的結束に向かわせた。
・リンゼイ 終末論は1000万部を超えるベストセラー。中近東がロシアに占拠され米・EU(アンチキリスト)と戦いロシアは敗北するもハルマゲドンで中国と最終戦争、キリストが再臨。
・レーガン 福音派が政治力を発揮しレーガンの勝利に貢献するが、レーガンは必ずしも福音派の政策をとらず。男女平等憲法修正条項、私立キリスト教学校(白人プロテスタントのみ)への補助金など。福音派の一部は神権政治を試行(「侍女の物語」)
・パット・ロバートソン「キリスト教連合」共和党との協同、・ドブソン「家族調査評議会」中絶・同性愛・フェミニズムへの対抗、・新興郊外住宅地の現代化したメガチャーチが新たなコミュニティ機能
・ブッシュJr 福音派の黄金時代。イラク戦争、新自由主義への対抗ー小さな政府と宗教団体を通じた慈善事業
・オバマ・ケアに対する福音派の反対は中絶・避妊の助長、個人の意思への連邦政府の介入
・トランプ 大使館のエルサレム移転は預言の成就。保守派・超保守派の最高裁判事任命ロー判決を否定するドブス判決と中絶禁止。暗殺未遂、弾劾、反トランプは悪魔によるもの。敵を作り徹底的に敲く。
・一方で21~37%は非宗教者。宗教右派への反発や反共=協会帰属の必要性がなくなったこと、SNSによる宗教体験ー非宗教者のうち無神論者は17%程度
Posted by ブクログ
アメリカにおけるキリスト教の歴史について。
“ホルムズ海峡の封鎖”や来る2026年の中間選挙を読み解きたく手に取りました。
キリスト教がいかにアメリカ政治と切り離せないかが理解できました。
著者は映画好きなのでしょうか。ところどころ映画のシーンが引用されてます。日本人には馴染みのない題材が少しとっつきやすくなります。
Posted by ブクログ
パレスチナ問題を考える書としてこの本を読んだ。イスラエルがアメリカを動かすためのロビー活動にキリスト教シオニストが大いに関わっているからだ。
わかったのは、キリスト教福音派がイスラエルを支える理由だ。理解するのは難しいが、自らの教義上イスラエルを必要としているようだ。
彼らは基本的にはアメリカが世俗的人間中心主義になることに強く反対して政治をコントロールしようとしていること。中絶、同性愛などを認めず古い価値観を制度として作り上げようとしてきたことだ。復古主義的な家族観と宗教的な保守主義のもとで生きるアメリカを望んで。敵をサタン・悪魔として民主主義と対立し、自らを正當化する方法は統一教會と瓜二つだと思う。
福音派は多くの派に分かれこの半世紀での変遷も激しいが、選挙などを通して大統領らと結びつき、歴史の歯車を逆回転させてきた。もともと教会を中心とした宗教活動だった彼らが政治がらみの表舞台に出てきたのは、50年前にジミー・カーターが自らを「ボーン・アゲイン(生まれ変わり)と公言したのがきっかけだという。カーター自身は穏健なリベラルだったというが福音派はこれを好機と捉えたわけだ。
今や白人福音派主義者の8割はトランプに投票した。
キリスト教ともっとも遠い世俗的快楽主義のトランプの支持母体となり、Qアノンとも結びつく。
ヘグセス国防長官などの福音派が配置され、アメリカの現状となった。
しかし、アメリカのキリスト教徒は大きく減り、白人福音派も5年間で23%から14.5%になっているそうだ。一方で増えているのは「非宗教者」で30%ほどもいるという。(注: 非宗教者=無神論者ではない)
アメリカも変わらざるを得ないのだ。
別の本で知ったが一番勢いのあるのはイスラム教で、
そう遠くない未来に信者数が世界一になる。
Posted by ブクログ
アメリカで巨大な影響力を誇る福音派。その福音派の歴史を概略している本書
独特の終末論的な世界観を持っていたが故に黎明期には政治と離れた距離を保っていたが、段々近づいていくことに。
さらに、キリスト教国であるはずのアメリカに無宗教者が増えてもいる現状。それによってさらに分断が激しくなっていくことに。
無宗教者が集団になることは難しいと考えると更に福音派とそれ以外といった形での分断が激しくなってしまうのではないだろうか。
Posted by ブクログ
福音派(原理主義)と言われる人たちがどのようにしてアメリカ社会に蔓延してきたかがよく分かった。オバマ政権から白人の怒りや鬱憤がたまってきていること。白人福音派の大多数はトランプを支持していること。福音派と議論すると自分たちの善以外は悪魔の仕業になるから、議論にならないこと。BLMに対して、福音派は非常に冷淡であることなど結構エグいな〜アメリカ社会と思った。
ラッシュドゥーニーがキリスト教復興のための布教から政治活動のための布教へと静かに舵取りをし、現在そうなっていることが一番印象にのこった。さらっと出てきてめちゃ大きな影響与えてるから影のアメリカ社会を舵取りをした人だと思う。
やはり、国の文化や歴史を知るのは面白い。
Posted by ブクログ
歴史的な起点から、政治に関わり、矛盾だらけで軋轢を生みまくる現状までが網羅的に書かれていた。なぜそんなふうになるのかという事情を少し理解しつつ、根深すぎてどうしょうもないという気分にもさせられた。
Posted by ブクログ
トランプ大統領が再選されたころから、福音派に対する関心が高まったように思う。時期を得た出版だが、決してジャーナリスティックでなく、学術的な著作だ。1920年代頃からの歴史と政治との交点が体系的に記されている。福音派とよばれているものには幾つもの会派があるので、内容はなかなか複雑で、完全には理解しきれなかった。
神の奇跡や聖書の無謬性を信じ、終末論を持ちだして自己主張をする人たち。それが『古きよきアメリカ』の美化につながるとき、人種や男女差別や中絶・同性婚問題と結びつき、政治を動かそうとする力がはたらく。それが既に1970年代には見られたというのは、ちょっとした驚きだったし、一神教の強さと柔軟性のなさを同時に感じてしまった。聖書に書かれた超自然や荒唐無稽にも見える終末論を信じる人たちが、事実と論理の上に成り立つ現代科学の最先端を行く国でその恩恵にあずかっていることに、アンバランスを感じた。この本を読んで、イスラエル政策を含めて現在の政権の政策の背景と、それが一定の支持を受ける現実が納得できた。
Posted by ブクログ
結局、崇高な理念や思想ってのは理解できる人が限られるから大勢を動かすにはトランプのはアメリカ至上主義みたいな分かりやすくてインパクトのあることを言うしかないんだなって思った。
よく分からずにトランプを支持する人達がいることもよく分かるし、結束するには外敵を作ることが重要なことも再確認した。
人々がしっかり考えられるなら争いは無くなるかもしれないけど、まあ無理だろうな。何も考えずに何となく信じたいものを信じる、そういう人たち全員に平等に権利を与えてる民主主義って正しいのかなと思った。
第1章 1950〜70年代
福音派の前身である原理主義者たちが使用した終末論はディスペンセーション主義といい、旧約聖書をキリスト教的解釈をせずそのまま読む、そのため終末はユダヤ教キリスト教問わず訪れる。
最初は少数派だったがラジオ黎明期にリスナーを多く獲得し(現代のネットで陰謀論が支持されるように)、その番組を守るためにワシントンに「全国福音派協会」を設立、福音派の由来となる。
ビリー・グラハムが先頭にたって広めていき、反共産主義とも重なりながらキリスト教信者も増やしていった。50年代の米国社会の課題にグラハムの語りがマッチし、終末論に備えていた側面も大きい。
リンゼイの『今は亡き大いなる地球』は終末論に関する予言の本、荒唐無稽な内容だがイスラエルの建国などもあり70年代に大ヒットする。
第2章 1980年代
ファルウェルがテレビ等を用いて原理主義を広めていく。聖書は、特定の人種への憎しみを教えていないが、人種隔離を推奨しているという。『創世記』を見ると様々な人種には異なった居住区が与えられており、これは神の秩序である。これを推し進めるのは人種差別と共産主義への恐れがあった。
合衆国が陥っている罪を5つあげた。中絶、同棲愛、ポルノ、神をも恐れぬ人間中心主義、壊れた家族。これらを変えるために政治への参加を呼びかけ、福音派と政治の結び付きが強まってきた。
福音派とは遠い存在だったレーガンは共産主義への敵対や行き場を失っていた福音派を取り込み、「MAGA」をフレーズとし、大統領となった。「古き良きアメリカ」という原理主義的価値観が政治的な強さをもった。「宗教円卓会議」という福音派の会合でレーガンは大敗するアメリカに必要なのは、世俗主義ではなく、「古き良き宗教」であり、「古き良き憲法」である、アメリカは「丘の上の街」であり、世界に光を照らさなければならないとスピーチし、聖書にこそ現代社会が抱えるあらゆる問題の答えがあると結ぶ。
実際に政権をとってからは中絶支持の女性を最高裁判事にしたり、宗教教育に関する法案を通せなかったり失望されることも多かった。
ファルウェルはモラルマジョリティを解散、ひとつの時代が終わった。
第3章 1990年代
父ブッシュの対抗馬だったパット・ロバートソンは政治戦略に長けた若者ラルフ・リードと共に「キリスト教連合」を作る。この団体が90年代の福音派と保守政治運動を牽引した。
選挙に勝つために世俗的になっていくこの団体に反発したのが全米人気三位のラジオ番組をもつジェームズ・ドブソン。彼は中絶禁止、同性愛は精神疾患、妻は家庭を守り婚前交渉はダメという厳格なスタンス、快楽を貪るカウンターカルチャーが社会を破壊すると考えていた。聖書が示す伝統的な家族観と男女の役割は健全な家族を築き、経済的な安定、文明全体を反映させる基盤となる。これを政治的に反映させるため「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」を設立。
リードとドブソンの団体が共和党の支持基盤となる。
この時に彼らと対立していたのがビル・クリントン。カウンターカルチャーの渦中にいるにも関わらず、聖書から縦横無尽に引用し、神の希望をかたり、イエスの赦しを説く。福音派にとっては冒涜的だった。
福音派の価値観をもつウォルマートの普及や、郊外に住む人を狙ったメガチャーチの増加など、福音派の影響力は高まっていった。
第4章 2000年代
子ブッシュの政権時にトランプに次ぐ福音派の盛り上がりを見せる。彼はイラク戦争を決断、その裏には「ネオ・コンサーヴァティブ」(新保守主義者)がいた。米国主導による自由主義的な世界の構築を目指す。ネオコンと福音派は思想的な共通点はほぼないが、利害の一致で手を組んでいく。それらを繋いだのが子ブッシュ、彼は福音派の熱心な信者だった。リチャード・ランドイラク戦争を「正戦」とし、支持した。内容はほとんど誤りだったが、これによって福音派がイラク戦争を支持し、ブッシュ政権の強力な支持基盤となった。
ネオコンは中東の民主化のため、福音派はキリスト教的終末観から、イスラエルへの支援を行う。
様々な人が福音派を推し進めていたがイラク戦争への対応から共和党は選挙で敗北する。新しい希望を求めて民主党のバラク・オバマが当選する。
第5章 2010年代前半
オバマのかかげる「希望」というフレーズに一部の福音派は距離を詰めていく。黒人教会は聖書を米国は黒人の苦しみから解釈されなければならない、イエスは苦しむものたちと共にいるからだ、と表した。黒人を差別する福音派含む白人協会は神の民を迫害する抑圧者であり、反キリストだという。
オバマは差別を容認する宗教右派も、公共圏からあらゆる宗教的要素を排除し道徳的基盤を壊しかねない進歩主義者たちもどちらも批判されるべきだという。また、熱心なキリスト教徒は共和党、あまり熱心ではない人達は民主党という傾向も変えるべく福音派を取り込んでいく。
貧困層も保険を使えるような「オバマ・ケア」という制度改革は困難を極める。反対派は、中絶や避妊を保証範囲に含む可能性があったことや個人の自由に連邦政府が介入することを懸念した。
法案通過後も、白人福音派を中心に反対運動は続く。ティーパーティー運動というボストン茶会事件に由来する反対運動も行われる。大型の景気対策や住宅ローン救済案は連邦政府の責務増加に繋がるという批判。しかしこの未曾有の経済危機や連邦政府の責務は、ブッシュ政権のイラク戦速や経済政策の負の遺産だった。
オバマの時代からアメリカの白人キリスト教徒の割合は50%を切り、福音派の努力にも関わらず宗教多様国になっていった。しかし、建国の理念はキリスト教では無かったか、白人の立場がどんどん低くなるのではないかという思いが高まっていった。デイヴィッド・バートンらはアメリカはキリスト教国である主張をしていく。
黒人と白人の対立は熾烈を極め、白人至上主義の考えをもつ福音派の圧倒的支持を集め、人種差別的な発言を繰り返す新大統領が誕生する。
第6章 2010年代後半
当初、トランプは中絶肯定や、性的に奔放な生活、ニューヨークの成功者、元民主党員など福音派からは蔑まれていた。しかし、福音派の普及に使えると考えるものもおり、支持されていく。
また、低所得の白人層には自国を強くし、職を奪う不法移民を追い出し、アメリカファーストを打ち出すトランプの主張がよく響いた。トランプ陣営のスティーブン・バノンはフランスの国民連合、ドイツのAfDなどから欧州のポピュリズム政党の戦術を学び、自らの優位性が失われると危機感を抱く白人層の支持を集めた。
当選後、大使館をエルサレムに移転しようとするも失敗。イスラエルとの結び付きを強めていく。アラブ諸国とイスラエルの和平構築を推進していく。これらによりイスラエルは入植によって土地を広げていき、2023年10月にハマスによる襲撃が起き、現在も戦争は続いている。
ドブス判決により南部の州を中心に一気に中絶禁止の州法が成立していく。
宗教信者が減っている主な理由はインターネットの普及である。白人福音派の減少は人口動態の変化が大きいが、近年問題になっているメガチャーチのリーダー、大教団の聖職者たちによる性加害とその隠蔽への批判も大きい。
終章
ビリー・グラハムの息子フランクリン・グラハムは福音派としてトランプとの親しく付き合う。
トランプ支持者たちにとって政治とは討議を中心とした民主的なプロセスで行われるものではなくなった。明確な善悪があり、善の背後には神が、悪の背後にはサタンがいる。敵の背後にはサタンがいるため、徹底的に叩くことができる、ここにアメリカ社会が分極化する鍵がある。
Posted by ブクログ
キリスト教の中でもプロテスタント派の人たちが集まった団体が福音派と理解。アメリカの労働階級の人たちの多くが属している。KKKなどの過激派も属している。これらの人々に支えられているのがトランプ大統領である。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教など宗教の教えから来る終末論があり、他の宗教が滅びない限り、自分達の生存はないのとしているようだ。よって、世界の争いごとが一向に収束しない。トランプは、これに輪をかけて突飛な政策を持ち出し強引に実行する。独善的でもないところが一層混沌さを深めている。
Posted by ブクログ
どうかしてしまった同盟国アメリカを理解するために読まねばと思いしばらく前に読み始めた。アメリカの歴史に疎い自分には、大統領の名前以外は馴染みがないカタカナの個人名や団体名が次々と出てくる上に時系列で語られる訳でもないため概要を把握するのもなかなか大変だったが、複雑な現実を理解する為には仕方ない。データも示してくれるがあくまでも叙述の中でなので図やグラフとして明示してくれたらもっと良かった。「マジでこんなの信じてるの?」と言いたくなるディスペンセーション主義や終末論、福音派が積極的に政治に関わるようになった経緯、ID理論、福音派と人種差別の関連、福音派はオバマケアの何を問題視したのか、色々知ることが出来た。
終章のまとめにおいて、対立する相手をサタンとみなして攻撃する福音派の善悪二元論は言論活動を通して合意や妥協点を見出す近代の自由民主主義に馴染まず、公共善を破壊すると結論づけている。アメリカとそれに追従する日本の未来は果てしなく暗い。
Posted by ブクログ
70年代以降、福音派がアメリカ政治に登場し、歴代大統領と結びつきながら影響力を拡大していく。
その過程と独特な世界観が、とても印象に残った。
宗教と政治の関係について、改めて考えさせられました。
Posted by ブクログ
アメリカ史に対する前提知識が全く無かったが、丁寧に背景も解説してくれたのでするすると読めた。
対共産主義の文脈で台頭した頃から今に至るまで、一貫して善悪二元論や勧善懲悪の価値判断を貫いているように見える福音派。多文化共生主義とか受け入れられないんだろうな。読んでいる間、寛容のパラドックスが頭をよぎる箇所が何度もあった。
やはりエンパシーを鍛えないと、他者との共生は本当にストレスフルで火種に満ちていて難しいな、と自戒も込めて。
福音派も一枚岩ではなく、政治参加のアプローチや掲げる政策についてすら、多少幅があるのだとわかったが、とはいえ対立思想を悪魔の所為だと主張するような層とはそもそも議論が成立しえない。そうなったら民主主義が成立しない。
白人男性至上主義の家父長的マッチョイズムとか盲目的宗教観の押し付けがましさとか、こんなものを古き”良き”アメリカなどとのたまう人たちが一定比率いるんなら、心底、アメリカに生まれなくてよかったと思う。(じゃあ日本のほうが良いのか、はわからない)
Posted by ブクログ
トランプ大統領の自国ファースト、独裁的な政策に疑問や憤り、恐れを感じていました。
本書を読む事で、宗教観と政治思想には想像していた以上に強い相関関係が存在する事に新鮮な驚きがありました。
日本人は、宗教観よりも倫理観を大事にしているという感覚があるのですが、そこにアメリカとの隔たり、違和感をを感じてしまう要因があるのではないかと思いました。
Posted by ブクログ
アメリカの政治と「福音派」と呼ばれるキリスト教の一派が、どのように絡み合って今のアメリカを動かしているのか、アメリカ建国の頃から第二次トランプ政権までを網羅した力作。これを読むと、トランプの荒唐無稽な行動の原理がわかる。理解できるかは別問題だが。
Posted by ブクログ
卒業した大学がプロテスタントで、当時週1のキリスト教学が必修だった。教授は年配の女性牧師で、自分は神の声を聞いたことにより教師の道に進んだと言っていた。私は「何らかの脳の作用による幻聴だろう、狂信的な先生だ」と解釈していたが、本書に出てくる「回心」というのがそれだとすれば、ブッシュもクリントンも同じような経験をしていて、キリスト教徒のアメリカ人にとっては特におかしなことではないどころかポジティブに受け取られるらしい。一般的な日本人の感覚とはかなりのズレがあるような気がする。
南部などの保守的な州では地動説や中絶、同性愛を認めない人がいるのは前々から知識として知っていたが、それはごく一部で、日本でも宗教的な理由で輸血を拒否する人がいるのと同じで主流派にはなり得ないと思っていた。年代的に、子どもの頃から強いアメリカを見て育ってきて、アメリカは日本より自由で豊かで先進的な国だとずっと思っていたけど、いつのまにかこれほど変質してしまっていたことをここ数年、特にトランプの2期目に入ってからは実感せざるを得ない。アメリカは極端から極端に走る国ってイメージがあるから、そのうちまたリベラルに振れる時代が来るのだろうか?
日本人はどうしても一神教に対して理解できない異質なもの、無意味な争いのもととなるものとして軽視したり宗教的な背景を無視しようとするところがあるけど、現在の世界情勢を理解する上でも宗教は避けて通れない重要な問題であり、知識として知っておくことは必要だと思った。
Posted by ブクログ
現代のアメリカを覆う深刻な社会的分断の背景にある宗教勢力「福音派」について、その前史としての1920年代から40年代にかけての原理主義運動から説き起こし、アメリカの社会や政治、文化に大きな影響を及ぼすようになっていった経緯をたどり、その実態を明らかにする。
本書は福音派というレンズを通したアメリカ現代政治史という感もあり、第2次トランプ政権となり混乱や分断が深まる今のアメリカを理解するのに有益な内容であった。
特に、「ディスペンセーション主義」という福音派に根ざす思想について知ったのは大きな学びだった。ディスペンセーション主義は、できる限り聖書の記述を文字通りの意味で読もうとする考え方で、それゆえにユダヤ民族を重視することとなるということで、福音派やそれが推す政治家がイスラエルを強く支持する背景が理解できた。
また、福音派が拡大し影響力を増していく各フェーズにおいて、ビリー・グラハム、ジェリー・ファルウェル、ラルフ・リードなど、キーパーソンとなるような人物がいたということも理解し、個人の持つ社会への影響力というものも改めて認識した。
主流的な福音派には人種主義や女性蔑視がはびこってきたということもよくわかったが、それは神の前の平等という自分が考えるキリスト教の根本精神とは大きく矛盾していると思うし、もし聖書解釈からそういうことが導き出されるというのなら、そんな人種差別等を生み出す神は酷い存在だなと思う。宗教のご都合主義的ないい加減さを感じた。
終末論的、二元論的な世界観を有する福音派は、対話を通して合意や妥協点を見出すという政治的なリベラリズムの前提を共有しておらず、その根幹を破壊する可能性を持つという著者の指摘については、重く受け止めた。本書を読んでも、現代の米国社会の分極化を押しとどめる処方箋はなかなか見出しがたいが、現状を正確に理解することは、そのような状況に対抗し、次への一歩を踏み出すことにつながるものだとは思う。
Posted by ブクログ
たとえクリスチャン(立ち位置によるけれでも)で、聖書に慣れ親しんでいても、原理主義というのはわかりずらいが、クリントンやオバマですら福音派を無視することができなかったのかと、驚かされることばかり。
健康保険制度を充実させたオバマケアにどうして共和党があれほど反対するのかと思っていたが、人口妊娠中絶を保険適用することが、原理主義者にとって「殺人」を容認することにつながり、受け入れられないとのこと。
この本を正しく理解するのに、私の知識が不足しているが、福音派にとってのイスラエルというものがどういうものかなど、アメリカで起こっている分断の底にあるものが、おぼろげながらわかった気がする。
親鸞やら日蓮やらが、当時の既存の仏教勢力と激しく対立した時代の話を、現代の先進国で見せつけられているような、不思議な気分で読んだ。
Posted by ブクログ
自由主義でフレンドリーで合理的、なんていう夢物語みたいなアメリカ人のイメージが吹っ飛んだ。なかなかの強烈な内容。建国以来キリスト教にがんじがらめに縛られて荒唐無稽な終末論への信奉と進化論の否定が当たり前みたいにある中であれだけの発展を遂げている科学や宇宙開発って。リベラルと宗教とのすごい矛盾を孕んだ国、アメリカ。揺り戻しを繰り返す社会政治を左右する福音派。福音派も一枚岩ではなくいろいろな考え方の人がいて、他の宗派も様々あって、信者と未信者の世界観は決して交わらないから人種、教育、同性愛や中絶などにおける認識の対立に終わりは見えず、移民、貧困などの社会問題に、峻厳な原理主義的姿勢で堕落した世俗に対してきた聖職者たちの性的腐敗などもうアメリカのカオスぶりに読んでて頭がこんがらがってきた。
世の中は生きづらいし、人の心は弱いから宗教ってのが必要必然なのはわかるけども。平和ボケの私、なんだかいろいろ怖くなってきた…
Posted by ブクログ
アメリカ政治と宗教(福音派)の結びつきの歴史について解説された書籍。アメリカがイラン攻撃に踏み切った今、この本の内容とトランプ大統領の言動が少し理解できた。先進的な国であるはずのアメリカがこれほど宗教的な考え方(進化論の否定など)に縛られていることがびっくりだった。若い世代は大きく変化していくだろうが、どのような国になっていくのか、世界もどのように変わっていくのか・・、自分もこの流れを見極めていかないといけないなと思った。
Posted by ブクログ
福音派(エヴァンゲリカルズ)の理解を通じて、建国以来キリスト教の影響を大きく受けているアメリカ合衆国。人工中絶や学校教育における進化論の扱い、イスラエルの支持などがアメリカ大統領選挙の争点になるのか?なぜアメリカは善悪二元論に基づいて覇権国家として行動するのか?そういった疑問が福音派とよばれる集団の影響を大いに受けているという現在のアメリカの抱える事情が理解できました。
Posted by ブクログ
アメリカ、特にトランプ氏の発想や、アメリカ社会がどこに向かおうとしているのかなどに漠とした不安を感じる昨今、福音派という言葉は聞いたことがあるが実態よくわからなかったものについて、もう少し知りたいと思い読んでみた。
もともとアメリカ自体に対して、関心が薄かったこともあり、出てくる人物なども自分の中で追いきれない人も多く、面白くはあるが読み進めるのは結構大変だった。
とはいえ、全く非宗教者の日本人である私の目からは、はてなマークだらけであった世の中の流れも、単に経済的とか地政学的なことだけでなく宗教的な部分も加味するとそういうことかと腑に落ちる部分も多かった。
また、もともとアメリカに対して宗教的な国だという印象は持っていたが、思っていた以上に個人的な倫理観とか救い以上の、政治的に絡む部分が多いことに驚かされた。
Posted by ブクログ
自分が理解出来ない考えであっても、その考えの存在自体は認めなければならない。
頭では理解出来ても感情が、体が拒絶してしまう。
福音派(特に原理主義が強い一派)に対してはどうしてもこういう思いを抱えてしまう。それは他の宗教や主義、政治体制等諸々の事象に対しても言える事だが。
話は逸れるが、2026年の衆院選は旧立憲と旧公明の拙速さが大きな蹉跌を生んだ。二党の思惑はともかく、「中道」の精神は「自分が理解出来ない考えであっても、その考えの存在自体は認めなければならない」事だと思うからだ。
HONBAKO堺本店にて購入。
Posted by ブクログ
歴史の流れを説明される中で米国の人口の1/4を占める福音派とはどんな人たちか見失ってしまいました。「まえがき」が超優秀なのでそれだけ読む方がわかりやすかったですw
福音派を把握していて成り立ちや影響力を知りたい人にはとても良い本ですが、福音派とはどんな人か知りたい人が読むと遭難します。2度読んでやっと内容を理解しました。
人種差別や女性蔑視には寛容。妊娠中絶と同性婚には反対。資本家贔屓。進化論は認めない。終末論を説きイスラエルを神が予言したユダヤ人のパレスチナ帰還の成就として応援する。信仰に目覚めたことを行動で表す戦う人たち。
私は宗教とは人生に善をもたらそうとするものだと思っていましたが、福音派は同じ信仰を持つ者以外はサタン、敵として攻撃するのにやぶさかではない取り扱い注意な人たちのようです。
米国で進化論を信じる人が2020年にやっと半数を超えたと知って、当たり前が当たり前でない世界があると知りました!教科書検定がない米国では概念の共有が難しい傾向にあります。
Posted by ブクログ
トランプが支持されているアメリカという国を理解するためには、アメリカで普及している宗教を知らねばならない。この本は気になっていたのであるが、しばらく買わないでいたのだが、トランプがイランを攻撃してメチャクチャなことを言ってるのを聴いてこの本を読むことにしました。全体的には読み物よりは研究論文的な文体でとっつきにくいのですが、我慢してじっくり読むと、現在のアメリカの精神風土がわかってくるように思えました。
アメリカにはキリスト教原理主義者が多いのはもちろんなのですが、1940年代以降は、そこから派生して聖書で言っていることを政治勢力として強まってきたのが「福音派」と呼ばれている勢力である。この勢力は終末論を信じていて、キリスト降臨やハルマゲドンを信じているのであるが、この勢力がアメリカ国民の25%を占めるというのだからびっくりである。
トランプはこの福音派から熱狂的に支持されているというのだから、どんなことを言っても、やってもまるで神に代わってトランプが戦っているとその支持者は思い込んでいる(トランプ信仰)というのだから恐ろしい。そもそも選挙に負けたのに、当選が盗まれたとして国会前のバリケードを破って多くの人が議場に殴り込むという現象は、このような背景を知らないと理解できない。
「トランプ支持者にとって政治とは、もはや討議を中心とした民主的なプロセスで行われるものではない。そこには明確な善悪があり、善の背後には神が、悪の背後にはサタンがいる。だからこそ敵を悪魔化し徹底的に叩くことが可能となる。ここにアメリカ社会が分裂する鍵がある」のだ。
アメリカのことは日本人の常識では理解できないし、常識を主張しても通用しない現実があるのだ。
Posted by ブクログ
アメリカの大まかな歴史がわかっていないから、珍紛漢紛になる部分があった。もう一回読み直そうとおもう。
私のアメリカの認識が
イギリスから後悔して来て、インディアンを駆逐して、アフリカ人を連れてきて奴隷にして、リンカーンが黒人を解放して、戦争して、9.11があって、オバマさんがいてトランプという認識。お粗末すぎ。
・福音派の中にもいろんな人がいて一枚岩ではない。
・福音派は白人男性の権力回復を望んでいる。
・イラン戦争をハルマゲドンだと考えるに至るストーリー。
人が増えれば増えるほど民主主義は難しくなるんだな…。
アメリカという国の分断は本当に大変。こんなの1人の人間で背負えないってば…。
今、トランプを弾劾したいという動きがある。
なぜアメリカは自分たちが決めた大統領を自分たちで下ろせないのかと思ったけど、
オバマ・ケアへの風当たりなどの様子を読むに、
一定の弾劾のやりにくさは残しておかないと、
何も決まらないし安定しないんだなというのは推測できた。
民主主義は本当に難しい。
すべての人が快適になることが民主主義じゃないんだろうな。
皆がちょっとずつ譲り合ってちょっとずつ迷惑してでも社会全体の幸福って言うことを
考える必要があるんだろうな。
でも狩猟民族の掟には、狩りすぎないようにしたり、驕り高ぶる人諫める決まりがあったりするから、
無理じゃないのでは…。
多様性を受け入れてこその民主主義なんだろう。
Posted by ブクログ
積読している本が引用されていたり、かつて読んだ本で知っていたことが出て来たり、という意味では興味深ったのだけれど、やはり宗教は難しい。どんなに理解しようとしても難しい…
Posted by ブクログ
一般成人日本人には、ほぼ理解できない世界。
宗教は大事だと思うし、必要なものだとは承知しているし、信仰を持っておられる方には大変失礼申し上げるのだが、大の大人が創造主とか罪を背負って死んだ人間が蘇って、終末には突然信じてくれる人間だけを引き上げるとか、そんなことを真面目に信じていることがどうにも理解できない。
それでいて、同じ宗教なのに考え方が違ってという。意味がわからない。
世間がそう言う信仰から離れていくのに危機感を持って、つながりは強固になり、信仰をこの世に実現するための政治と関わっていく。
政治家も、言っちゃ悪いが票のためなら約束しまっせてきな節操もない態度だし、それでも一旦当選するとなかなか約束も実現しないから宗教の方はまた戦術を変える。
結局元の信仰とはかなり違ったものになってしまっているところもあったりして、信じることが目的になっているような。
正しいから信じると言うより、信じているから正しいと言うような。
それが、政治を動かす、そんな国。
判んない世界。読んでてしんどくなって来た。
Posted by ブクログ
アメリカのあまり報道されない一面を詳しく書いている。宗教はなかなか外国人にはわかりにくく、特に日本人には荒唐無稽にしか思えないが、アメリカでは一大勢力であることが歴史的に書かれている。
この宗教に熱狂するアメリカと科学の先端を行くアメリカの両面性はどう理解すべきなのか?
世俗的なアメリカ人は福音派をどう思っているのかとか、福音派の人たちとはどういう生き方なのかなどを書いてあれば立体的に理解できたように思う。
また、イスラエルを福音派がなぜ特別視するのかについて、神の審判のための道具であって、ユダヤ人もキリスト教に改心しなければ救われないという考えというのは納得できた。