あらすじ
「日記を書くことは、日本で生きているゲイ男性の1人としての「アクティヴィズム」でもあった」――
新型コロナウィルス、東京オリンピック、元首相銃撃事件。著しい社会変化があった3度の夏、それでも生活は続いていく。迷い、怒り、喜び、苦しみ、考え、先へ向かう、注目のフリーランスライターによる3年間の日記.
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Posted by ブクログ
2020年からの3年間は、ゆっくりと、でも確実に日本が良くない方へと向かっているような実感を国民に芽生えさせたと思う。そんな3年間の一部を筆者が日記として綴った本。
当時の自分は何をしていただろうか、と重ねながら読む部分もあったし、(自分も当事者なので)差別される側としての気持ちに共感できるところもあった。何より良かったのが、筆者の普段の生活や考えなどのパーソナルな部分に触れられたことだと思う。日記を読むということは本棚を見たり音楽の趣味を知ったりするのと同じように、その人のことを知れているような気がして楽しい。
以下、好きだった本文。
「世界が最悪の方にどんどん向かっているようで鬱々としてくる。それでも手を動かせばちゃんと料理ができていく、そのことに救われる。」
「しっかり動揺してうまく言葉にできずにいるこの人を、私は信頼していると思う。」
「思考の癖や弱さは手ごわい。ずきずきと痛まないと意識しなくなるし、そうやって意識している間に少しでも自分を変えていけるように、思考と判断を重ねていくしかない。」
Posted by ブクログ
タイトルと表紙で選んだら大当たり。すごい良かった。ゲイのひとなんだー、と途中で気がついて表紙をよく見たら確かに。いろいろ違いそうだけど、近いところもありそう。ごはんの話で殿方二人暮らしのメニューだなって。
Posted by ブクログ
誰かの日記は自分とは異なる現実や日常であって、それを読むことはそこには書かれていない自分のそれらの輪郭も浮かび上がるような気がする。そこには他者がいて、その人の人生がある、ということはなにか救いのようなやわらかな光のような暖かさを感じる。
パートーナーや家族のことが書かれている日記には嫉妬ではないけど、羨ましさもある。それは自分が一人暮らしが長いからなんだろう。
日記は過去のことしかないから、当時感じていた著者の気持ちや考えが読むと今に孵化するように読み手の中に入ってきて、少し混ざる。時間軸がいくつもある、そんな多様性や多幸感があるように思えるからページが少なくなってくると少し寂しくなった。
Posted by ブクログ
1992年生まれのゲイ男性のライターである著者の2020年から2022年にかけての日記を集成。コロナ禍や東京オリンピック、安倍元首相銃撃事件などで揺れる時期の日々の生活や思いを綴る。
自分も日々生きている足跡を残すという意味で日記はつけるようにしているが、他人の日記をじっくりと読むというのは今回が初めてで新鮮な体験だった。この時期、自分は何をしていたかなと重ね合わせながら、著者の日々の暮らしや思考に没入していく感じで、とても面白く読み進めた。
著者には共感する部分も、自分はそうは思わないかなと感じる部分もあったが、自分自身や社会に対して誠実に向き合っている人だなという印象を持った。日々の出来事に対する自分の思いを言語化するというのは、著者のように実践するのは難しい気もするが、大切なことだなと感じた。
この日記を読んで著者のことをもっと知りたくなったので、まえがきなどで著者がどんな人間か(家族構成、恋人との経緯、仕事内容など)というのを紹介してくれていたら、より深く本書を読めたかなとは思った。
Posted by ブクログ
例によって予約はしてあったものの時間がたっていて何の本か覚えていない。
読み始めて、なんで30前後の人の日記に付き合わなくてはいけないのか、と思う。
「恋人」と食事をして、、、なんて書いてあって、違和感を持つ。
「セッション22」「LIFE」「オーバーザサン」に、自分と同じ傾向を感じる。
コロナ、五輪等への発言も。痔ろう、肛門周囲膿瘍になったことも!
ある瞬間に、著者が同性愛者であることがわかる。「恋人」のこと。
そしてややあって、著者が男、つまりゲイであることがわかる。
そういうことだったか。
ゲイの立場から社会を見る青年のコラムだったのだ。
同性愛者に厳しすぎる日本社会。
銭湯、トイレ、着替え、、、、犯罪とLGBTを悪意を持って一緒にする政治家たち。
高倉健は愛する女性に看取ってほしくて幼女にした。
愛し合っている同性カップルにはそれすら許されないのだ。
明治時代に作った家庭像に基づいた法律。それが彼ら彼女らを苦しめる。
それをなくしていくのが政治だろうが。
トランスジェンダーが性転換手術をすることに私は違和感を持っていたが、
社会がそうさせてしまうことに最近やっと気づいた。
心と体の性が別だと、生きづらいのだ。
ほんとはメスなど入れたくなくても、そうせざるを得ないのだ。
そういう思いをさせないのが社会だと思うのだが、、、
そんなことを思い起こさせる彼の日記だった。
Posted by ブクログ
コロナ禍始まった頃から、2022年8月頃までの著者の日記。
タイトルに惹かれて読み始めて、コロナ禍こんなんだったなあとか思い出しつつ、コロナ禍に対する著者目線を感じつつ興味深く読んでました。
なんですが、著者がLGBTQの活動をされているということが結構書かれていて、なかなか一人の行動で世の中を変えていくのは難しいものだなあという感想を抱くとともに、自分はあまり今の政治に対して税金高いなあとか思うことはあっても、それほど暮らしにくいと思ったことはなく、政治に関心がないのだなあと気づかされたりもした。
料理の描写もたくさん出てくるんですが、野菜しっかりとっててえらいなあと思ったり、ライターという職業柄わりと時間は自由に使えるのかな、でも体調整えるのが大変そうだと思ったりとか、もろもろ面白かったです。
Posted by ブクログ
8年前から日記を書いている自分としては、人の日記に大変興味があった。
また、限りある時間の使い方 を読んだ後、このタイトルに惹かれたのと、娘が読んでいる、non-noに出でいたから、早速読んでみた。
小沼理さんはしっかり生きている方なんだなぁと。仕事柄とはいえ、本を読んで、映画を観て、芸術を味わって、料理をして、人と交流して、世の中に対して意見をもっていて。上滑りじゃない、生き方。
ただの日記じゃない。
軽い言葉になるけど、人間として深い方だな、って思った。