あらすじ
さみしさは心の弱さではない。
生き延びるための本能-。
人類は、なぜ「さみしい」という感情を持つのか?
あなたの知らないあなたの心を脳科学が解き明かす!
「ひとりでいるのがつらい」
「誰といても満たされない」
集団をつくり、社会生活を営むわたしたち人類のなかで、
さみしい・孤独だと一度たりとも感じたことがない人は、
おそらくいないのではないでしょうか。
集団をつくる生物は、孤立すればより危険が増すため、
さみしさを感じる機能をデフォルトで備えているはずだからです。
さみしさは人類が生き延びるための本能であり、心の弱さではありません。
それなのになぜ、私たちは、
「さみしいのは、よくないことだ」
「ひとりぼっちは、みじめだ」
などと考えてしまうのでしょうか。
そこには、さみしさという感情を捉える際に起こりがちな、
さまざまな思い込みや刷り込み、偏見が隠れています。
本書では、脳科学的、生物学的な視点から、
なぜ、さみしいという感情が生じるのかという問いに
焦点をあてていきます。
また、なぜ、さみしいという感情を
ネガティブなものと捉えてしまうのか、
その科学的要因、社会的要因からも考察していきます。
すべての感情には、意味があるはずです。
であれば、さみしいという感情が生じたときにも、
無理に抑え付けたり、なかったことにしたりするのではなく、
「そこにはどんな意味があるのか」を考え、理解していくほうが、
この感情をスムーズに扱えるのではないでしょうか。
さみしさの扱い方に慣れ、その生じる仕組みを理解することで、
さみしさを必要以上におそれることなく、振り回されることもなく、
上手に付き合いながら、長い人生をより豊かに、
穏やかな気持ちで過ごしていくことができるようになるはずです。
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このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
孤独はひとりでいる状態を表す言葉で、さみしさは心の動きを表す言葉。
さみしさを感じる自分は心の弱い人間でもなければ、劣っている人間でもない。
人の人生のなかで、誕生から成長するにつれて、さみしいという感情がどのように湧き起こり、影響を与えていくのかが、年代をおって書いてあり面白かった。
孤独が、健康リスクを増大させる理由のひとつが
さみしさが与えるストレスの影響。
良好な関係を維持している人は、相手は自分とは違う人間であることを理解し、なにもかもすべてを共有できるわけではないことを知っている。
誰かを頼ることは、その人に対する信頼の表明であり、相手を「自分も人から頼ってもらえた」という満足感で満たすことができるかもしれない。
Posted by ブクログ
ネガティブな感情の1つとして私が感じているさみしいという気持ちを客観的にとらえることができれば、さみしいという気持ちとうまくやっていけるのでは?という気持ちで読んだ。さみしいという気持ちは人間の本能であり、生き延びるのに必要な感覚だった。なるほど。具体例でわかりやすく理解できた。子育て世代や若い人から高齢の人までどの世代でも抱えうるさみしいの気持ちを説明していて、誰にでも寄り添う1冊だと思った。
Posted by ブクログ
中野先生の本はタイトルがまず良いなと思うことが多いです。
多分言うか言わないか、意識しているかしてないかの差はあるけれど、世の中のかなりの人が何かしら「さみしさ」を抱えていてそれをどうしようもないままに放置や無視している状態なのじゃないかなと思います。
赤ちゃんが泣いた時に抱っこすると泣き止むのは「輸送反応」という哺乳類に見られる現象である(p92)、という解説には驚きました。安心するからじゃないんだねと。(そういう側面もあるんじゃないかとは思いますけども)
確かにそう考えてみると抱っこするのがお母さんやお父さんじゃなくても泣き止む時もあり、逆にもっと激しく泣いてしまう時もあり、あれはどっちが安全か本能で判断していると考えたらなるほどなぁと納得させられます。単に「安心」とか「好き嫌い」じゃないんだねと。
泣いてる赤ちゃんを抱いてもっと泣かれても傷つかなくていいんですねw
p121、10代20代の若い人に「そのさみしさは脳の中の不安回路が残ってるせい。若さのせい。自分を嫌うことで向上できる能力がある。30過ぎれば強く感じられなくなる感情だ」というのは伝えてあげたいですね。自分を振り返ってみても「どうしてあんなことで悩んでいたのか」とか「すごく何でも深刻に捉えていたけど今思えばそんなに悩むようなことでもなかった」ということが若い頃には多々ありました。そのときはすごく辛くてしんどくてそれは覚えてはいるけれども、通り過ぎるととても遠くなってしまう感情でした。
自分だけでなく周りの同年代の人たちも「若い頃のほうがしんどいことが多かった。大人にかなりの悩みやしんどさは確かにあるけど、だんだん年取るほど生きるのが楽になった」と言っている人が多いです。
一生懸命話を聞いてくれる人には別の意図があるかもしれない、さみしすぎると冷静に物事を考えられなくなるのは心が痛いのと同じ、心のしなやかさが弱っている状態、という言葉は覚えておきたいワードでした。
自分はさみしさって誰でも生来持っているものだと思います。これからの人生は下り坂、あまりそこにフォーカスすることなく、自分を悲観したり否定したりすることなく生きたいですね。
本書に出てくるマインドフルネスではないですが「そこにあるな。大きくなることも見えなくなることもあるさ」くらいのスタンスでこれからも付き合っていきたい感情です。