あらすじ
コロンブスが15世紀に持ち帰った中南米原産のトウモロコシや、その後に伝わったジャガイモは、ヨーロッパの人口増加に大きく貢献した。他方、アメリカ大陸へ持ち込まれた疫病は、先住民の急激な人口減少を引き起こす。世界の食卓を豊かにした作物の伝播は、のちに「コロンブスの交換」と呼ばれるが、先住民にとっては略奪や侵略に他ならなかった。南米アンデスをフィールドに農学と人類学を研究する著者が描く、もう一つの世界史。
(本書は、『コロンブスの不平等交換 作物・奴隷・疫病の世界史』(角川選書、2017年刊)を、再構成・加筆・改題のうえ、文庫化したものです。)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
僕らの知ってる世界史が近代西欧型文明を至上としてるのだと痛感し、文字を持たず滅びた新大陸の先住民の歴史に想いを馳せる
いやー面白かった
ジャレドダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」と双璧を成すと思う
Posted by ブクログ
コロンブスが「発見」したことで、南北アメリカ大陸と世界にどんな影響があったかを、主に食糧と疫学の点から整理した本。
内容は素晴らしく面白いんですけど、南北アメリカ以外にももっと色々な先住民の話が書かれていることを期待して買ったタイトルだったので★1つ減らしました
Posted by ブクログ
コロンブスの功罪ーコロンブスが新大陸を発見したことによる「負の側面」を明らかにしている。
奴隷の輸入、コロンブスの到来による疫病の蔓延。『先住民から見た世界史』は、アメリカ大陸に限定された内容だが、読み終えると他の地域にも思いを馳せる機会となる、深みのある1冊。
ある論文に対する反論本という印象で、著者が執筆した意図が推測できる。でもこの1冊には有力な論文への「異議」だけでは片付けられない、読者の興味関心をひき立てる内容に富んでいる。
食べ物の発見から、家畜、奴隷、疫病、新大陸発見による先住民の苦しみ。「コロンブスの新大陸発見」という偉業の裏に隠れた事実を、明快に記している。なんといっても分かりやすいし面白い。これに尽きる。
【個人的な呟き】
歴史の教科書では習わないが、焦点を当てるべき事実。技術革新や政治、国の体制など、表面上の歴史を学んできた学生時代。義務教育で求められる知識って、なんて浅はかなんだろう。
苦痛や痛みを伴わない学びは、試験で求められるだけで生涯の糧にはならない。
Posted by ブクログ
「コロンブスの発見」を先住民の立場から読み解いた本。
トウモロコシやトウガラシ、じゃがいもといった作物、持ち込まれた家畜、疫病、奴隷の問題。
近年コロンブスに対する評価は負の側面が再考され、批判的に見られていたのは知っていたが、より多角的な形で描かれていて考えさせられた。
豊かになるごとに資源や労働力を奪い合う人間の歴史を目の当たりにすると、文明の発展の代償や暗部を思い知らされる。
作者は農学が特に強いようで、作物の歴史が特に詳しくページを割かれていた。先住民が育ててきた作物の歴史や毒抜き方法など、確かに貢献は大きく、再評価されるべきだろう。
逆に疫病に関してはさらりと流されている印象。いくつかこの系列の本を読んで比較してみたい。
Posted by ブクログ
小学生の頃「コロンブスが新大陸を発見」って記述がどうも気持ち悪くて教員に聞くとそういう事なんだからそうなんだよと。
「じゃあ、仮に最初の外国人がフランシスコ・ザビエルだと仮定して、【日本発見】はフランシスコ・ザビエルになるんすか?」と聞いたら「日本人が昔から住んでるのに発見っておかしいだろw」と言われた。
混乱はしつつ、中学や高校でも再度出たかもしれんけどそのままにしてたモヤモヤが結局「主体・客体」って事だよね。
その先住民側から見た侵略はどう映るのか期待して読んだ。
確かに面白い。とうもろこしの件はロビンソンクルーソーを思い出したし、やっぱり飢饉には炭水化物のコスパがものをいう。日本ではさつまいもだと思ったけどじゃがいもを主に言ってたから認識のズレがあったけど。
ただ、もう少し侵略や疫病の具体性の事をやると思って読んだので思ってたのと少し違った。とうもろこし、唐辛子、じゃがいもにそんなにページ割くんだと。
Posted by ブクログ
#2024年に読んだ本 33冊目
#5月に読んだ本 4冊目
主に扱われてるのは
中南米のインディオとコロンブスの話
歴史の本なんだけど
植物学とか農業とか感染症についての
知識がかなりつく内容だすなぁ…
Posted by ブクログ
「コロンブスの交換」という言葉に違和感を持った著者。長く中南米の先住民と暮らしを共にしてきた著者からすると、それは先住民側からの視点を全く欠いた、欧米中心の見方であると考えたから。
そこで著者は、具体的なモノに焦点を当てて、このコロンブスの交換という問題を検証することとした。
第一部は、ヨーロッパに与えたものとして、トウモロコシ、トウガラシ、ジャガイモが取り上げられる。トウモロコシやジャガイモはヨーロッパの人口増加に大きく貢献したが、これらは栽培植物として、長い間の中南米先住民の努力の賜物であったことが具体的に示される。
第二部は、先住民にもたらされた災厄として、まずサトウキビ。これは、ヨーロッパでの砂糖需要の急増を受けて、サトウキビ栽培や砂糖生産がこの地域で行われることになったが、必要な労働力不足を解消するために奴隷貿易が行われ、アフリカから非常に多数の者が奴隷として送り込まれた事態を指す。
次に、馬と牛。当時、牛の用途は皮を取ることで、当時皮革は鎧やズボン、ロープなど様々な用途を持つ材料で、ヨーロッパ、アメリカで大きな需要があった。これらの家畜を育てるため土地が占有され、インディアンとの衝突や先住民の土地が奪われていった。
そして、疫病。天然痘やはしか、インフルエンザなどの疫病が抵抗力のない先住民を襲い、このため先住民人口が激減してしまう。ジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』でも有名になったとおりである。
ずいぶん昔に習った世界史では、1492年のコロンブスの新大陸発見と習ったような記憶がある。しかし、コロンブスが新大陸に到達したことが、これほどの大きな悲惨を先住民に与えたことに、暗然たる思いである。