あらすじ
高校入学式の朝、荒谷伊澄は駅のホームでひったくり犯を捕まえた。その際に、犯人の前に出て足止めをしようとしたのが、車いすに乗った少女だった。その後の事情聴取で判明したのだが、渡辺六花というその少女も、伊澄と同じ高校の新入生だった。弁が立ち気の強い六花に、伊澄はヤな女だな、と感じたのだが……? 夢を追い続けられなくなった少年と少女の挫折と再生の恋物語!
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Posted by ブクログ
単純にストーリーの設定や内容が自分の心に刺さりました。青春ヒューマンドラマとしては今年読んだなかで一番かもしれません。ストーリーの構成も印象に残るものばかりでした。
主人公は高校新一年生の女子高生で時期は入学式当日、ここからストーリーが始まります。主人公は車椅子ユーザーです。入学式当日に高校に行く途中の電車の駅でひったくり事件が起き、とある男子高校生が犯人を捕まえようとし、そこで主人公は犯人の足を止めて犯人は無事捕まります。
舞台の高校はバリアフリーが進んでいる学校で、エレベーターが設置されており、事前の面談で学校側がスロープを用意してくれたりで、車椅子ユーザーにとってはありがたい配慮です。
このストーリーを読み進めていくうちに主人公は「私は車椅子です」とは言わずに「私は車椅子ユーザーです」と言うんですが、これが自分の心に刺さりました。「私は車椅子です」って言ってしまうと「私は障害者だから、なんか配慮してね」と周囲の人たちに強くアピールすることになります。そうすると周囲の人たちはこの主人公に対して無意識に差別意識を持つようになります。「配慮はするけど、どうせあなたは障害者なんでしょ」って周囲の人たちは思い、ついには主人公もそのことに気づき、お互い気分が悪くなってしまいます。それに対して「私は車椅子ユーザーです」って言うと、「自分は車椅子を使わなければいけないけれども、自分でできることは自分でするし、どうしてものときはお手伝いお願いします」と周囲の人たちにアピールすることになります。そうすると周囲の人たちはこの主人公に対して無意識の差別意識を持たなくなり、主人公に配慮してお互い気分良く事が進みます。
ストーリーでは、学校行事に主人公が参加するわけですけど、参加するまでのクラスメートや親や担任との話し合いの過程をうまく描かれています。主人公はやる気満々、しかし周りの人が(もし主人公になにかトラブルが起きたときに助けてあげられるのだろうか)って思うようになります。そうして外堀を攻めて主人公を自発的に追い込んでいくような場面もありました。しかしこの主人公はそのことを全て見通してました。
ストーリー全体として、「車椅子ユーザーの高校生に対して、周りの健常者のクラスメートや担任や駅の係員が何をしてあげられるか」がテーマでこの物語は書かれているように思いました。
また、「荒谷伊澄」という人物もおもしろいです。家では、家事代行アルバイトを1人呼んでいるという設定でした。本屋大賞受賞作の「カフネ」も家事代行サービスの話が書かれています。「カフネ」はこの小説を参考にしているのかなって思いました。
素晴らしい小説で、印象に残りました。
・主人公「荒谷くんも見つかるといいね。神様が荒谷くんのためにどこかに開けてくれた、窓」
・青嵐強歩は40km近い道のりを踏破するハードイベントだ。だから六花は参加しないと、当たり前のように思い込んでいた。
なぜなら、彼女は車椅子ユーザーだから。
Posted by ブクログ
車椅子青春小説。高校生の青春小説の中に、障害をテーマにして差別と区別の違いという正解のない問いにどう向き合うのかというメッセージ性のある内容を盛り込んできている。全体としてはすごく読みやすいしキャラクターも個性的で面白かったが、終盤の差別問題のところがメッセージ性が強く少し説教臭く感じてしまう部分があり、高校生と新米教師のやりとりとしては若干浮いているように感じてしまった。
Posted by ブクログ
短距離走の選手だったがある事情から走るのをやめて、無気力無感動で生きようと思っていた少年と、夢を持ちそのために努力してきたのに病気で下半身不随になった少女。
少年は、少女に出会ったことで、世界がカラフルだと気づく。
ボーイミーツガールであり、多様性に気づき認め合う柔軟な感性への希望が描かれた物語である。
Posted by ブクログ
阿部さんのは安心して読めるね。中高生たちに印象に残ったところや言葉を言い合うような読書会をしてほしいね。
自分が最も注目したのは田所が清彦をイジメようとした空気を伊澄がかき消す場面です。うまいねえ。まあ、伊澄の場合は俊足という特技があったからアレですけど、なんか変だなと思ったときにすぐ行動することが大切だと思います。
読書離れの一つの要因はあまりに身近ではなくなったことではないかな。阿部さんのように、自分たちのことを書いてくれる作家さんにはこれからも期待しています。
Posted by ブクログ
病気で車いすユーザーになった少女と怪我でスプリンターを挫折した少年の爽やかボーイミーツガールな話
高校でのイベントを中心に、”障害”についての周囲の生々しい言葉や当人から発せられる言葉にハッとさせられる場面が多い
ある時から障碍者であることを受け入れるしかなかった少女と、娘の辛い思いを一身に受け止め続けて壊れてしまった母親との修復不可能に思われた関係も、物語終盤では少し改善に向けて前進してホッとした
障碍者に対応する際の”正解”があるわけではなく(健常者と同じように)、各個人に寄り添って接していく必要があるのだと、当たり前のことに気付かされた