あらすじ
剣客にふさわしからぬ含羞と繊細さをもった少年は、北斗七星に誓いを立て、剣術を学ぶため江戸に出るが、なお独自の剣の道を究めるべく廻国修行に旅立つ。北辰一刀流を開いた千葉周作の青年期を爽やかに描く。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
再読。
北辰一刀流の流祖・千葉周作成政の前半生を描く歴史小説。
「『剣の要諦はひとことで申してどういうことでございましょうか』
と門人がよくきく。
(中略)
周作は、
『剣か。瞬息』
とのみ教えた。剣術の要諦はつきつめてみれば太刀がより早く敵のほうへゆく、つまり太刀行きの迅さ以外にはない。ひどく物理的な表現であり教え方であった。周作は剣を、宗教・哲学といった雲の上から地上の力学にひきずりおろした、といっていい」
たとえばこの部分によく表れているように、周作は明確な理論と合理性でもって、それまでの剣の常識を破壊していく。その展開は読んでいて小気味よいが、それだけでなく、筆者・司馬遼太郎の文体からいつもうかがわれる理を探し求める姿勢ともよく一致しているように感じられる。