あらすじ
『ミカゲ食品は「スマイルコンプライアンス」の精神で、信頼回復に努めてまいります』
異物混入騒動への社長の発言が炎上した翌日、35歳の多治見勇吉は、〈スマイルコンプライアンス準備室〉に異動となる。実体不明の社長の言葉を形にしろというのだ。
社長に忖度する役員の無茶ブリ、会議のための会議、終わらぬ資料作り。趣味のバンド活動が最優先だった勇吉も、仕事漬けの毎日に。そんな中、バンド仲間が余命宣告を受ける。
「自分はどうして、こんなに働いているのだろう」
よりよく働ける職場を目指し、勇吉の奮闘が始まる。
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Posted by ブクログ
読み終わったあと、会社の仕事に対して、前向きになれる本。
会社の不祥事をきっかけに、会社の新しいコンプライアンス理念立ち上げを命じられた主人公が、急増のコンプライアンスメンバーと共に、思想が固い経営陣に立ち向かい、コンプライアンスを立ち上げていくという物語。
「どうせ通うなら、毎日楽しい職場がいい」にはめちゃくちゃ共感。他にも、役員へのご機嫌取りのための資料作りなど、社会人あるあるが詰まっており、社会人の人が読むと面白い本だと思った。
「コンプライアンス」と言うと、どうしても固めなイメージが持たれるが、この物語ではコンプライアンスについて、徐々に原理原則に立ち返っていく。「原理原則」とは、挨拶をする、困った時に助ける、とかそんな当たり前な話である。そんな社会人としての原理原則を議論する場面がなんとも印象的であった。
最後の半径5メートルをまず良くしよう、というのが「先ずは自分の出来るところから」という無謀な目標ではなく、着実にというメッセージが伝わってよかった。
印象に残ったスマイルコンプライアンスは
・挨拶をしよう
・時々、雑談もしてみよう。
・上司、部下、同量のいい所をみつけよう。
人の繋がりを大切に、という仕事以前の大切な繋がりを感じた。
【スマイルコンプライアンス12ヶ条】
一、挨拶をしよう。おはようございます、ありがとうございます、おつかれさま。
二、忙しくしている人がいたら、手伝えることを探して、声をかけよう。
三、困った時は騒いで周りに助けてもらい、みんなで早く帰れる職場にしよう。
四、明るく愚痴をこぼし、明るく弱音をはこう。そしてお互いに思いやろう。
五、時々、雑談もしてみよう。
六、悩んでいることがあったら相談窓口に話をしてみよう。
七、過ちをおかした社員が、やり直すチャンスを得られるようにしよう。
八、ミスを憎んで人を憎まず。小さなミスも知らせて、みんなでカバーしよう。
九、社員が日々、よりよく変身できる環境を作ろう。
十、出ていく社員をやさしく見送り、もどってくる社員をやさしく迎えよう。
十一、上司、部下、同僚のいいところを見つけよう。
十二、余計なルールがあれば、どんどん見直して、廃止しよう。
附則 この十二箇条を守るか守らないかは、それぞれの自由です
Posted by ブクログ
どのみち毎日通うなら、楽しい職場がいいですね。
かつて経験した、大量の仕事や厄介なクレーム対応は、ある程度ゴールが見えていた。頑張ればなんとかなる類のものだ。しかし今回の仕事には、頑張ってもどうにもならない何かがあった。何で忙しいのか訳も分からぬまま、いたづらに怒涛のような日々が過ぎていった。
「トップダウンで大きな方針やルーツが作られると、それに付随した細かい規則や手続きが山ほどできて、部門間の軋轢も増えます」
「俺は今、満員電車で会社に通いたい。くだらない会議にも参加したい。仕事や会議を陳腐で退屈なおのにしているのは自分自身なんだって、言ってやりたい。どんなにくだらない会議だって、楽しんでやろうと思う。そうすりゃ周りも面白くなるかもしれない。生きてるだけで、どれほどすげえことか、今ならわかるんだよ」
「自分のことって、案外分からないものですね(ヤマキョー)」
詩人・金子みすゞの有名な詩の一節「もう遊ばない」と言えば「遊ばない」と返ってくる。「ごめんね」と言えば「ごめんね」と返ってくる。
それぞれの半径五メートルが少しだけでも良くなるようなものを作りたい
ただ、ひとつだけ自信をもっていえることがある。スマコンは、社内のだれの存在も否定しない、職場の良心を信じてみるところから始まる行動規範だ。