あらすじ
書かずに死ねるか。
大企業に勤めて仕事も順調、
彼女とも良い感じな
社会人・黒田マコトは、
実生活の小さな積み重ねによって
心を病んでしまう。
休職し療養に励む黒田は、
学生時代の文芸部の後輩・
黄泉野季郎と再会する。
卒業後、売れっ子小説家になっていた
黄泉野に焚き付けられ、
黒田は再び筆を執ることにするが、
それは艱難辛苦の道だった―――
自分には才能がない。そう思って諦めてしまったことはありますか?
アラサー会社員の黒田マコトは順風満帆な生活を送っていましたが、ある日突然糸が切れたように会社に行けなくなってしまいます。そんなとき、大学時代の文芸部の後輩にして今をときめく売れっ子小説家の黄泉野季郎と再会し、流されるようにまた小説を書くことに。
世間一般では、「書くこと」は会社に行けない現実から目を背けて逃げるための、さらなる闇に落ちていく行為なのかもしれません。書いたとしてそれが何になるかなんてわからない、お先真っ暗な道。しかし、黒田にとって「書くこと」は、どうしようもない自分に残されたたった一つの光でもあります。そんな「光」と「闇」の表現が、本作はとても秀逸でした。プライドをかなぐり捨てて夢中で小説に向き合い始めた黒田の鬼気迫る様子は思わず息を呑むほどで、あのころ捨ててしまった「何か」へのまだ諦められずにいる執着心を思い出させてくれます。
大人になってしまっても、まだなんだってできる。本作を読むと、自分にしかできない「何か」を無性に探したくなってしまうことでしょう。
日々の生活に忙殺されている大人の読者の方におすすめしたい作品です!
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Posted by ブクログ
ずっと小説家版「ブルーピリオド」が読みたかった。私はそれこそ「ブルーピリオド」の矢口八虎みたいに「俺の小説で、全員殺す」と思っている人間だった。でも、探しても探しても、見つかるのは漫画家やイラストレーターの苦悩か、同人小説書きの苦悩か、悩まない鬼才天才たちとその周囲の人間の物語ばかりだった。もっと、言葉を芸術として扱う人間の作品が読みたかった。サーチ能力の不足は否めないが、それでも必死に探し続けて、私のなかで不満の声を上げ続けていた虎が、喉を枯らし、くたびれて黙ったころ、この作品を見つけた。
1巻を読みました。今また、虎が吠えています。
私が『小説家版「ブルーピリオド」』を求める限りどうしても「ブルーピリオド」を基準にしてしまって、少し絵のインパクトが足りないと思うところはあった。しかし絵の(デッサン的な、リアルな)上手さで殴られない分、それをカバーしてなお余る魅せ方でグッとくるところが多くてとてもよかった。正直、インパクト云々は、「ブルーピリオド」は美大出身が描く美大生の漫画だから絵が上手くて当然で、「あくたの死に際」は漫画家が描く小説化の話だから絵のインパクトよりもキャラクターの感情の魅せ方が上手くてあたりまえというか、そこに力入れなくていいのは当たり前というか。
締め切りまで1時間を切っているタイミングで、口頭で小説の内容話しながら別の内容を2万字タイピングできるわけないとか、あきらかフィクションパワーで盛ってんだろみたいな場面もあるが、全く気にならない。本気でなにかにのめりこんでる人間だけが出せる火事場の馬鹿力に似た狂気が伝わってきてあまりにもいい。
Posted by ブクログ
感想
小説家の漫画は何気に初めて読んだが、とても面白かった。多くの文学に触れてきた編集が読み耽ってしまう小説「才鬼」読んでみたいなぁ。
本が売れるために最も重要なのは何が書かれているかじゃなくて、「誰が書いたか」理不尽ではあるもののそれが現実。自分も知ってる作家のものをつい手に取ってしまうし、正直心当たりがありすぎる。