あらすじ
実力を持ちながら、公式戦を避けてきた岳。父が殺人を犯し隠れるように生きる岳は、一度だけ全日本剣道選手権に出場する。立ちはだかったのは、父が殺した男の息子だった――圧倒的筆致で描く罪と赦しの物語
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Posted by ブクログ
犯罪者の息子岳と被害者の息子和馬。
理不尽な暴力に耐えながら、身勝手な父親に殺されそうになる岳。
父親の起こした立て籠り事件の最中、岳のうでを掴んで助けた警察官の和馬の父は命を失った。
犯人の岳の父親はその場で自殺。
やり場の無い憎しみを犯人の息子である岳に向け続ける和馬。
剣道を通じて繋がってしまう二人。
初めてであり最後の試合で対峙する岳と和馬。緊迫感とスピード感そして痛みまで伝わるような描写に引き込まれてしまった。
「俺は浅寄の人生をいきてるんやない。俺は、俺の人生を生きてるんや」はぐっときてしまった。
「文身」ほどの衝撃は無いもののエピローグでの伏線回収は切なくなった。
私の大嫌いなあの人にも許せないあの人にも憎らしいあの人にも、他人の私があれこれ口出せる事の出来ない経験や事情があるのかも知れない・・・でも嫌いだけど。
成長したいなぁ、人として。
Posted by ブクログ
殺人犯の息子とその被害者の息子が、剣道の試合で相対するというストーリー。
文章が巧みなのでしょう、物語の中は常に一定の緊張感があり、ドキドキしながら楽しく読むことができました。
被害者、加害者のそのどちらの家族も苦しみを背負う様子は、読んでいて心苦しい。岳はその後自分の人生を歩んでくれていればと願う。
Posted by ブクログ
加害者の息子と被害者の息子。
どちらもその一瞬の出来事で一生の足枷を嵌められてしまうのがつらい。その感情の機微を緻密ながらも強い熱量で綴られた物語に引き込まれた。
法的に裁かれる罪を償ったとて、倫理的な罪は償いきれず、それを家族までもが背負わざるを得なくなってしまうのが犯罪を犯してしてはいけない理由のひとつなのではないかなと思ったりした。だれも幸せにならない。
終盤で一馬が剣道を自分の私的な制裁のために使ってしまったことが残念でならないのだけど、そうせざるを得ないほど追い詰められていたととると、どれだけ心に闇を抱えてきてしまったかがわかる気がする。
エピローグはとってつけたようなものではあったけど、それがなければおさまらないほど、終わりのない哀しみなのだろうと思うとそれもまた切ない。
世の中にはどうやっても解決しないことがあるっていうことを考えさせられる話でした。
Posted by ブクログ
警察官殺しの父親をもつ岳、父親を射殺された遺児和馬。加害者の家族として、被害者の家族として、自らの責任で無い苦労を背負いこんできた二人が、剣道の道を歩み、全国大会京都予選で竹刀をまみえる。
加害者の家族なんだから罰を受ける…そんな考えはナンセンスだと思う。そういう考え方は明らかに差別だと思うが、反面、家族を殺された被害者の家族からしたら、一体誰にその哀しみをぶつければいいのかという気持ちになるのも当然である。
岳が可哀そうで和馬は身勝手…そんな単純なものではないことは、被害者や加害者の家族になったこともない一読者の俺でもとてもよくわかる。正解はない話なんだろう。重たくて読んでてツラい。でも読んでおかないといけない物語なんだとも思う。
最終章は偉大なる蛇足だと思った。