【感想・ネタバレ】恐怖とSFのレビュー

あらすじ

日本SF作家クラブ編、書き下ろしアンソロジー第5弾

何度目かのブームを迎えているホラーシーンへのSFからの回答。日本SF作家クラブ会長・井上雅彦が提示する未知なる恐怖21篇。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ハヤカワのSFアンソロジーなら間違いない、と読んだ本。
面白かったです!
SFももはやジャンルレス、とされながらも、バラエティ豊かな作品群でした。
SFの世界はどこまでも拡がっていくなぁ…

特に、柴田勝家「タタリ・エクスペリメント」、小田雅久仁「戦闘番号七九六三」、篠たまき「漏斗花」、飛浩隆「開廟」が好きでした。

■幽霊のゆくえ
・梨「#」:幽霊を見る機械「レトロス」に観測された幽霊のデータのアーカイブ
…このお話の世界で“幽霊”とはなんなのかがわかると切なくなりました
、柴田勝家「タタリ・エクスペリメント」:祟りの研究と実験
…“タタリ細菌”の発見というSF要素から、祟りの仕組みや概念が丁寧に解かれていて見事でした。細菌なら祟りを世界にばらまけます!
・カリベユウキ「始まりと終わりのない生き物」:インターネットの最深部にて見付かった仮想空間に、出現する幽霊
…現実世界からの逃避が、その先へつながるとは…でした。
■身体のゆらぎ
・池澤春菜「幻孔」:ある日、自分に細かい孔が無数に開いてることに気付く
…ゾワゾワしました。
・菅浩江「あなたも痛みを」:痛みを機械に教え込ませる話
…この方面で人間に近付けるのはマズいんじゃ?と危険性を感じました
■浸食する獣
・坂永雄一「ロトカ=ヴォルテラの獣」:人外となった少女と、同級生の死闘
…南総里見八犬伝!
・小田雅久仁「戦場番号七九六三」:何千年もの間、憑依して戦闘してきた異星人たちが今回選んだのは地球だった
…ほのぼの始まったかと思いきやフルスロットルで地獄絵図へ。でも関西弁が呑気でいいです
・飛鳥部勝則「我ら羆の群れ」:羆に復讐したい人と、依頼されたマタギ
…SFホラーでミステリもしてました。羆がなんなのかわかるとゾッとします
■進化する人怖
・イーライ・K・P・ウィリアム「フォトボマー」:短期間で意気投合したビジネスの相手が実は…
…画面の向こうだけじゃなく、現実でも会える存在なのに!怖!!
・平山夢明「幸せのはきだめ」:連続殺人鬼も、誰かと親しくやり取りしてる
…相手はそうだろうな、と思いつつ、ゴア描写がさすがでした。
■物語の魔
・小中千昭「現代の遭遇者 The Modern Encounter」:都市伝説系動画配信者が、「UFOを見た」とする人と出会う話の顛末
…好奇心と顕示欲は身を滅ぼしますが、それでもやってみたい、という人は尽きなさそうです
・空木春宵「牛の首.vue」:牛の首の被害報告
…語れないけれど語ることをやめない怪談はそれ自身が恐怖となる、と。
・牧野修「初恋」:大好きな相手がフィクションでした
…牧野さんのお話の登場人物たちが、「自分は本当はこうなんだ」と知ったら恐怖だろうな、と思いました
■異貌の歴史
・溝渕久美子「ヘルン先生の粉」:日本占領下の台湾で、労働力としてゾンビを使役し始める話
…ヘルン先生=ラフカディオ・ハーン。ゾンビィとキョンシーの違い
・篠たまき「漏斗花」:敗戦の満州から親子3代を行き来しながら紡がれる、神々の直系の話
…むせ返るような花の香り。短編でこの広がりを描く篠たまき先生の世界に酔い痴れます。
■地獄にて
・久永実木彦「愛に落ちる」:無限の暗闇を落下する2人の話
…強い嫉妬心は、それだけ執着してるということなのかも。愛の反対は無関心だから。
・長谷川京「まなざし地獄のフォトグラム」:地獄の光景が、ルールに沿って目に見えるようになった世界で、地獄判定システムが構築され…
…“今週の地獄”、デジタルタトゥーとして最上級の厭さ。
■彼岸の果て
・斜線堂有紀「『無』公表会議」:死後の世界が『無』であることを公表するか否か決める会議
…死後に「無」であることを認識し続けるとしたら怖いけど、ぷつんと断ち切られるなら怖くはないかも。
・飛浩隆「開廟」:突然現れた異界の生物と共存している世界で、排外的な主張をし続ける作家の話
…移住種を攻撃するために人間の憎悪を煽る、SF設定だけれどリアルタイム味が一番強かったです。潤さん。。。
・新名智「システム・プロンプト」:ペルソナや能力、制限、情報・資料、そしてタスクを与えられる話
…「読みもの」だからこそ描ける恐怖。

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2025年10月20日

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