あらすじ
臓器を抜き取られ傷口を雑に縫合された死体が、都内で相次いで発見された。司法解剖と捜査の結果、被害者はみな貧しい環境で育った少年で、最初に見つかった一人は中国からやってきたばかりだと判明する。彼らの身にいったい何が起こったのか。
臓器売買、貧困家庭、非行少年……。いくつもの社会問題が複雑に絡み合う事件に、孤高の敏腕刑事・犬養隼人と相棒の高千穂明日香が挑む。社会派×どんでん返しの人気警察医療ミステリシリーズ第5弾!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
都内で臓器を抜き取られ、傷口を雑に縫合された少年たちの遺体が相次いで発見される。
捜査の結果、被害者の少年たちはいずれも貧しい家庭環境で育っており、臓器ブローカーを介して臓器を提供し、金銭を受け取っていたことがわかる。被害者の中には中国人の少年もおり、中国では一人っ子政策により2人目以降の子供には多額の罰金を払わなければならないこと、ただそのような家庭では金銭的余裕がない場合も多く、その子供は臓器売買に利用されがちだということ、また貧困化が加速する日本でも臓器売買の犠牲になる子供たちが出てきてしまっていることなどの描写がある。
「カインの傲慢」というタイトルでは貧困に苦しむ人々や臓器を売ることを余儀なくされる現実や、それを利用する者たちの非道さが描かれている。命の価値を自由に操作できると考えている黒幕の傲慢さを表している。
Posted by ブクログ
2025/48
とっても考えさせられて良かった。
子供が自分の意思で、または親の意思で臓器を抜き取られる。率直にいうとゾッとする。
とくに中国から養子に出された子が、わけもわからず臓器を取られ、術後不良で死ぬってつらすぎる。
香典目当ての父親にも心底腹が立った。
だけど後半になるにつれて、私も犬養刑事と同様どこかで揺れ動くような感情を持たされて
正しさってなんなんだろう。正解ってなんだったんだろう、って考えずにいられなかった。
執刀医、閉腹医、口止めの殺人犯がすべて異なるというのも面白かった。長束さん……
高千穂が少し刑事として成長していて嬉しい。
相変わらず感情的なんだけど、頼れるパートナーになってきている。
あのラストシーンで陣野さんが孫娘のために臓器を必要としていたこと、犬養のせいで孫は死ぬと言われるところ。心臓ぎゅっと掴まれる。
絶対に犬養は悪くないのに、自分の娘が治る可能性を自分が減らしている葛藤。今後もこのシリーズを追いたいなと思いました。
Posted by ブクログ
犬養シリーズの中、やはり子供絡みの事件を扱ったこの作品が、読んでいて一番腹にズーンとくるような、なんとも苦しくなる作品でした。
臓器移植を待つ患者さん達はたくさんいらっしゃって、もし自分や身内がその立場なら…どんなにか待ち望むであろうとは考えるけれど、ここで犠牲になった子供達のことを考えると、最後の陣野の犬養刑事に対する発言は、タイトルにもあるように、傲慢としか言いようがない。
中山七里先生の容赦のないストーリーの展開にいつも驚かされます。