あらすじ
東京で夫と穏やかな暮らしを送っていた由香にとって、悩みの種は夫の実家のことだった。
結婚当初「どうってことないうち」と言っていた夫の実家は、北関東にある河童市の由緒ある家柄で、祖父が元市長であり伯父は現職の市長だったのだ。
煩わしいことには関わらないと宣言していた由香だったが、夫の伯父である現職市長が病に倒れてから状況は一変。
地元に帰ることはないといっていた夫は、姑や伯父の懇願に負けてしまい、選挙に出ることを決意してしまう。
最初は別居して選挙と距離を置いていた由香だったが、次第に選挙をめぐる問題に巻き込まれていき――。
選挙を通じて描かれる、本音と建て前が渦巻く家族小説!
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Posted by ブクログ
林真理子さんの小説は面白くて、一気に読みました。選挙にのめり込んでいってしまう描写が秀逸、選挙のニュースなどでの支援者の熱狂ぶりになるほどと思えてしまう部分があった。そして、政治家はつねにハイテンションだから、欲求も強い、というくだりに妙に納得してしまった…。
Posted by ブクログ
ミーハーなことを嫌う地味系の由香。図らずも夫が郷里で出馬することになり、嫌々ながらも仕事と東京を捨て北関東の田舎都市に移り住む。父親と兄が代々市長だという姑は選挙に前のめり。それを取り巻く口うるさい後援者たち。古いしきたりにがんじがらめになり、何を言っても何をやっても目立ってしまう立候補者の妻という立場が嫌すぎて、一時は離婚まで考えた由香だが‥。いざ選挙活動を始めて自分なりにやってみるとどんどん戦闘ムードになり姑と張り合う形になっていく。解説の酒井順子さん曰く「スタビライザー(飛行機などに付いている水平安定装置)が故障した状態」環境が変わり、いわばちょっとしたトランス状態になってしまったのだ。人間って底知れない可能性を秘めてるもんなのですね。由香はもう、平凡な東京の生活には戻れないでしょう。
しかし、地方の選挙ってほんとにそんなに一般人にお金をばら撒いてるんですかね。「選挙はお金がかかる」ってそういうこと?「金ばっかりじゃない。人にいろんなことを頼んで義理ができる。当選するっていうことは、そういう人たちに義理を果たすっていうことになるんだ。金の回収と義理を果たしてるうちに任期は終わるていう仕組み」とある。全くあり得ない話ではないと思う。