あらすじ
「君の選択肢に『No』はない。『Si(はい)』でなければ『morte(死)』だ」――1996年末、元官僚の証券マン・古葉慶太は、顧客の大富豪・マッシモからある計画を託される。それは、中国返還直前の香港から密かに運び出される国家機密を強奪せよというものだった。かつて政争に巻き込まれ失脚した古葉は、逆襲の機会とばかりに香港へ飛ぶ。だが、彼を待っていたのは、国籍もバラバラな“負け犬”仲間たちと、計画を狙う米露英中、各国情報機関だった――。裏切るか、見破るか。策謀の渦巻く香港を“負け犬”たちが駆け抜ける!
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Posted by ブクログ
長浦京『アンダードッグス』角川文庫。
直木賞候補作となった国際諜報冒険小説。
ストーリー構成が見事と言うしかない。あれよあれよという間に古葉慶太がマッシモの策略に嵌っていくように物語の世界に引き込まれていく。裏切りに次ぐ裏切りと硝煙と血飛沫が渦巻く中で、古葉慶太が懸命に生きた時代と義理の娘である古葉瑛美の時代とが交互に描かれ、もしかしたら古葉慶太は生きているのではないかと匂わせる。
長い長い旅路の果てに……
余韻を感じるラストが良い。非常に良い。
1996年、政争に巻込まれ失脚した元農林水産省の官僚で証券マンの古葉慶太は担当する顧客のイタリア人大富豪、マッシモ・ジョルジアンニの策略に嵌り、中国返還直前の香港から運び出される機密情報を奪取する計画を強要される。
証券会社での居場所も奪われ、退路を断たれた古葉はかつて自分を陥れた奴らへの復讐の機会と考え、香港へと飛ぶ。マッシモと面会するために指定の場所に向かった古葉を待っていたのは銃殺されたマッシモの死体だった。
2018年、亡くなった古葉慶太の義理の娘である古葉瑛美が不正アクセス禁止法違反と電子計算機損壊等業務妨害罪で逮捕される。しかし、義父と付き合いのあった法律事務所に連絡するや直ちに保釈される。
再び1996年、香港。古葉慶太は機密情報の奪還するためにマッシモが集めた4人のメンバーと次善策を検討する。そこに米露英中の諜報機関が絡んで来る。人生で一度煮え湯を飲まされ挫折を味わった古葉慶太ら負け犬たちのチームは不甲斐ない過去と決別するために機密情報の奪還に挑む。
古葉慶太たちの運命は如何に。
古葉瑛美の正体は……
本体価格960円
★★★★★
Posted by ブクログ
工作員でもなくテロリストでもない主人公の古葉慶太が、自分を嵌めた者たちへの復讐の機会だと大富豪のマッシモから強要されたミッションに仲間たちと挑んでいく。そのミッション達成を命じられたのは古葉たちチームD以外にも3チーム。さらに裏で4か国の秘密機関が絡んだ騙し合い、不意打ち、ドンデン返し、秒単位で変化する信頼と不信、華麗すぎる逆転など、読み出すと気になって止まらないエンターテイメントでした。この終わり方はハッピーエンドなのか否か、要チェックです!
Posted by ブクログ
1996年末から1997年にかけて、中国返還前夜の香港の闇の中で繰り広げられた、米ソ英中日入り乱れての血肉の飛び散る極秘情報争奪戦。
並行して、その20年後、天涯孤独な娘が香港で亡霊の様な過去の関係者を辿る旅が語られる。
全てを見通していたようなイタリア人マッシモが編成したチームのメンバーが斯様に二重三重の裏の顔を持っていたのは身辺調査が甘かったのか意図的だったのか。もしかしたら作者のご都合主義によるものか?
何にせよ、日本の官僚はタフだ。
Posted by ブクログ
評価は3.5点かな。
農水省をやめて証券会社に入った元官僚の古葉慶太は資産の運用を任されている客に軽井沢まで呼び出される。
顧客はイタリアの富豪、そこで古葉は断れない依頼を受ける。返事に逡巡しているとどんどん外堀を埋められ、古葉は返還前の香港に向かう。
Posted by ブクログ
この作家さん1冊目。主人公はオファーされた仕事をするには所謂プロとは言えないけれど、ある意味最も適性のある人。前職時代に身に付けた能力と、周りのプロたちから教わったテクニックを組み合わせてゴールを目指していくやり方の緻密さが凄い。後半クライマックスへ向けてスピード感が増し、最も良い終わり方をしてくれたけれど前半はややテンポが遅めだった印象。