あらすじ
機密情報を拐帯し、女性秘書が消えた!
官と民の爛れた癒着、暗躍する怪しげな宗教団体――
日本の“本当の敵”を裏官房が暴く!
重工メーカーの女性秘書が、自宅に血痕を遺して失踪した。防衛や基幹インフラに関わる機密を持ち出した疑いがあるという。
官房副長官より彼女を探し出せとの下命を受けた元女性自衛官上白河レイら裏官房一同は、“不祥事のデパート”とも呼ぶべき中央官庁と、重工メーカーとの黒い関係に行き当たる。
国の存亡を左右する機密の正体とは? 事態はやがて最悪の方向へ……。
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Posted by ブクログ
安達瑶『傾国 内閣裏官房』祥伝社文庫。
自衛隊出身の武闘派女子上白河レイらが所属する現代のお庭番『内閣裏官房』の活躍を描いたシリーズ第3弾。
なかなか痛快。しかし、大きく広げた風呂敷を慌てて畳んだような最終盤から結末までの展開はあっさりし過ぎていて、少し拍子抜け。中盤までの熱量が一気に冷めてしまった感じだ。
芝浜重工の女性秘書が自宅に大量の血痕を遺し、防衛や基幹インフラに関する機密情報と共に失踪する。大企業と通経省、大物議員との癒着、その背後で蠢く新興宗教団体……
芝浜重工のモデルはアメリカの原子力事業で巨額損失を計上し、一気に経営危機に陥った東芝だろう。今や大企業としての信用も失墜し、分社化や事業の切り売りで生き残るしか手が無いという状況に陥っている。
日本の大企業の多くは中小企業とは大きく異なり、政府や経済団体により庇護され、滅多なことで倒産することは無い。しかし、企業の帳簿はある程度綺麗にしておく必要があり、巨額の損失を埋めるために自社ビルを売却したり、不採算事業どころか採算事業でさえも形振り構わず切り売りしてやっと生き残っているというのが実情である。大企業の事業売却や支店や工場閉鎖の影で一般社員は職を失い、大企業のトップとその周辺に居る社員だけが生き残り続けている。
~蛇足~
かつてC&Cという素晴らしいCIを掲げ、コンピュータと通信の分野で日本はおろか世界を牽引していた日本電気という企業があった。そんな企業にケチが付いたのは企業ロゴを赤色の斜体文字から青色の丸文字に変えてからだと思う。
自慢の本社ビルどころか国内工場の幾つかを海外EMSに売却するや、堰を切ったかのように携帯電話事業から撤退、デバイス事業、パソコン事業や半導体事業を次々と売却、工場作業者の殆どが請負会社の社員に変わっても利益率は全く上がらず、国内工場の統廃合が行われ、国内工場が次々と閉鎖となる。それもそのはず、工場の作業者1人に本社の高給社員が10人も20人も乗っかっていれば利益率など上がる訳が無いのだ。
そんな歪な構造にメスを入れずにC&Cの一翼を担っていたパソコン事業を中国系企業に売却しておいて、国内工場の閉鎖とは何とも嘆かわしい。今やハード製品は政府とべったりの公共インフラや防衛事業を中心に手掛けるくらいで、投資が少なく利益率の高いAlやソフトウェアに傾倒し、一体何をやっている企業なのか解らなくなっている。
本体価格820円
★★★★