あらすじ
歴史が示す、長期政権のあと――憲政史上、最長となった安倍政権(首相在職日数は二〇二〇年七月三十一日時点で三一四一日)。なぜ、安倍政権は長期政権となったのか。そして、長期政権のあとにはどのような事態が出来するのか――。権力の生理を知悉する佐藤優元外務省主任分析官と現代日本政治論を専門とする山口二郎法政大学教授が、歴史から読み解いていく。見えてきたのは、グローバル資本主義の限界と民主主義の行き詰まり、日本社会の変質と衰弱である。日本はどう変わっていくのか。われわれが迫られる選択とはいかなるものか。近未来への提言・処方箋を擁した警世の書。
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Posted by ブクログ
2020/12/24「安倍長期政権のあと」山口二郎・佐藤優☆☆☆
「名著」知の巨人お二人の共著 クオリティ高い 単行本数冊分 佐藤優氏☆
課題は整理された いかに取り組むか コロナ禍を口実に逡巡している
先送りすると、失われた時代が続き、「資産の焼け野原」
Ⅰ.安倍長期政権 2012.12-2020.08
1.安倍一強 過度な権力集中 官房1200 府2400 内閣人事局'14年
2.行政権の絶対優位 立法・司法の軽視 ファシズムの手法
アカウンタビリティー説明責任なし 民主主義の否定
3.支持率第一主義 短期施策に集中 長期ビジョンも戦略も無い
もともと安倍氏には政権構想はなくレガシーと長期在任ねらい
4.人材育てず 劣化 側近政治 トップリーダーの器では無い
官邸官僚に依存し、党内の後継者・若手には無関心 自分だけ
二人の長老に依存 麻生副大臣 二階幹事長 爺や体制
5.三つの大権 ①公認権②政党交付金③解散権
小選挙区制をフル活用
6.対米追随=日本の国体とした 天皇無視
→コロナ禍まではやりたい放題だが、実績・実力が問われるガチンコ 敵前逃亡 得意の
Ⅱ.戦後の世界政治
1.民主主義と資本主義のバランス 大きな政府と小さな政府
ex池田勇人「所得倍増」、佐藤栄作「社会開発」
2.新自由主義 ハイエク、フリードマン
サーチャー政権[79-90] レーガン[81-89] 中曽根康弘[82-97]
「小さな政府」→国民社会の統合の低下→地方独立・分権の動き
exスコットランド 分断の勢力
反対勢力の弱体化 組合・野党 →長期政権・新自由主義
3.1985年プラザ合意
中曽根行革「民営化」①効率化・生産性向上②税収増③組合解体
4.90年代Global資本主義経済 クリントン政権'93-'01
①情報革命 情報スーパーハイウェー構想
②金融規制緩和 '95 ドル高容認 海外マネーの取り込み NAFTA
5.小泉構造改革
①郵政民営化。財投縮小②医療に市場原理③非正規雇用の拡大
④企業内部留保463兆円
Ⅲ.自民党の強さ 90年代 冷戦終了・バブル崩壊→日本の衰弱
合成の誤謬 雇用の効率化・非正規雇用
所得の減少 消費の低迷
小泉政権「'01年04月-'06年09月」
①経世会潰し②市町村合併③郵政民営化④経済財政諮問会議
→「反知性主義」 言葉の崩壊
Ⅳ.安倍政権後の国難
コロナ禍→大政翼賛会=行政国家、ファシズム 同調圧力・自粛警察
山口先生は「民主的に運営ができる」と甘い見通し 民主党政権
野党は本気で政権を取ろうと思っていない! これが実態と思う
自棄になり、投機的リーダーシップを求める(一か八か) ヒトラー
SNS 権威の否定①政治②メディア cf中世「印刷」教会権威を否定
Ⅴ.日本の劣化 アベノミクスの検証を
GDP増加 ドルベースでは 国債増加の代償
インバウンド 航空機特需
雇用改善
→真の人材育成 教育 Glocal エッセンシャルワーカーを大切にする社会
Posted by ブクログ
途中から敢えて読むのを、中断していた。本当に政権が交代したから。
今ようやく読む。本質的な前進を全く感じられない毎日ゆえ。
読んで良かったと、特に後半部分。
Posted by ブクログ
■小泉政権下で企業の収益向上が優先され、労働者の所得向上が顧みられなくなった。実際、平均年収は1997年をピークに低落・停滞傾向にある。非正規社員が急増したが彼らは企業からすれば「好都合な人」雇用の調整弁になり社会保障費の負担を減らすことができる。
■企業の内部留保は小泉政権の頃から増加し、現在、約463兆円(2019年3月末時点)。
■世帯の所得がその国の世帯の可処分所得(調整後)の中央値の半分未満を「相対的貧困」、その割合を「相対的貧困率」というが、日本の相対的貧困率は2016年時点で15.7%と、イスラエル・メキシコ・トルコ・チリ・アメリカに次ぐ世界第6位。今や日本は正真正銘の格差社会。
■個々の企業が合理性を追求していくことで社会全体として若者の就職難・結婚難、ひいては人口減少をもたらすという合成の誤謬(ミクロの視点では合理的な行動でも、それが合成されたマクロ世界では好ましくない結果が生じること)が起こる。具体的には企業が経営健全化を図るために人件費を削減すると、個人消費が停滞して景気の低迷を長引かせた。これを是正するために政府の介入が必要だったが政権には危機意識がなかった。
■最優先すべきは雇用と事業継続。人口減少が顕著な地方や資金繰りが厳しい中小企業では急務。若年層の雇用も大きな問題。1990年代の後半の就職氷河期では大量の非正規雇用者が出現し、現在の日本社会の不安定さの基となっている。「新就職氷河期」をつくらないことが重要。現在15~24歳の世代は就職氷河期世代より約500万人も少なく彼らが社会の中核を担う2040年には高齢者人口が約3900万人とピークに達し、少ない人数で高齢者を支えなければならない世代。
■ユニコーン企業とは企業価値10億ドル以上で未上場、創業10年以内のベンチャー企業のこと。聞いたことはあっても誰もその姿を見たことがない伝説の一角獣に例えられたようにその数はとても少ない。ユニコーン企業の数はイノベーション政策が成功しているか否かを判断する指標の一つ。
・日本のユニコーン企業は2018年ではメルカリとプリファード・ネットワークスの2社。2020年2月時点では7社に増えた。
・アメリカは216社、中国は206社、イギリスは24社、インド20社、ドイツ12社、韓国10社と日本を上回る。
Posted by ブクログ
●最初はよくあるやつかなあと思っていたが、読めば読むほどよくまとまっていることに感心した。
●それぞれのパートが上手く繋がり、読みやすい。
●内外の政治状況についての説明もよく、できれば近代、自民党史についてもっと詳しく知りたくなった。
●この本は、まだ安倍さんが暗殺される前なんだなと思うと…
●安倍さんの後は菅さんが繋ぎ、岸田さんにバトンが渡されていくわけだが…野党も弱く、結果的に延命している状況…
●出生率もダダ下がる中、全ての問題が先送りになる中で、果たして日本はどこに向かうのか…
Posted by ブクログ
山口先生は個人的な関わりからあまり尊敬できない。加えて安倍首相を評価していないことはよしとしても「この世を悪くした罪の重さを命で贖うべき」のよいな発言は学者としての冷静さをあまりに欠いている。反面教師にしたい。この文章は安倍氏暗殺から3ヶ月、書かれてから2年経つ2022年10月に書いている。いずれも遠い昔に思えるくらい、コロナとウクライナ侵攻は、世の中のあり方を変えてしまった。これが、台湾への侵攻などさらなる世の中の激変の前触れとならないでほしいと願いながら読んだ。
Posted by ブクログ
長期政権そのものを論じるというよりも、戦後の日本の政治をなぞるような内容だった。対談というよりも往復書簡のような様相で、これまでの佐藤氏の対談本で、ほんとにこんなふうにしゃべったんだろうか?会話のやり取りにしては、ちょっと内容が文語じゃないか、と不自然さを感じていた身には、とてもしっくり来たと思う。
安倍政権は長く続いてきただけに、個人的なものというよりも日本の政治そのものの姿を映しているという。なるほどなぁ、と思った。そして誰がそのあとを継ぐとしても、経済に全力投球せざるを得ないだろうし、ひょっとすると短期政権がぽつぽつと続く中で傷が広げられていくのかもしれない。
処方箋は提示されていたけれど、道は険しそうだ。俺は本書で語られていた高負担、高福祉社会が痛みを伴いつつ、処方になるというのはなるほどと思うけれど、現実に移すにはいくつものハードルがあるんだろうなぁ。
いろいろ考えさせられて、とても楽しかった。