あらすじ
消えてしまったあなたへ――
突然の失踪。動機は不明。音信は不通。
足取りを追って見えてきた、失踪人たちの秘められた人生。
喪失を抱えて立ちすくむ人々が、あらたな一歩を踏み出す物語。
主婦の上田亜矢子は、疎遠だった弟・和也が消えていたと知り驚愕する。
行方不明者捜索協会に依頼して、担当になった西山静香と、和也の行方を追うことに。
和也と時間を共にした人たちから聞かされる話は、亜矢子が知っていた弟とは違っていて……(「第一話 弟と詩集」)。
捜索のはてに、彼らがみつけたものとは。
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Posted by ブクログ
第一章:弟と詩集
上田亜矢子という女性の視点で綴られる亡くなってしまった弟を巡る物語。
怒りやすい性格で、色々な人と喧嘩をしてばかりいた弟とはもう何十年も会っていなかった。彼がどこにいて、どんな生活をしていたのかを、行方不明者捜索協会のスタッフ静香と共に辿っていく流れでした。夫との仲も良くも悪くもなく、息子も成人し、妻としても母としても役目を終えた亜矢子が、最後に区切りをつける役目が姉としての役目というのが、とても切なかったです。弟の軌跡を追う中で、弟の怒りやすさの中にある他者に対する優しさや、正義感の強さが浮き彫りになっていく展開が涙腺を刺激する作りになっていたと思います。
第二章:ヘビメタバンド
樋口智裕は大学生時代、岡本涼太、高地健史、藤長慧人の四人でバンドを組んでおり、彼らの音楽をサイトを通じて発表してみないかという話が打ち上がることから話が始まります。智裕は皆に声を掛けていきますが、涼太にだけ連絡がつかず、その後、浜辺に打ち上げられた遺体となって発見されるという展開に「お?」と引き込まれました。なにか事件性がありそうだと感じたからです。しかし、この話の本質は「彼がどうして死んでしまったのか?」という点ではなく、「涼太という人間が生前どう過ごしていたのか?」という点に重点が置かれていたので、結局本当の死因はわかりませんでした。なので、ちょっとそこらへんががっかりとするポイントではありましたが、それでも引き込まれるものがありました。智裕が生前彼と関りのあった人物たちと出会っていく中で見えてきたのは、涼太がゲイだということです。誰にでも優しく、細かいことに気が付ける目を持ち、正義感の強い男だったが、彼は自分の向けた好意を受け止めてもらえる経験が一度もなかったのでした。智裕も涼太に告白されていたが、告白をされて以降、彼と距離を置くようになってしまったし、それは社会人になってからも同様だったようでした。そういった結末を見ていると、「普通」という枠組みから外れてしまった者の悲哀を感じずにはいられませんでした。
第三章:最高のデート
夫の良いところばかりを見ていた由佳だったが、夫が行方不明になり、自殺をしていたことを知ってから、彼女の意識が変わっていく流れが面白かったです。
生前、夫と関りのあった者たちから話を聞くと、同僚の手柄を横取りしたり、店員に罵倒を浴びせたり、妻を出身大学で判断していたりと、性格の悪い人間だったことが浮き彫りになっていきました。これまでの話は亡くなった人の良い面が浮き彫りになるケースばかりでしたが、今回の話は悪い面が浮き彫りになったので、趣向を変えてきたように感じました。
第四章:社長の背中
昔、ゲームを制作する会社に勤めていた剛と、その会社を担っていた鈴子の話でした。鈴子から貰った恩があるのにもかかわらず、その恩を返す暇もなく鈴子は自殺をしてこの世から去ってしまった。やるせない気持ちを抱えながら、鈴子の軌跡を辿っていく物語でした。鈴子の両親が宗教にハマってしまっていたこと、妊娠したけれど流産してしまったこと、運営していたゲーム会社の情報を社員から他社に盗まれてしまったこと、壮絶な人生の様相がこれでもかと描かれていました。哀しい結末ですが、鈴子から頂いた三百万円を使ってゲームを作ろうと考えている人に投資をしようと決断する剛の姿は、とても素晴らしかったと思います。
Posted by ブクログ
民間団体「行方不明捜索協会」に家族や身近な人の捜索を依頼した人の物語5編を収録。各短編に直接の接点はないが、職員「西山」が4つの短編で依頼者の担当となり、残り1篇では彼女自身の捜索物語となる。
身近な人がある日消息を絶ち、あるいは久々に会おうとしたら行方知れずになっている絶望感。接点がなくなっているということは、円満な関係を継続できなかったということなので、それぞれ曰くがあるわけで、小説としてはそのあたりの曰くが読ませどころ…というかメインテーマになる。
そういうテーマだから、ほぼどの物語も明るいものではない。しかし、どの物語も余韻は悪くない。
しっかりきちんと生きていこう、とか、身近な人や接点を断ちたくない人とはしっかり向き合っていこう、とか、そういう風に思えたことが良かった。
残された人が編んだ物語ではあるが、消息を絶った人も彼らからすれば、幸せな世間から接触を断たれた不幸な側に「残され組」ともいえるわけで、彼らには彼ら目線の物語があるんだろう。どこの誰にでも物語はある、語られない見えないその物語も貴重なんだろうなぁと思う。
Posted by ブクログ
まぁ見事に皆様お亡くなりで。。。
3章目のみ共感できなかったけど、
あとはしみじみ故人を偲ぶお話で
じんわりしました。
シリーズ化できると思う