あらすじ
文章を読むと、作家の内面を体感できる共感覚を持つ女はある時、吐くほどにおぞましい内面世界を持ったΩという作家を見つける。Ωの驚愕の正体とは。(スコッパ―の女)
著者が知り合った奇妙な作家L。彼は物事の終焉までの距離を【深さ】として観測できるらしい。ある日Lは鏡に映った自分に【深さ】が全くないことを知る……。(終焉を告げる小説家)
自分が生み出した天峰翔陽というキャラクター。同名の人物が現実にいることが分かり、やがて物語と現実がシンクロし始める。(シンクロニシティ) 他2編。
小説家に纏わる身の毛もよだつ戦慄の短編集。
「この本に収録されている作品は、私が収集した出版関係者の奇妙なエピソードを、小説の形式に書き直したものである。
中には現在も活躍中の小説家が登場する。もしかしたら、あなたの尊敬する大好きな作家こそ、この本に登場する破滅的な小説家その人かもしれない。」 山白朝子
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Posted by ブクログ
表紙のインパクトとあらすじから興味をもち、読んでみた。
短編集だが、どれも粒揃いといった感じで面白く読めた。
一番好きだったのは青軸卿だった。まさかまさかのオチ。愛の形もそこまでいくと素晴らしい。気持ち悪いって人もいるんだろうけど、私だったら大切に愛用したくなると思う。
以前知人と話していて、推し活の愛の表現として、愛するものと同一化したくなるのか愛するものが愛する対象になりたいのかという違いを発見して目から鱗だったんどけど、多分私が同一化したいタイプだから青軸卿好きなんだろうなーと思った。
Posted by ブクログ
4.5
粒ぞろいだけど、大傑作とまでは感じなかった。でも面白かった。
「小説家」シリーズとも言うべきか。山白朝子名義の乙一による小説家を主人公(または聞き手・話し手)とした短編集。
「前書き」
もっともらしく嘯いているのが面白い。ベストセラーになったのは近畿地方のだろうなとうかがえる。
「終焉を告げる小説家」
終わりまでの【深さ】が見える小説家の話。
前フリとして親子ほども年の離れた年の差や、帰ったらやけ酒を飲もうとしていたことがよく機能していた。
聞き手の小説家の中には終わりの見えない何かがあるというのが語られて終わるのがすごく良かった。小説家賛歌、創作賛歌で締めくくられてるのが心憎い。
「小説講師の憂鬱」
雑誌掲載時に読んだことがある。再読。
自殺志願者を前にして聞き手の小説家が淡々としていのがどうにも乙一らしいユーモラス。
G先生が自殺したら講師の枠が一人空くじゃん!でも話を聞いてみると自分には向かないな……と計算する人間味こそが乙一だなあと感じた。
講師と教え子の愛、小説家と彼女の愛。愛に対する献身の話から、創作のために小説家は何を犠牲にしなければいけないかの話で面白かった。
「シンクロニシティ」
これも雑誌掲載時に読んだ。再読。
名づけの恐怖。
名づけというのは、相手を縛るための意味合いで使われるのを見てきたので、名が被ることで運命も交差しシンクロする、というのが面白い。星座占いみたいだなと感じた。
死んだ息子の父親は息子と同じ名前の少年の死を描いた小説家に、いわば呪いの手紙を送ったわけで、その呪いが成就したのに亡くなった妻は成仏しない。つまり人を呪わば穴二つで、この父親も呪われた状態。
事の起こりの小説家による息子の死は過失的なものだったが、話し手の小説家(父親)はその効力を知ったうえで行っていて、より罪深い。
話し手の小説家(父親)は問題の小説家を呪う怪文書ではなく、自分達が幸せな結末になれるような文章を書くべきだったんじゃないかなと思う。
そうはせず、呪いをかけてしまったから、彼は賽の河原積みのように書かされ続ける地獄を味わうラストになったんだと思う。
「青軸卿」
キーボードに詳しくないので、乙一らしい嘘が混じっていそうだが見抜けなかった。でもキーボード談義は面白かった。
最後のオチはボーンチャンイナの前フリがあったので面白かったが、青軸卿は自身の骨を使ってキーボードを作らせた、という蓋然性はよくわからなかった。青軸卿はキーボードを打つ感覚に陶酔している人間で、キーボードになりたいようには思えなかった。
死後もキーボードが打たれる音を聴いていたいから自分がキーボードそのものになるという望みを果たそうとした、という解釈で良いのだろうか。
「スコッパーの女」
表題作。
文章を読むとその書き手の人間性がわかる女の話。
作品ごとのイメージではなく、書いている人間についての内面世界を読み取れる、というのが面白い。
そして最終的に醜悪な世界観を持つ小説家は聞き手である自分だったのでは、というオチ。
聞き手の小説家の人間性について作中なにも描写されていない分、その透明性が面白かった。
編集者が地理に疎いという前フリもこう機能するのか~で面白かった。こういう何気なさが好き。
Posted by ブクログ
スランプに陥ったとある小説家が、出版関係者から聞いたエピソードを小説風にして綴った、という前置きではじまる短編集。
収録されているのは「終焉を告げる小説家」「小説講師の憂鬱」「シンクロニシティ」「青軸卿」「スコッパーの女」の五篇で、そのいずれも現実と虚構の絶妙なあいだがとられている。
すべてに驚きの結末と後味の悪さがあって最高。ここ最近の山白朝子もとい乙一作品のなかでも抜群に大好きな作風だった。というか、ここ最近で読んだあらゆるホラー作品のなかでも一番といっても過言ではない。
ところで、私は読み始める前に巻末の初出情報や奥付を確認するくせがある。
今回もそれらを確認しようとしたとき、見開きのページに絶対読むまえに目にしちゃいけない究極のネタバレの一文を読んでしまいました。
やらかしました。みなさんもお気をつけを。ちなみにわかったうえで読んでも、それはそれで別の種類の楽しみ方ができたよ。
Posted by ブクログ
文章を読むと作家の内面を体感できる共感覚を持つ女が、おぞましい内面世界を持つ作家Ωを見つける表題作をはじめ、小説家にまつわる奇妙で不気味なエピソードを描いた、戦慄の短編集。
この本を読み終えた私の手に残ったのは、血の通った人間の感情や狂気が描かれているはずなのに、どこか人工的で温度を持たない不気味さを見事に捉えた感覚である。
ホラーの定番といえば、怪異のもとをたどっていった人間が行方不明になったり命を落としたりするものの、怪異の正体はわからず、正体を探ろうとした人間も巻き添えになって怪異が伝播していくという展開だ。しかし、表題作「スコッパーの女」は、その王道を見事に裏切る。怪異の正体を探ろうとしていた主人公自身が、実は最もおぞましい内面を持つ「怪異そのもの」だったのだ。
この結末が私に与えたのは、得体の知れない化物に襲われるよりもずっと深く、静かな恐怖だった。共感覚を持つ人間にしか害をなさないかもしれないという限定的な条件。そして何より、自身が他者を破壊してしまうほどの脅威であることに「全くの無自覚」であるという底知れなさ。もしかしたら生涯無害な存在であるかもしれないし、それどころか今回図らずも犠牲を出したことに気を病み続けるかもしれない。
「無自覚なまま、自分が取り返しのつかないような加害性を秘めているかもしれないというとてつもない恐怖」——誰もが心の奥底に抱えうる根源的な怯えと共鳴している。悪意がないからこそ防ぐこともできず、ただそこに在るだけの脅威。
また、本作の魅力は恐怖だけにとどまらない。物事の終焉までの距離を【深さ】として観測できるL先生が登場する「終焉を告げる小説家」は、これだけでL先生を主人公としたシリーズものが作れそうなほど興味深い設定だった。そして「小説講師の憂鬱」を含め、全編が荒唐無稽な設定でありながらも、「現実世界のどこかにこんなことが起きていそう」と思わせる都市伝説のような面白さがある。
Posted by ブクログ
乙一さんの別名義の1つ、山白朝子名義の新刊である。全5編で200p以下とボリュームは少ない。乙一名義の『さよならに反する現象』を思い出す。
前書きによると、出版界の風習として、アイデア交換会なるものがあるという。ここに収録された全5編は、乙一さんが収集した出版関係者の奇妙なエピソードを、小説の形式に書き直したものだという。まあ乙一さんだけに、嘘でしょうね。
「終焉を告げる小説家」。詳細には触れないが、彼には【深さ】が見えるという。読者の立場ではありがたくないその能力、作家としては武器になるのかどうか。彼は作家をやめても、その能力で令和の世をしぶとく生きていくだろう。
「小説講師の憂鬱」。専門学校のライトノベルコースで、光る才能に出会った講師の男。彼女の意欲を維持させるため、さて彼はどうしたか。あまりにも見え見えで、おぞましいというより引いてしまった。最後のオチは必要か?
「シンクロニシティ」。ある作家の人気作品に登場する少年と、同姓同名の少年がいた。彼が作中で少年を事故死させると、同姓同名の少年も事故死してしまった…。作家がどういう運命を辿ったか、興味がある方は読んでみてください。
「青軸卿」と呼ばれる作家は、ある事情から離島に住むしかなかった。山白朝子作品にしてはユーモア寄りかなあ、と苦笑しながら読んでいたが、最後の最後に…なるほど山白朝子っぽい。彼はその贈り物で、意思を継ぐのだろうか。
表題作「スコッパーの女」。ネット上に公開されているアマチュア小説の数々。そこから才能を発掘する人を称して、スコッパーと呼ぶという。そんな彼女の嗜好が変わった結果…。オチといい、嫌な後味といい、文句なく本作中の一押し。
あっという間に読み終えた。これら5編の中に鬼才・乙一の才能は確かに息づいているが、できればこの倍くらい読みたいというのが本音である。
Posted by ブクログ
文章を読むと、作家の内面を体感できる共感覚を持つ女はある時、吐くほどにおぞましい内面世界を持ったΩという作家を見つける。Ωの驚愕の正体とは。(スコッパ―の女)
著者が知り合った奇妙な作家L。
彼は物事の終焉までの距離を【深さ】として観測できるらしい。
ある日Lは鏡に映った自分に【深さ】が全くないことを知る……。(終焉を告げる小説家)
自分が生み出した天峰翔陽というキャラクター。
同名の人物が現実にいることが分かり、やがて物語と現実がシンクロし始める。(シンクロニシティ) 他2編。
小説家に纏わる身の毛もよだつ戦慄の短編集。
「この本に収録されている作品は、私が収集した出版関係者の奇妙なエピソードを、小説の形式に書き直したものである。
中には現在も活躍中の小説家が登場する。
もしかしたら、あなたの尊敬する大好きな作家こそ、この本に登場する破滅的な小説家その人かもしれない。」
山白朝子
山白氏の雰囲気満載である。
何処か拭っても取れない泥のような気味悪さが。
オチはなんとなく読めるが、文章で最後まで引っ張る。
そこは『流石』としか言いようがない。