【感想・ネタバレ】福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会のレビュー

あらすじ

アメリカにおける福音派の巨大な存在感は、近年よく言及される。しかし、彼らはどのように影響力を拡大し、トランプ大統領の誕生や再選、あるいは政治的・文化的闘争に関係していったのか。本書は、第二次世界大戦後のアメリカの軌跡を、福音派とその背景にある終末論に着目して描き出す。そこからは大統領の政治姿勢はもとより、中絶や同性婚、人種差別、イスラエルとの関わりなど多くの論点が見えてくる。


まえがき

序 章 起源としての原理主義

第1章 「福音派の年」という転換点――一九五〇年代から七〇年代
1 原理主義者と福音派のはざまで
2「福音派の年」とカーター大統領
3 終末に生きる選ばれし者たち

第2章 目覚めた人々とレーガンの保守革命――一九八〇年代
1 政治的な目覚め
2 モラル・マジョリティの誕生
3 レーガン政権と福音派のせめぎ合い――保守革命の裏で

第3章 キリスト教連合と郊外への影響――一九九〇年代
1 パット・ロバートソンの政治戦略
2 フォーカス・オン・ザ・ファミリーと伝統的家族観
3 クリントンの信仰と六〇年代の精神
4 ウォルマートとメガチャーチの止まらぬ拡大

第4章 福音派の指導者としてのブッシュ――二〇〇〇年代
1 ボーン・アゲイン大統領とネオコンの思惑
2 九・一一と小説のなかの終末論
3 信仰の公共性
4 スキャンダラスな福音派と右派の失速

第5章 オバマ・ケアvs.ティーパーティー――二〇一〇年代前半
1 初の黒人大統領と福音派左派
2 オバマ・ケアと中絶問題
3 ティーパーティー運動
4 アメリカ建国偽史
5 高まる人種間の緊張

第6章 トランプとキリスト教ナショナリズム――二〇一〇年代後半~
1 白人とイスラエルの味方として
2 保守化する司法と中絶・同性婚問題
3 キリスト教国家と非宗教者

終 章 アメリカ社会と福音派のゆくえ

あとがき
主要参考文献
略年表
主要人名索引

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Posted by ブクログ

宗教と政治がいかに複雑に絡み合ってきたのか、福音派とはキリスト教のなかでどんな立ち位置なのかを知る本。非常に勉強になりました。いまのアメリカでなぜトランプが受け入れられているのか、日本人の感覚ではうまく理解できてなかったのですが、なるほど、キリスト教(この本でいうなら、アメリカ教ともいえる)的価値観が鍵だったとは。

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2026年09月06日

Posted by ブクログ

本書は、福音派という日本人には捉えにくい宗教勢力を、神学だけではなく政治との関係史という切り口から通時的に整理した、優れた入門書です。

トランプ現象を「突然の異常事態」と見るのではなく、半世紀以上続くアメリカ政治の流れの中に位置づける視座は、アメリカ政治、ひいては国際政治を理解するうえで大きな助けになります。

いまアメリカで起きていることを単なる「トランプ現象」として見るのではなく、その底にある宗教、歴史、喪失感、そして終末論まで視野を広げて考えるための、非常に有効な補助線を与えてくれます。

アメリカ政治のニュースをただ追うだけでなく、その底流まで理解したい人に、強くおすすめしたい一冊です。

【目次】
まえがき

序 章 起源としての原理主義

第1章 「福音派の年」という転換点――1950年代から70年代
1 原理主義者と福音派のはざまで
2「福音派の年」とカーター大統領
3 終末に生きる選ばれし者たち

第2章 目覚めた人々とレーガンの保守革命――1980年代
1 政治的な目覚め
2 モラル・マジョリティの誕生
3 レーガン政権と福音派のせめぎ合い――保守革命の裏で

第3章 キリスト教連合と郊外への影響――1990年代
1 パット・ロバートソンの政治戦略
2 フォーカス・オン・ザ・ファミリーと伝統的家族観
3 クリントンの信仰と六〇年代の精神
4 ウォルマートとメガチャーチの止まらぬ拡大

第4章 福音派の指導者としてのブッシュ――2000年代
1 ボーン・アゲイン大統領とネオコンの思惑
2 九・一一と小説のなかの終末論
3 信仰の公共性
4 スキャンダラスな福音派と右派の失速

第5章 オバマ・ケアvs.ティーパーティー――2010年代前半
1 初の黒人大統領と福音派左派
2 オバマ・ケアと中絶問題
3 ティーパーティー運動
4 アメリカ建国偽史
5 高まる人種間の緊張

第6章 トランプとキリスト教ナショナリズム――2010年代後半~
1 白人とイスラエルの味方として
2 保守化する司法と中絶・同性婚問題
3 キリスト教国家と非宗教者

終 章 アメリカ社会と福音派のゆくえ

あとがき
主要参考文献
略年表
主要人名索引

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2026年08月14日

Posted by ブクログ

福音派によるトランプ大統領の支援は、数十年に及ぶキリスト教原理主義の葛藤の一つの結実なのだとわかった。
原理主義というなら、ぜひ隣人愛を実践してほしいところだが、白人の社会的地位の失墜が、都合の良い情報ばかりを信じてしまうのだろう。
また、冷戦期において、キリスト教信仰が反共の証であるという点も興味深い。
乱暴ではあるが、自民党と勝共連合との関係もダブる。
信仰は、自己都合ではなく、理性によるべきだと改めて感じた。
そして、振り子のように振れながら、イデオロギー、そして社会全体がより平和に向けて歩み続けることを祈る。

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2026年08月09日

Posted by ブクログ

返却期限があったのでとりあえず流し読みのみ
しかし、福音派の成り立ちからどのように力をつけてきたのか、ひいてはアメリカと言う国の深い部分に触れることができる良書。
再読必須。

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2026年08月03日

Posted by ブクログ

⭐️5.0

めちゃくちゃ面白かった。

福音派はトランプ政権で台頭したものだと思っていたが、その歴史は想像以上に古く、アメリカというキリスト教国においても異端視されていた一宗派が、いかにして政治と結び付き、社会に浸透していったのかを、時代ごとの背景とともにわかりやすくまとめられており、一気に読み終えてしまった。

本書を通じて、アメリカ人にとってキリスト教がいかに社会や価値観の土台となっているのかを改めて実感した。また、日本人にはあまり馴染みのない南部地域の実態にも驚かされた。例えば、つい最近まで進化論の教育に否定的な州があったという話などは、世界の盟主というイメージを抱いていたアメリカとのギャップを強く感じた。これまでの見方が大きく変わる一冊だった。

ニュースだけでは見えない「背景」を知ることの大切さを改めて実感。世界を見る解像度が一段上がる新書。

著者がYouTubeで紹介している、アメリカのB面部分の実態とあわせて見ると、さらに面白い。




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2026年08月01日

Posted by ブクログ

 キリスト教「福音派」とはなにか。宗教やキリスト教の理解が浅い私にとって、2025年4月21日にNHKのバタフライエフェクトで「“神の国”アメリカ もうひとつの顔」を繰り返し視聴し、アメリカの近現代史にキリスト教にも福音派が存在し、人種差別撤廃や女性解放などに異を唱え、共和党の岩盤支持層となり、政治、社会、戦争等を別の視点で捉える機会となった。自由の国アメリカ、アメリカンドリームなど、アメリカを肯定的に捉える日本の言説とは裏腹に、差別・排外主義が跋扈するアメリカが見えて来た。本書では、アメリカの近現代史を縦軸に、キリスト教原理主義を横軸に膨大な資料から歴史考証する。第2次世界大戦後のアメリカと1976年が福音派元年と言われる動向を交渉する。1980年代以降、レーガンの保守革命、福音派の指導者としてのブッシュ、オバマ・ケアとティーパーティーの対立、トランプとキリスト教ナショナリズムを追い、アメリカ社会と福音派の行方を考証する。終末論が引き継がれ、宗教右派は超大国アメリカに何をもたらしたのか。人種差別、中絶と同性婚問題、イスラエルとの関係など、フェミニズムとジェンダー平等に対する近年の激しいバックラッシュ(揺り戻し)の視点からも、本書は重厚な書籍となっている。

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2026年07月23日

Posted by ブクログ

トランプ政権の背景に福音派というのはよく聞くが、それって何を骨太に解説してくれる新書。なぜトランプが憎悪に満ちた政権になるのかがわかるような気がする。

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2026年07月20日

Posted by ブクログ

面白かった。
福音派が主張を強めているのは中流の白人が相対的に貧しくなっているのも原因になっていて、だからこそ希望(Make America Great Again)を謳うトランプが支持されるのだと。日本における選挙戦のアジェンダ設定も同じようなところがある気がする(トランプ戦略を参考にした日本人ファーストや、日本列島を強く豊かになど)自国民が貧しくなるとアイデンティティを取り戻したいという欲求が強まるんだな。。

終章での福音派は対立する相手を悪魔やサタンの支配下にあるとみなす傾向があるため、妥協が困難となる。結果として政治的なリベラリズムに不可欠な対話は機能不全に陥る。という考察が面白かった。この前提に立つとアメリカ社会の分断は収まることがなさそうに感じてしまった。

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2026年06月27日

Posted by ブクログ

米国が繁栄した1920年代のキリスト教の多極化に対して Fundamentalist が台頭し、やがてEvangelist へとつながっていく

終末論に目を奪われ過ぎるといけない

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2026年06月17日

Posted by ブクログ

『裂け目』の読書会で。歴史苦手なのもありこういう新書はなかなか手に取らないのだが、めちゃくちゃ濃密な内容で楽しく読めた。個人的には20年代の文化も60年代の文化も虚しさという点で共通していて好きなのだが、福音派の視点から見ると異なるらしい。
『インザメガチャーチ』を読んだばかりなので「教団」としてのチャーチというあり方にはそんなに抵抗はないが、著者が鋭く指摘していた通り、教義よりも他者を抑圧するための道具になっているのはいただけない点。

・ディスペンセーション主義(聖書の記述を文字通り読もうとする)
・メディアを巧みに利用した
・中絶反対派の展開する論理が現在左派が掲げるものと似ていた(胎児を人と認めないなら障害者も…)
・ウォルマートで働く女性たちは生き延びるために伝統的な女性像に依拠した
・ブッシュ「召し」でイラク戦争したのマジ?
・福音派のイスラエルへの熱意はユダヤ民族の繁栄を求めてのものではなく、携挙とイエスの再臨のための鍵でしかない
・犬笛としての「法と秩序」というスローガン 
・カコフォニー(不快音)
・権力の意志のためなら信念を容易に曲げるという悪徳
・福音派の影響力は数の減少以上に構造的
・秋波(流し目)

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2026年06月15日

Posted by ブクログ

著作者 加藤善之
発行者 中央公論新社
近年、アメリカの政治や社会において圧倒的な存在感を放ちながらも、日本ではその実態が十分に理解されていない「福音派」に焦点を当てた一冊です。独特の宗教的世界観を持つ彼らが、いかにして勢力を拡大し、現代アメリカの激しい政治的・文化的闘争や大統領選に関与するに至ったのかを、第二次世界大戦後の歴史的軌跡から紐解いています。

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2026年09月03日

Posted by ブクログ

福音派についてのみならず、宗教がいかにアメリカ政治と結びつき、そして政治と相互に影響しあっていたかということがよくわかる本でした。あと書きの最後の「米国と言う不思議な国へ送り出してくれた。父と母へ本性を捧げる。」ていうのが印象的でした。確かにアメリカは不思議な国なんですね。

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2026年09月02日

Posted by ブクログ

現在の科学文明を牽引しているアメリカであるが、宗教国家という側面があり、その点を理解しておかないと、アメリカの行動原理は理解できない。
未だに進化論を信じていない人が一定数存在するというとはとても驚き。
タイトルになっている福音派は人口の25%を占め、終末論を信じており、イスラエルの地にユダヤ人国家が建設されるのは、終末に向けて必要なステップであるため、アメリカとイスラエルの強固な関係性が維持されているらしい。そもそも、ユダヤ教とキリスト教で異なる宗教なのに、なぜこれほどまでにイスラエルを支持するのか、その裏にはこのような宗教的なロジックがあるという新たな視点を与えてくれる本でした。

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2026年08月31日

Posted by ブクログ

「福音派」という宗教右派が、どのようにしてアメリカで政治的な影響力を持つようになったのか、その歴史がわかりやすくまとめられていた。また、キリスト教について詳しくなくても理解できるよう、大まかな流れを中心に書かれている点は読みやすいのではないだろうか。
一方で、本書の目的が歴史の流れを示すことにあるため、宗派ごとの違いなどはあえて大きく括られている。そこをより詳しく知りたい人には、少し物足りなく感じられるかもしれない。

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2026年08月30日

Posted by ブクログ

冷戦や公民権運動、ベトナム戦争反対運動、多文化主義にグローバル化…と、社会の変化による白人達の不安を啜って力を付けてきたキリスト教原理主義の歴史を学べた。ただ、福音派の主要人物と歴代大統領との関わりにフォーカスしている為、福音派以外のところでアメリカ社会や世論がどう変わって行ったのかがアメリカ近現代史の基礎知識のない自分にはちょっと分かりづらかった。
国会を襲ったり、差別を広げたり指導者達の不祥事が多過ぎたり、といった理由で福音派自体は減少傾向だと書かれていたのは良かった。とはいえ福音派は対立する人をサタンと見做すので対話が成り立たないって…民主主義に向かなさ過ぎて厄介だなぁ

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2026年08月19日

Posted by ブクログ

話題の書だが時機を失した頃合いのようでいてアメリカの動乱は変わらず、政治・宗教・歴史の多様な側面を新書としては骨太な密度でまとめられている。再読してようやくといったところだが、昨今の情勢以外にも過去のアメリカ国内の動向の中に福音派の影響が随所に垣間見られることがわかる。

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2026年08月15日

Posted by ブクログ

日本の報道では「福音派=トランプ支持」のように単純化されがちだけれど、実際には
奴隷制を支持した人も反対した人もいたり、
公民権運動に協力した人も抵抗した人もいる
また、環境問題に積極的な福音派も存在する。
つまり、福音派は巨大な宗教運動であって、
その内部には多様な流れがある。
それでもなお、「聖書を絶対的権威とみなす」、「個人の回心を重視する」、「福音を広める使命を持つ」という共通点があり、その共通点が政治的動員力につながっている、という構図が見えてきて面白かった。

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2026年08月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

様々な人物が登場し、論文のよう。
時に追うのが難しかった

宗教と政治が複雑に絡み合い、激流を作り出している今だからこそ、それがほんの小さな伏流だった時代を検証 p.291

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2026年07月26日

Posted by ブクログ

【本を読もうと思った理由】
イラン戦争を見て、アメリカ政治に興味をもったから。なぜこんなことが起こるのか、トランプのパーソナリティだけでは説明できないのでは、と思ったから。

【本の感想】
 キリスト教や福音派のことは、元々ほとんど知らなかったが、本書を読んでその理由が、あまりに多様で一緒くたにできないから、だったということがわかった。アメリカ国内だけでも、宗派、世俗性、人種、性別等々、それぞれの人にとっての捉え方があり、外から見えるのは、常にある側面でしかないのだと理解した。さらに、キリスト教者の中でも、信仰することと教会に属することは異なっていることも、本書で初めて知ることができた。
 表面的な感想だが、終末論と日本のええじゃないかに近いものを感じた。20世紀末における、宮台真司の「終わりなき日常を生きろ」も同じだと思う(未読だけど)。何かが苦しくて終わりが見えないとき、世の中が少しずつ悪くなっていくと感じるとき、人間は、破壊的な出来事にリセットしてもらいたい、という欲求を持つのかもしれない。でも、実際にそんなことが起こるともっと苦しくなるし、それでも明日はやってきてしまう。

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2026年07月24日

Posted by ブクログ

アメリカ社会の背景。トランプ政権のある意味胡散臭い正体をキリスト教福音派の視点から説明。

これは自分には全く知らない世界、新しい視点であった。ヒラリー・クリントンの敗北からトランプ大統領の行動。自分にはまだ消化しきれてない部分がある。
選挙で選ばれた大統領。福音派の支持。
本書で答え合わせ。

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2026年07月05日

Posted by ブクログ

アメリカの選挙のニュースを見ているとかならず出てくる「福音派」。名前は知っているけど、結局どういう人たちで、なぜあんなに政治を動かせるのか、自分はずっとよくわかっていなかった。この本でようやく腑に落ちた。

ざっくり言うと、聖書を字義どおりに受け止める信仰と、世界の終わりをめぐる終末論が核にあって、それが選挙や外交みたいな現実の政治とどう結びついてきたのかを、歴史をたどりながら整理してくれる。トランプ支持に至る流れも、ここまで背景から丁寧に説明されると見え方が変わる。

いちばん面白かったのは、福音派をひとくくりの保守集団として扱っていないところ。中身はけっこうバラバラで、副題の「引き裂かれる」はむしろ彼ら自身のことなんだと気づかされた。終末論という一見遠い信念が、イスラエル支持みたいな現実の判断を実際に動かしているという話は、正直ぞっとした。

自分とは縁遠い宗教の話だと思って読み始めたのに、読み終わると「人は何を信じているかで動く」という、もっと普遍的な話として残った。違う価値観の人を「よくわからない人」で片づけないでおこう、と思えた。

アメリカ政治や国際ニュースの「なんで?」をもう一段深く知りたい人に。新書大賞2026で3位に入った一冊でもある。

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2026年06月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

キリスト教の終末論は、十字架の上で死んだイエスは3日目に復活しており、現在は神の右に座し、いつの日か「生者と死者を裁くため」に再臨する。特に米の福音派は再臨が近いと信じ、自らを神の側に立つ善の力とみなすことで、世俗化や道徳的退廃といった悪に立ち向かう。この悪はサタンや悪魔などの実体を持った悪で霊的な戦いでもある。聖書の本文の成立過程や著者や編集の歴史等を批判的に分析する「高等批評」。神の軌跡や誤りなき言葉としての聖書を信じ、進化論や高等批評はもちろん、異端的な宗派を批判する保守的なプロテスタントを「原理主義」、つまり「ファンダメンタリズム」という。「ディスぺンセーション主義」とはできる限り聖書の記述を文字通りン意味で読もうとする解釈の方法。これによると、聖書に記されている歴史は、7つの異なった「体制(ディスペンセーション)に分けられており、ユダヤ民族の体制は5番目、イエスは6番目。最後の7番目の「体制」が終わりの始まりで、キリスト教徒は空中に「携挙」され、地上に残された未信者たちは、戦争や基金の政変による苦しみの時を過ごす。さらに地上を治める「反キリスト」という悪魔的な支配者が現れ、キリストが再臨すると、この反キリストとの「最終戦争(ハルマゲドン)」を戦う。この戦争に勝利したイエスは千年王国を築き、新しいエルサレムに王座を据える。イスラエル建国をはじめとする中東情勢がハルマゲドンへの道。50年代の米国宗教復興は、共産主義の脅威と迫りくるアポカリプス、つまり核戦争による世界の終わりを前に、神への悔い改めを求めた結果。共産主義の脅威に対する汎プロテスタント的な市民宗教的な活動(教会に通わなければ非国民の疑いをかけられる)。60年代は進歩的なリベラリズムが席巻し、公立学校での祈りや聖書朗読が禁止され、原理主義者たちに危機感。キリスト教系私立学校の増加。ここで自らの考える自由の中で人種差別を継続させ、進化論や高等批評を批判したり世俗的人間主義を悪魔の教えとしたいがため、政治に参加する必要。かつて中絶問題はカトリックがリードしていたが、プロテスタントは個人的選択の問題としていた。福音派は教育とテレビ放送を巧みに活用。政権と近づいたり離れたりしながら政治に近づいていく。繁栄したいずれの文明も性的に厳格な立場から始まり、性的な自由が蔓延することで滅んでいく。その理由は、性的なエネルギーを抑制すると経済の生産性は上がり、反対に自由にセックスが行われると生産性が落ち、経済が衰退し、文明が滅ぶ。資本主義を成り立たせる倫理観とは、世俗内禁欲、つまり消費や快楽をできるだけ抑えることで経済的生産性や投資効率を上げること。だから、放縦なセックスや中絶や同性愛を消費主義的な浪費として批判。クリントン大統領のホワイトハウスに聖職者たちを集めての懺悔。「悔い改め」「変わろうとする決意」の表明は国民への印象操作だという批判も一部あったが、このおかげで支持率を維持。メガチャーチは、行政や私企業では満たせない人々の必要、すなわち他人とつながる欲求を満たす可能性。ウォルマートとメガチャーチ。レーガンとブッシュとの接近。進化論を支持する米国人のが54%の多数派になったのは2019年。米国メディアの政治的・社会的立場での細分化。そして、SNSの台頭とアルゴリズムの進化は建設的な批判を遠ざけた。そして、教育。「キリスト教国アメリカ」のビジョンによる教科書。大部分の福音派は人種差別をあくまで個人の道徳的な問題とみなし、貧困や教育や福祉など社会の構造的な問題として扱わない。「Make America Great Again」はレーガンのフレーズだが、トランプが2012に商標登録。今日のキリスト教ナショナリズムは、社会的影響力の喪失への危機感と既得権益を奪われつつあるという被害者意識に基づいてた恐れと怨恨。キリスト教シオニスト。トランプ信仰は大衆化された終末論。多方面からの攻撃をものともしないトランプの背後には闇の力に立ち向かう神の恩寵があると信じる。善悪論の下で敵を悪魔化。アメリカ社会の分極化。世俗的人間中心主義は敵であり、失われつつあった白人男性の特権を再度アメリカ社会に打ち立てることが重要で、人間の完全なる平等を目指す多様な社会という理想へは反対する。白人福音派人種主義。米国文化のキリスト教化を目指す福音派と、リベラルで進歩主義的なカウンターカルチャー勢との対立は先鋭化し、米国社会の分断や分極化は深まる。政治と宗教の境界線が曖昧となることで、権力者への忠誠とその敵への攻撃が神の意志への服従と混同され、無批判な権威主義を涵養する危険性が高まっている。

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2026年06月25日

Posted by ブクログ

特に前半は知らない人物の名前ばかりで読みづらかったが、中盤でクリントンやブッシュの名が出てきて、ようやく頭がついてきた。読み終えて、つくづくアメリカの現状と福音派の影響は切り離せないのだなと思った。オバマケアが骨抜きにされたり、トランプが戦争を始めた理由に大きく関わるのが福音派。アメリカという国を理解する上で読んでおいた方が良い本だと思う。

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2026年06月24日

Posted by ブクログ

トランプがあれほど熱狂的に支持される理由がずっとわからなかった。その背景にキリスト教福音派の存在があると知ってから、両者の関係性が気になり本書を手に取った。
読んでみての率直な感想は、"白人としての権力"を手放したくない人々が根強く存在し、自分たちの生活や経済的な閉塞感の原因を白人以外に求めているということだ。そこに都合のよい物語性を与え、"信仰"として堂々と掲げられるものとして機能しているのが"福音派"なのではないかと思った。
宗教と社会の関係という観点で特に印象的だったのは、人工妊娠中絶や同性愛をはじめとする性的マイノリティへの拒否感についての記述だ。それらは福音派の教義的な問題というよりも、人種差別が公には許されなくなった時代に、権力者たちが支持者へのアピールとして掲げるようになった代替的な"脅威"だという。正直、呆れるほかなかった。
さらに厄介なのは、福音派が妥協点を見出そうとしないことだ。終末論的な世界観のなかで対立する相手をサタンや悪魔の手先とみなす傾向があり、話し合いを通じて折り合いをつけるというアプローチ自体が成立しにくい。政治的なイシューはただただ議論を重ね、妥協点を見つけながら都度改善していくほかないはずなのに、彼らの信仰する物語のなかでは相手が簡単に非人間化されてしまう。どう対話すればいいのか、正直途方に暮れる。
宗教は本来、人の救いや共同体の絆のためにあるはずだ。しかしその"信仰"が差別や排除の隠れ蓑として機能し、対話の回路さえも閉ざしてしまうとすれば、それはもはや宗教の問題ではなく、民主主義の問題だと感じた。日本にいる私にとっても、無関係とは言いきれない。

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2026年06月20日

Posted by ブクログ

歴史を踏まえてここまで書かれているのはすごい。今までの民主主義からのテイクオフというのは当たってそう。

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2026年06月18日

Posted by ブクログ

「できる限り聖書の記述を文字通りの意味で読もうとする解釈の方法。旧約聖書の預言や約束は、イエスの到来やキリスト教徒達の存在によって成就されたのではなく、まだ成就されていないことになる。したがって、ユダヤ民族も、キリスト教徒と同様にいつの日か神の約束に与れる」というデイスペンレーション主義、そこから解釈される終末論、善悪二元論を特徴とする福音派がどのようにアメリカ社会に浸透し、歴代政権に関与していったのかを描いた本。

黒人差別の根の深さ、政治とキリスト教の緊密さ、進化論を教える事を禁じる州がある程の以上な保守性など、日本人の理解の外にあるアメリカの姿を知ることができた。

善悪二元論に立脚する福音派は他の考えや価値観との相互理解や合意形成に至らない。正にトランプ大統領の行動そのものである。福音派の白人は減少傾向にあるが、その価値観や手法が現在の政治的・社会的な運動の中に確かな足跡を残しているという。
今のアメリカの福音派の活動や影響は、マイノリティとなりつつある保守的な白人キリスト教徒の最後の足掻きである事を信じたい。

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2026年05月23日

Posted by ブクログ

なぜトランプが福音派を重要視しているかの理解を深めるのに適した一冊。福音派はプロテスタントの一部であり、古くから米国の重要基盤として政権に多くの影響を及ぼしている。強力なリーダーにより支持政権をバックアップし、1億もの選挙権を得ることができるためアメリカのリーダーたちは言葉巧みに彼らを利用していたし、彼らも政策に影響を与え続けてきた。人種差別・中絶問題・イスラエルとの関係など、福音派の意見が組み込まれている。印象的だったのはドブソンによる中絶反対の考えであり、自由奔放な性を可能にすると文明として滅ぶため、それを防ぐための中絶禁止という考え方はなぜ中絶反対をしているのかの主張に対して、理解できた。
福音派という存在を理解するためにおすすめの一冊。

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2026年09月13日

Posted by ブクログ

アメリカで勢力を拡大する
「福音派」とは何か。
その政治との関わりを解き明かす。

米国では人口の25%近くを
占めるとされる福音派。
その誕生と歴史を追った労作。

現在、トランプ政権への影響力が
大きいとされる福音派は
どうして生まれたのか。

まずは著者による
福音派の定義から。
「神の言葉としての聖書、個人的な回心体験、
救いの条件としてのキリストへの信仰、
そして布教を重視する、
複数の教団、協会、個人からなる
宗派の壁を超えた宗教集団であり、運動」とする。

実際に福音派と名乗り出したのは1940年代で、
強力な政治勢力として台頭したのは
70年代後半だった、そうだ。

福音派が台頭した背景には、
60年代以降の一連の社会変化がある。
公教育の世俗化、
公民権運動やフェミニズムが掲げた自由と平等の理念、
さらには性的規範の変容やドラッグ文化の拡大。
こうした変化が米国南部・南西部の
白人プロテスタント社会に根付いていた
伝統的な価値観を根底から揺るがした。
そこで浮上してきたのが終末論である。

もっと端的に言えば。
福音派とは聖書至上主義で
最後の審判が起こり、イエスの再臨が近いと信じ、
世俗化や道徳的退廃という悪と戦う。

その戦うべき悪は、
人工中絶であり、
進化論であり、
白人私立学校への抑圧であり、
共産主義であり、
エルサレム王国成立(つまりはイスラエルのヨルダン西地区進出)への妨害であり、
最近では黒人や有色人種の地位向上である。

そもそもは1910~1915年に
神学モダニズムに対抗して、
原理主義、ディスペンセーション主義が台頭する。
その後、1942年に原理主義者たちは
「全国福音派協会」というロビー団体を立ち上げる。
ここから福音派が始まった。

そして。
福音派は自らの信条を実現すべく、
政治に、もっと言えば、大統領に接近していく。

リチャード・ニクソンとビリー・グラハム。
ロナルド・レーガンとジェリー・ファルウェル。
ジョージ・H・W・ブッシュとパット・ロバートソン。
ジョージ・W・ブッシュとリチャード・ランド。
ドナルド・トランプとラルフ・リード。

歴代大統領の横には福音派がいた。

福音派がロビー勢力として力をつけていくに連れ、
共和党の大統領候補者が
福音派に近づいていく構図もある。

そして、現在。
思想的にはもっとも近い
トランプ大横領と福音派は蜜月のように思える。

福音派内部では
いわゆる白人プロテスタント主義者の伝統的価値観に立つ
中年・高齢白人男性が主流を占めており、
主にトランプ支持の基盤となっているが、
若い世代や女性、黒人など白人以外の人種も
一定程度存在し、その人々は
違う動きを模索している様相もあるようだ。

なぜ米国では中絶反対の声が上がるのか。
どうして進化論を否定する人がいるのか。
イスラエルを支持する層がいるのか。

その背景としての
福音派の理解は、
大変に興味深い内容だった。

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2026年08月23日

Posted by ブクログ

アメリカ社会や政治は実は宗教が密接に絡んでいたということを、福音派という宗派の視点で解説してる本でした。

キリスト教から独自の発展をした福音派がいまやここまで政治に大きな影響力を持っているとは意外でした。

日本でもなんでこの施策や法律って進まないのかなー?と疑問に思う点も、アメリカの場合は宗教的な価値観や立場を持った権力者が絡んでいるんだと理解しました。

とてつもない知識量でついていけない部分があったので、もう少しアメリカについて勉強(笑)してから再読するのもありかなと。

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2026年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

序章  起源としての原理主義
第1章 「福音派の年」という転換点ー1950年代から70年代
第2章 目覚めた人々とレーガンの保守革命ー1980年代
第3章 キリスト教連合と郊外への影響ー1990年代
第4章 福音派の指導者としてのブッシュー2000年代
第5章 オバマ・ケア vs. ティーパーティー2010年代前半
第6章 トランプとキリスト教ナショナリズムー2010年代後半~
終章   アメリカ社会と福音派のゆくえ

福音派にも色々あって一枚岩ではないのがわかったが、
”終末論的な世界観”、
”対立する相手をサタンや悪魔の支配下とみなす・善悪二元論”.........。
宗教観は個人的・センシティブなことではありますが理解することは難しいですね。
「八百万の神」を信じる方が気持ちが楽な気がします。

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2026年07月05日

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