あらすじ
高校入学式の朝、荒谷伊澄は駅のホームでひったくり犯を捕まえた。その際に、犯人の前に出て足止めをしようとしたのが、車いすに乗った少女だった。その後の事情聴取で判明したのだが、渡辺六花というその少女も、伊澄と同じ高校の新入生だった。弁が立ち気の強い六花に、伊澄はヤな女だな、と感じたのだが……? 夢を追い続けられなくなった少年と少女の挫折と再生の恋物語!
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Posted by ブクログ
本当に読んで良かった。大切にしたい言葉とたくさん出会えた。
何に対しても無関心で、閉じこもって生きていると、無駄に傷ついたり、疲れたりしなくて楽だなと思える。でも、きっと自分のことも人のことも好きになれないんだと思う。伊澄が六花と出会って、刺激を受けて、どんどんとその世界が広がっていく。傷つくことも面倒なことも増えるけれど、一人では感じられない感情や自分の知らない世界とたくさん出会うことができる。そしてそのことを、色褪せていた世界がカラフルになった、と表現するのが、とても素敵だと思った。
個人的には、矢地先生の差別についての話がかなり心に残った。差別って本当に難しい。差別が駄目だということは幼い頃から何度も聞いてきたし、分かっている。では、差別って一体何なのだろうと何度も考えた。でも、きっと明確な答えはない。だからこそ、伊澄の「誰かが犠牲になってることを『仕方ない』で済ませようとするのが差別なんじゃないか」という言葉、矢地先生の「相手を何とかわかろうとする意志を、手放したときに始まるもの」という言葉のように、差別を人の感情の小さな変化で表現した言葉は、とてもしっくりきた。
世界にはいろいろな人がいて、運命を変えるような人との出会いもあれば、きっと分かり合えない人との出会いもある。人と関わることは複雑で、面倒で、怖いと感じることもある。でも、相手をわかろうとすること、自分とは違うたくさんの人がいると知ること、常に目の前にいる人の気持ちを想像すること。他人と分かりあうなんて綺麗事なのかもしれない。でも私は、これらをずっと心に抱きながら、人と向き合うことを諦めずに生きていきたい。
Posted by ブクログ
カフネの余韻で阿部作品。高校入学式の朝、荒谷伊澄は駅のホームでの激走でひったくり犯を捕まえた。その際同じ高校の車椅子女性が犯人に果敢に突進した。それがヒロイン渡辺六花。この2人は同級生かつ同じクラス。勝気な六花に対し、伊澄は嫌な印象を持つ。六花は病気で車椅子生活に。伊澄は短距離走で活躍していたが、同級生とのアクシデントで陸上競技が絶望となる。両者の背負った境遇、しかし六花はある程度の覚悟をもって生きている。差別って何か?相手を見放すこと、相手の苦痛に対する想像力の欠如。担任・矢地の言葉が突き刺さった。⑤
Posted by ブクログ
怪我で陸上を辞めて無為な高校生活を望む伊澄と脊髄腫瘍で車椅子ユーザーとなった六花の出会いから始まる物語。伊澄やクラスメイトたちが六花との関わり合いの中で障害とは何か、差別とは何かと言った普遍的でありながら個別性を内包した問題に対して悩みながら向き合って成長していく姿が清々しい。頼りなさげだった担任教師もいつの間にか立派になっていた(笑)高一男子とは思えないほどしっかりしている伊澄と凜とした芯の強さをもつ六花という2人の主人公だけでなくそれぞれのキャラクターがとても魅力的に描かれていて爽やかな読後感でした
Posted by ブクログ
カラフルといったら森絵都さんの方を浮かべ、読み始めたら恩田陸さんの夜のピクニックを思い浮かべました。そんなタイトルや設定の二番煎じは関係なくなるくらい内容は阿部暁子さんのカラフルでした。
要所要所で深く話し合うシーンがありますが、あんなに話し合えるものなのか、そうだとしたら少子化な今ですが未来は明るいなぁと思える、そうじゃなくても教材として本当に考える事ができる良い内容でした。