あらすじ
脳科学でホットなテーマとなっている「無意識」。
合理的な意思決定ができない、自分のやりたいことがわからない、無駄な習慣ばかりに時間を取られる……
それらすべては無意識にかかわっており、より思い通りに生きるためには無意識を鍛えることが不可欠だ。
ビジネスでも近年は、感情をコントロールするアンガーマネジメントに、自分と向き合うマインドフルネス・メタ認知に重きが置かれている。
そんな背景のもと、「無意識を鍛える」という荒唐無稽なテーマに取り組んだのが本書である。
著者は「意識と無意識」の研究に取り組み続ける茂木健一郎氏。
・日常レベルでいかに私たちの生活が無意識レベルで行われているのか
・知らないところで植え付けられている日本的無意識とは
・女性が活躍する社会にすることは「無意識」の領域でも重要であった
・他人に劣等感を感じる無意識の病い
……そうした私たち自身の本質や日常生活と、無意識との関わりを紹介しながら、
どうやって無意識を鍛えておけばよいのか、意思決定のレベルをあげていけばよいかを紐解いていきたい。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
人間の行動を脳科学的に説明してるのが面白い。自分のふとしたあの時の状況を脳科学的に知るよう
⚫︎人間不合理
•得をする時は安全策
•損をする時はリスクを選ぶ
⚫︎ヨナコンプレックス
自分ができないことを実現してる人に怒り
→モヤモヤが発生した時には、それは自分にもできるという事の表れからである
⚫︎個性は発揮するものでなく身についてるもの
師匠をコピーしようとしたら、どこか違うところが出る、それが個性
⚫︎心が動いた瞬間【感情のタグづけ】
感情の動くことは、いつもと違う回路(偏桃体)を通って意思伝達されるので、通常とは違う体験である。
何かのきっかけとなる事柄であることが多い
⚫︎マインドフルネス
初級 姿勢正して座る→3分呼吸に集中
歩きながらのマインドフルネス
食べるを15分かけて行い観察する。
⚫︎スピリチュアルな人
スピリチュアル思想の人ほど、自由意志を強く信じている。自分の意思で積極的に動く信念
⚫︎アイデアが降りてくる
とにかくひたすら考え、調べる
→リラックスの記憶定着過程に閃く
⚫︎準備後なければ偶然はない
①【行動】Action
常に何かを行動していること。
②【気づき】Awareness
チャンスに気づく洞察力
③【受容】Acceptance
革命や変化を受け入れること
⚫︎メモには落書きを
右脳的視点にスイッチをいれ、定着しやすい
Posted by ブクログ
脳科学者として有名な茂木健一郎さんの本。
記憶に残ったのは次の部分
・子どもの人生に大きな影響を与えるのは親ではなく、出会う人々や育つ環境
・親の重要な役割は「子どもの安全基地」になること
・行動力があるから運がいい
・閃きを得るためには、知識と経験が必要
Posted by ブクログ
意思決定の多くは無意識の働きであることに気づかされる
茂木健一郎氏の『意思決定が9割よくなる 無意識の鍛え方』は、私たちの意思決定の大部分が無意識に委ねられているという科学的視点を示している。無意識の脳を鍛えることが日常生活や仕事の質を劇的に改善しうるという主張は、自分の行動や習慣を見つめ直す契機になった。著者が強調する「やる気」や「好き嫌い」に左右されない「習慣化」の重要性は特に印象的で、感情に流されやすい私たちにとって強力な指針となる。
好きなことだけで人生がうまくいくとは限らない現実
一方で、現代の自己啓発系のYouTuberや書籍などで盛んに言われる「好きなことをやれ」という主張に対しては、疑問を抱くようになった。やる気や好き嫌いに頼る道は、一時的には魅力的に見えても長期的には不安定で、感情の起伏に左右されやすい。しかし、人生や仕事には好き嫌いに関わらずこなすべき作業が多く存在し、それを習慣として無意識化することこそが持続的成果につながるという指摘はリアルだ。
脳科学と進化の視点から見る無意識の意味
ダニエル・カーネマンのシステム1(無意識)とシステム2(意識的思考)の理論も思い起こされた。意識的思考は大量のエネルギーを消費するため、無意識に多くを任せ効率化を図る進化的な合理性がある。この合理性は、脳が深層ニューラルネットワークのように、確率的偏りを予測することで生存確率を上げてきた進化の結果だと考えられる。無意識を鍛えることは、その脳の構造的・機能的な進化を活かす行為である。
「イキガイ」概念との接続
茂木氏の他著『IKIGAI―日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』にある「イキガイ」概念も、今回の読書で思い出された。イキガイとは好き嫌いを超えて、意味や価値を見いだす生きる手ごたえのことであり、習慣化した行動の中にこそ宿るという感覚だ。自分の好きなことだけに依存せず、まずは行動し続けることが幸せな人生の基礎を築くという考えは非常に現実的かつ示唆的であった。
自己啓発の「好きに依拠する自己実現」への警鐘として
これらのことを総合すると、無意識の鍛錬や習慣化を軽視して感情や好き嫌いだけに頼る自己実現型の自己啓発が危険であるとの洞察に至った。感情に振り回されず、現実の仕事や人間関係をこなすための基礎を築く習慣づくりこそが、本質的な成長や意思決定の質向上に寄与する。
まとめとして
本書は脳科学や進化論の理論をベースに、実践的で地に足のついた行動変容手法を示しており、現代の情報過多や精神的負荷の高い環境に適応する上で非常に価値のある知見を提供している。自己啓発を過度に感情論や好き嫌い論に偏らせず、「無意識を鍛える」という着眼点が次世代に求められる生き方の指針として重要だと強く感じた。
この読書を通じて、自身の行動を見直し、まずは習慣としての積み重ねを大切にしようと決意させられた。感情の浮き沈みに左右されない意思決定力の向上こそが、豊かで持続可能な人生への鍵だと確信した次第である。