あらすじ
12月1日、咲太はアルバイト先の塾で担当する生徒がひとり増えた。姫路紗良――峰ヶ原高校の一年生で、成績優秀な優等生。
「今日からお願いします。咲太せんせ」
3日前に咲太が見た夢と一言一句同じ挨拶をする彼女もまた、霧島透子から思春期症候群をプレゼントされていた。紗良はそれを「治さないでほしい」というが、一体どんな思春期症候群を発症しているのか。「麻衣さんが危ない」というメッセージも気がかりな中、面倒なことになったと頭を抱える咲太だったが……。
教え子のため、そして麻衣とのクリスマスデートの平穏を守るため! 師走の咲太が東奔西走する、シリーズ第12弾。
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Posted by ブクログ
相手が何を考えているのか分からないことへの不安感から、相手の心を覗けるという、紗良の思春期症候群。
相手の心が分かったらある意味最強だと思うが、そうなると本当の意味で関係なんてきっと築けないし、他人を気遣いながらの関わりなんて、トライアンドエラーの繰り返しなんだよな。
Posted by ブクログ
『青春ブタ野郎はマイスチューデントの夢を見ない』は、青春の痛みと希望を繊細に描き出す一作であった。物語に横たわるのは、単なる恋愛劇ではなく、人が人を理解することの困難さ、そしてそれを超えようとする意志の尊さである。
新たに登場する人物は、教師と生徒という立場性を帯びながら、既存の関係に揺さぶりをかけ、世界をより複雑で多層的なものに変えていく。その過程で浮かび上がるのは、他者を導くことの責任と、逆に導かれることで初めて気づく自己の輪郭である。
主人公・咲太の率直な言葉と行動は、時に未熟でありながらも真摯さを失わず、読者に人間的な成長の可能性を感じさせる。その姿は、青春という不安定な時期にあるからこそ抱ける「誠実さへの希求」を象徴しているかのようだ。
物語を閉じた後に残るのは、甘やかな余韻だけではない。青春の記憶に特有の、どうしようもなく切なく、しかし確かに尊い時間の重みである。まさに「夢」と呼ぶにふさわしい一瞬を結晶化させた物語として、深い読後感を残す一冊であった。